チセの戦果
「では目的も果たせたことですし、一度帰還いたしましょう」
「そうだね。ところでチセは僕がいない間何してたの?」
「ああ、そうでした。実は私の方でも成果がありました」
そう言ってチセはカバンの中から刷毛を取り出した。
「これは?」
「この近辺を散策している際に見つけました・・・それでかなりの値段がしたのですが購入してしまいました」
「まあ、チセも女の子なんだしそう言うことに興味が出てくるのは・・・」
と言いかけて僕は改めて其の刷毛を見つめた。それは未使用品特有の綺麗な真っ白の毛で作られており、このほのかに薄暗い街の中でもツヤツヤとした優しい光沢を放っていた。
「これって」
「ええ、ご主人様の想像している通りです」
白狼族の獣人の毛、僕の頭によぎったのはその一言だった。
「最初は半信半疑だったのですが、同様の物と比べて値段が一桁高く設定されていたので訳を聞くと、白狼族の毛を使ったものだとそして、この街には白狼族の方が一人だけいると店主の方が教えてくださいました」
「となると」
「ええ、先ほどのご主人様の情報を噛み合わせるとほぼ確定と言ってもよろしいかと」
この街に、あの店にリースの母親はいる、その確証が取れた。
「ですが懸念事項がないわけでもございません。リースさんのお母様はすでにここにおらず、代わりに別の白狼族が捕らえられたなどということも考えられます。ですのでこれはリースさんに確認してもらおうと思います」
「うん、いいと思うよ」
だんだんとパズルのピースが揃ってきた。あとは計画を練って実行に移す。それですべてが良い方に向かうはずだ。
「チセもありがとう。大手柄じゃないか」
「いえ、たまたまです」
口ではそう言っているが、チセの様子は褒められたことを喜んでいるようにしか見えなかった。
「それで、他には何かないの」
この際だ、聞ける話は全て聞いておこうと僕はチセに話題を振ってみた。
「今回の件に直接関係するものでなくともよろしいでしょうか?」
「もちろん、なんでもいいよ」
「では、この刷毛を買った店とはまた違うお店なのですが、いくつか薬草を購入しました」
「へえ、どんなの見せてよ」
僕がお願いするとチセはカバンの中から丁寧にパッキングされた植物を二種類取り出した。
「今回購入したのは、一般の市場では流通しない・・・いえできない植物です」
その言葉を聞いて急に僕の全身から血の気が引いた。
「え、それっともしかして違法なもの・・・」
「違法かどうかはわかりかねます。しかしどちらも用法用量を守れば命を救うための良い手助けとなるでしょう」
「そ、そうなんだ」
話の流れからするとどうしても、違法薬物という偏った目線でそれらを見てしまいそうになるが、チセの確かな医療知識には信頼を置いている。その複雑な感情のドツボから抜け出せないまま、僕はチセの言葉に耳を傾けた。




