生きている確信
食事が終わったのち、僕、チセ、ヴァルフ、リースの四人は馬車の中に集まった。これからする話は周りに聞かれると非常にまずいため、馬車全体を布で覆った。
「さて、聞かせてもらおうじゃねぇか、あの町でお前が何を見たのかを」
リースは今まで以上に鋭い目つきで僕をにらんだ。
「結論から言う。リース、君のお母さんはまだ生きている」
「なんだって、おいどこにいるんだ言えよ」
「待って、順番に話すから」
僕の言葉を聞くなり飛びついてきたリースを何とか落ち着かせ僕は話を進めた。
「あの場所・・・いったん地下街と呼ぶことにするね。地下街の中その、愛玩奴隷を売っている場所の奥に・・・その、女性と食事をする娯楽施設があって、その」
話がまだ半分も進んでいないにも関わらず、なにやら馬車の中が強烈な殺気で満たされた。その出どころはすぐに見当がついた
「ヴァルフさん、お気持ちはわかりますが、落ち着いてください。ヴァルフさんが想像しているようなことは起こっておりません」
「しかしですね」
「ご主人様には私から聴取してありますので、ここはどうかご主人様を信じてください」
「そうだよヴァルフ僕は、遊びに行ったんじゃないんだ。ちゃんと情報収集のために行ったんだ」
ここまで説得して、何とかヴァルフは落ち着きを取り戻し、話を聞く態勢に戻った。なので僕らは報告を続けることにした。
「そこにいる人に話を聞いてきたんだ。すると確かにそこに白狼族の人がいるってそう言ってたんだ」
「加えて現在あの町にいる白狼族は一人のみだそうです。そしてこれがその白狼族の方の毛を使用した刷毛です」
そう言ってチセは買ってきた刷毛をリースに渡した。彼女はそれを手に取り数秒眺めたのち、スンスンと匂いを嗅いだ。
「ああ、間違いねぇ。これはお母さんの毛だ・・・そっか生きてたんだ」
リースは深く安堵するとともに、チセが買ってきた刷毛を強く抱きしめた。それはまるで彼女の母親そのものを抱きしめているように見えた。
「なあ、場所は分かったんだろ。だったら早く助けに行こうぜ。お前たちも最初からそうしてくれるつもりなんだろう」
「そうだよ。でも問題がないわけじゃないんだ」
「・・・問題・・・なんだよもったいぶらず早く言えよ」
先ほどまでは見たことがないほど明るかったリースの顔が途端に曇りだした。
「君のお母さんは病に侵されているらしいんだ」
「らしいってどういうことだよ」
「僕もお店でリースのお母さんに会ってみようとしたんだ。でも病気だから今は表に出せないって止められたんだ」
「病気って、具体的にどんなだよ」
「……わからない」
「わからないって、ふざけんじゃねぇよ。すぐそこにいるんだろう。だったらどうして」
「教えてくれなかったんだ」
彼女の母親の病気についてはお店ではなく、ギルド全体で管理し、方針が決定されている、すなわちここで僕が質問をしたところで知らぬ存ぜぬで通されるのは目に見えていた。
「でも、病気だからこそ打てる手がある」
「……何しようってんだよ」
「リース、君がここに来る前に僕らは野草採取の依頼を受けていたんだ。そしてその中にあった薬草からチセがすごい薬を作った。そしてそのことはギルドの会長さんも、あの地下街の人も知っていたんだ」
「……」
「つまりチセの名前は僕と同じくらい知れ渡っている、当然その技術もだ。だからそれを利用してリース、君のお母さんを治療と称してあの場所から連れ出そうと思う」
僕はあの町で考え付いた作戦を皆に話した。するとしばらくの間、馬車の中を沈黙が包んだが、ヴァルフが声を上げた。




