全身隠れた新しい護衛
そして翌朝、朝日に照らされて目覚めた皆の顔には一様に覚悟の色が見えていた。
「それじゃあ、僕らは朝ご飯を食べたらすぐに行くから。あとのことはお願いね」
「はい、お任せください。コチカ、クイネわかっていますね」
「はいなのです」
「あいっす」
「よし、それじゃあ僕らは準備を整えようか」
「わかりました」
朝飯はあまり眠くならないように、少量の穀物を使ったおかゆのようなもので済ませ、僕らは昨日買いこんだローブを身にまとった。その後各々装備を確認し、一切の忘れ物、見落としがないことがわかると、すぐさま街へ出発した。
リースからすれば、大分久しぶりの街中の景色に彼女はローブの隙間からあたりを見渡しながら、目的地のギルドまで足を進めた。
「いらっしゃいませ、ツレヒト様」
今日もまた何も知らない会長が笑顔で迎え入れてくれた
「それにチセ様もお元気そうで何より」
「おはようございます。会長様」
「様などと畏まる必要はございません、どうぞお気軽にお呼びください。そしてあちらの方は」
リースは僕らと違い顔をほとんど出さず、目元だけしか見えていない。当然怪しまれてしまうがその対策も僕らはしっかり考えてある。
「彼は、僕らの護衛です。しかしながら皮膚が弱く、わずかな光に当たるだけで激しい痛みに見舞われてしまうのです。ですから常にあのような恰好をしているのです」
「ほほう、それはまた難儀ですな」
「ええ、その体質故に一団に馴染めず各地を放浪していたところ偶然僕らと出会い、今に至るというわけです」
これはあくまで僕が考えたオリジナルの設定で実際は全くそんなことはない。だがこのくらい味付けがないとあの怪しげな恰好の説明が付かない。
「そうでしたか、では一層あの町が気に入ってもらえるでしょう。なにせあそこはここよりも薄暗いですから、光による刺激もそこまで強くはないかと」
「ええ、昨日訪れて会長と同じようなことを感じましたが、医師としては避けられるリスクは避けておきたいと思います」
「そうですね。お医者様の判断に私のような素人が口をはさむべきではありませんな。ささ立ち話はこのくらいにして中にどうぞ」
そうして僕らは昨日と同様に会長のオフィスへと招かれた。
「いや、まさか二日連続でご利用いただけるとは、うれしいですな」
「他の人は、あまり使わないものなのですか」
「そんなことはありませんが、たいていの人は予想以上の出費になったからと、しばらくは金策に励まれるのです。まあ私としてはその過程で依頼をこなしてもらったり、さらにこちらの街でも買い物をしてもらったりいたしますので、うまく経済が回る良いきっかけになるので大いに喜ばしい限りですが」
会長はいつも通りのにこやかな顔で淡々と事務処理を続けた。依然として部屋全体になごやかな雰囲気が流れる中、僕はとうとう、あのことについて切り出した。
「実は今日あそこに行きたいのには理由がありまして」
「ほお、なんですかな」
「昨日あの町で訪れた店で大変貴重なものを目にしました」
「それは一体」
「白狼族です」
その言葉を発したとたん部屋の空気が一気に重苦しくなった。
「それをいったいどこで」
「娼館と言ったらいいのでしょうか、といっても一緒に食事をするだけみたいですが。それで奴隷商人としては一度くらいは見てみたいものと思い、思い切って注文してみたのですが、どうやら病気のため表に出せないとか」
それまでにこやかだった会長は瞳の色を一瞬で曇らせ、わざとらしく大きな音を立てて、ペンを置いた。




