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 ドアの前に立っている騎士がアーシャとジークを見て敬礼をする。


「お久しぶりです。アーシャ姫」


「久しぶりね。今日はドアの前の警護なのね」


 アーシャは気さくに手を振って挨拶をすると若い騎士は歯を見せて笑った。


「そうです。今頃他の奴らは騎士団長に扱いて貰っていますよ」


「そうなのね」


「どうぞ、ドウラン様がお待ちですよ」


 若い騎士はアーシャたちの為にドアを開けた。


 「俺は少し騎士団長に報告がある」


 部屋まで入ってくるのかと思ったがジークは一言告げると去って行ってしまった。


「いまいちよく分からない人ね」


 アーシャが呟くと扉の前の騎士が頷く。


「そうでしょうね。急に来た異国の騎士なんて怪しいですけれど、ドウラン様の妻になる人の国からきたから仕方ないですよね」


「そうよね。偵察かしらね。第二夫人とその子どもを見て嫌にならないといいけれど」


「そうですね」


 若い騎士が同意をしてくれたことでアーシャは軽く頷いて部屋へと入った。

 

 大きなテーブルの中心に兄のドウランが座ってた。

 アーシャが部屋に入ってくると気さくに手を上げる。


 「久しぶりだな。アーシャ」


「お久しぶり、お兄様。……ちょっと老けたかしら?」


 一年ぶりに見る兄は、今年33歳と年がアーシャと少し離れている。

 33歳とは思えないほど疲労が顔に出ていてアーシャは引きつった笑みを浮かべた。

 ドウランは金色の髪の毛を短く刈り上げ、アーシャと同じ青い瞳を持っている。

 顔つきは鋭く、目つきも悪い。

 一見恐ろしい人のように見えるが、アーシャにとっては世界で一番優しい兄だ。

 標準の男性より背は高いが、スラリとした体つきをしており、太めの体をしているアーシャとは似ていない。

 ドウランは一週間後に結婚式を挙げると思えないほど目の下に隈が出来ている。


「忙しすぎてな。老けもするだろう」


「その顔で結婚式を上げたら、お嫁さんが可愛そうよ」


 アーシャはドウランの前に座るとすかさずお茶とお菓子が並べられた。

 侍女が退出するのを確認してドウランが口を開いた。


「久々の城はどうだ?悪くないだろう」


「まさか!さっきシャーロットに会ったわよ。相変わらず自分大好きそうだったわ。ジークを自分の親衛隊にしたいらしいわよ」


 お茶を飲みながら無表情にアーシャが言うとドウランは疲れたように首を振る。


「最悪な出会いをしたようだ」


「そうよ。ねぇ、ジークってお兄様のお嫁様の護衛騎士だったようだけれど、調査しに来たの?」


「調査とは?」


「ウチの内情よ。だって私と母が離れで暮らしていて第二夫人がのうのうと生活していたら不信に思うわよ。あんな腹違いの妹がいるって報告されたら結婚取りやめにならないかしら?」


 心配するアーシャにドウランは軽く笑った。


「大丈夫だ。だいたいの事は話してある」


「腕が太くて力が強い妹の事も?」


「もちろん。会うのを楽しみにしている。ジークは内情を探りに来ているわけではない。普通にお前の警護を依頼しただけだ」


「怪しいわね。私の警護に他国の騎士なんて……」


 普通ならありえない状況に怪しんでいるアーシャにドウランは軽く肩をすくめた。


「深く考える必要は無し。ただ、シャーロットとマレーンに気を付けてほしいだけだ」


「二人とも嫌な感じよね」


 はっきり言うアーシャにドウランは軽く笑った。


「シャーロットとマレーンは間違いなく俺の結婚が気に入らないようだから何かするだろう」


「どうかしら?それこそ、お兄様のお嫁さん……お名前何だっけ、が一番危ないんじゃない?」


 アーシャが言うとドウランが渋い顔をした。


「マーガレットだ。マーガレットは以外と強い女だから大丈夫だ」


「ふーん……」


 ドウランがそこまで言う女性は珍しい。

 アーシャは兄が女性を褒めることが珍しい事とそこまで惚れているのかと冷めた目を向ける。

 


「そろそろお前の結婚も考える時期だと思っている」


 咳払いをして遠慮がちにドウランが言った。


「解っているわよ。いつまでもこうしてていても仕方ないし。……ちょっと腕が太くて怪力でもいいって人をお願いするわ」


 顔を顰めているアーシャにドウランは頷いた。


「もちろんだ。可愛い妹を不幸にするヤツの所にはいかせないから安心してほしい」


 「ありがとう。期待しているわ」


 ドウランは時計をちらりと見るとため息をついた。


「そろそろ仕事に戻らないといけない時間だ」


「お兄様も大変ね」


「父上が寝たきりになってしまったから仕方ない。まぁ、第二夫人とやらがやってきてから寝たきりになったから良かったよ。まだ元気だったらあの女のやりたい放題だったろうからな」


 吐き捨ているように言うドウランにアーシャはもっともだと頷いた。


「そうね……」


 ドウランは重いため息をつくとゆっくりと立ち上がった。

 歩き出しながら浮かない顔でアーシャを見る。


「せっかく城へ帰って来たのだから一応父の見舞いもしてくれ。気が進まなければ無理にしなくていいが」


「……そうね。次はいつ城に戻るか分からないから会っておこうかしら」


 アーシャの前向きな返事にドウランはホッとした顔をした。





 

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