報告の前にお食事
またしても目隠しをされた状態で僕らは帰りの馬車に乗せられ、そして気が付いた時にはギルドの中に戻ってきていた。
「お疲れさまでした。それでなにか良い収穫はありましたか?」
「ええ、とってもこの子にとっても良い経験になったと思います」
「それは何よりでございます」
「本日はお招きいただきありがとうございました」
「いえいえ、あなた様もこの街の恩人の一人なのですから。それなりのもてなしをしませんと、ギルドの名が廃るというものです」
ギルドの会長は終始嬉しそうに手を擦りながら、僕らに話をしてきた。
「それでなのですが、再びあそこを訪れたいと思いましたか?」
「ええ、もちろんです。まだ見れていないところも多数ありますので」
「それは何より、ということでしたら私がお渡ししたカードは決して失くさぬようお気を付けください」
「もちろんです」
僕は一度カードを掲げると、それをまた懐にしまった。その際に僕の上着の隙間から、例の猪アーマーが見えていた。
「ツレヒト様失礼かもしれませんが、そちらの皮鎧は?」
「ああ、これは先日の依頼で討伐したイノシシの皮を加工して作ったものです」
「まさか、そのような裁縫技術まであるのですか?」
「いえ、作ったのは僕ではありませんが」
「なんと、ツレヒト様の従者にはそのような者までいるのですね」
「ええ」
とはいえこれ以上ヴァルフについて話したらきっと売ってくれと言われそうなので急ぐふりをして話を適当に切り上げた。ここに来たのはたしか午後に入ってすぐだったはずなのに、出たころには日がほとんど落ちていた。
「さて、帰りますか」
「はい、それにしてもおなかがすきました」
「結局僕らって何時間くらいあそこにいたんだろう」
「それは……わからないですね。なにせ時計もなければ日の光も当たらない場所でしたから。でもそれ以上にかなり歩いた気がします」
確かに時間はともかく僕らはずっとリースの母親を探して歩き続けていた。どちらかと言えば僕はインドアな方だったので、今日一日の運動量だけでもこれまでとは比較にならないものと言える。
「あちらにはヴァルフさんがいますし、夕食のことは問題ないでしょう」
「それよりもおなかをすかせたコチカとクイネが先に食べてるかも」
「それはあり得ますね。でもあの二人も決して辛抱ができないというわけではありませんので、私たちのことをまだ待っているのかもしれませんね」
「もし、そうならかわいそうだから早く帰ってあげよっか」
「それが良いかと思います」
正直に言うと僕のおなかが空いているのだが、今日一日はそのほかの日と比べて一段と大きな収穫があったと思う。だがそれ以上に今の僕はヴァルフが作る暖かいスープが飲みたい、そんな気分だった。
拠点に戻ると、チセの予想通りコチカとクイネの二人が煮えたぎる鍋の前で食器を手にお座りをしていた。
「お姉ちゃんまだなのです」
「空腹~」
「まだです。ご主人様が帰るまで待機です」
「「ええ~」」
「いいじゃねぇかよ。腹減ってるって言ってんだから食わせてやれよ。どうせすぐになくなったりなんかしねぇって」
たわいもない会話をしながらヴァルフの手を焼かせている三人に僕らは笑顔で手を振った。
「皆~ただいま」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「おかえりなのです」
「おっかえり~、待ってたよ~」
ここまで帰宅を喜ばれたことは今までなかった気がするが、それはきっと僕らの無事を喜んでいるというよりは、食事にありつけることへの喜びだろう。だがどちらにせよ悪い気分ではない。
「お食事の用意ができております。いろいろと話したいことはありますでしょうが、ひとまずは後にいたしましょう」
「え、僕そんなにわかりやすかった」
「はい、なにかよいことがあったと顔に書いてあります」
「そっか」
なんだかすべて見透かされているような気がしなくもないが、ひとまずはヴァルフからスープを受け取った。




