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 騎士達の間に交じってアーシャも馬を走らせる。

 騎士団長を先頭とした”ジーク奪還作戦隊”と名付けられた一行は護衛騎士達とアーシャを含めた数人だ。

 まず先行隊として騎士団長とアーシャ達が向かい、その後援軍が来る予定だ。


 「真っ暗ね」


 空はうっすらと曇っており、月さえも隠している。

 冬が訪れようとしている夜の空気は冷たく、アーシャはフードを深く被りなおした。

 アーシャの隣で馬に乗っている騎士が頷く。


「ここ最近、日が沈むのが早いですからね。今日は満月ですけれど、ちょうど雲で隠れていますね。俺達を隠してくれて移動しやすいですけれど、視界が暗くなるので困りますねぇ」


「そうね。女盗賊のアジトって敷地は広いの?」


 馬を走らせながらアーシャが聞くと先頭を走っていた騎士団長が答えた。


「かなり前から廃墟になっている没落貴族の屋敷だ。屋敷っていうより城のような造りだな」


「まさか、あそこをアジトにしているなんて気づきませんでしたね」


 騎士の一人が言うと騎士団長は舌打ちをする。


「全くだ。女盗賊団が国に入り込んでいることも気付かなかったぜ」


「第二夫人が招き入れたんでしょう。下手したら騎士の中にも第二夫人の息のかかった奴が居るかもしれないですね。見回りコースに含まれている屋敷ですよ」

 

「だろうな!侍女だけじゃなく騎士達も取り込まれているなんてなんてことだよ!」


 大きな声を出す騎士団長に騎士達が声を抑えるようにジェスチャーをする。


「まぁまぁ、それもジークさんがジャーロット嬢から有益な情報を聞き出せたおかげですし。ジャーロット嬢がおかしなことを言ったのもジークさんの魅力のおかげですし。なんとか無事に助け出しましょう」


「あいつの魅力のおかげで、女盗賊に狙われているんだけれどなぁ!良い男って言うのは難儀だねぇ」


「僻んじゃって」


 後方から聞こえてきた声に騎士団長は後ろを振り返った。


「僻んでねぇよ!」


 数時間、馬を走らせ町や村も無いような僻地へとたどり着いた。

 山を越えたはずだがまだ山の中なのかと思うほど木々がうっそうと生えている。

 砦の様な石造りの建物が暗闇に浮かび上がる。


「確かに城のように広い建物ね」


 馬の歩みを止めてアーシャは呟いた。


「この道をまっすぐ進むと海に出ます。盗品を港から運ぶには、うってつけの場所ですね」


 騎士団長は馬から降りると指示を出す。


「まず第一に人質の救出。第二に、女盗賊の確保だ」


 騎士団長は適当に2つの班に分けるとアーシャを後方隊へと入れた。

 最終確認をして二手に別れる時、騎士団長はアーシャを呼び止める。


「アーシャ姫。後悔しないように行動をしろ。ただ、自分の身が一番大切!それだけは忘れるな」


 いつもの軽口とは違い真剣な口調で言われ、アーシャは頷いた。


「わかっているわ」

 

 騎士団長はニカッと笑うと乱暴にアーシャの頭を撫でて部下達と屋敷内へと入って行った。


「アーシャ姫。我々は外壁を探索しましょう」


 静かに騎士に言われてアーシャは頷いて弓を握りしめた。


 


 騎士団長と別れてアーシャは数人の騎士と屋敷裏手に回り込んだ。

 アジトという割に人の気配や見張りも見当たらない。


「少人数で動いているのかしら」


 隊の一番後ろを歩きながらアーシャが小声で聞く。


「ジーク殿もそう報告してたからそうでしょうね」


 気配を消しながら石造りの外階段を登る。

 迷路のように入り組んだ砦を歩きながら中心に建つ屋敷を眺めた。

 大きな屋敷は真っ暗で明かりすらついていない。


「本当にジークここに居るの?」


 アーシャが不安になっていると、一番前を歩いていた騎士が静かにするように手を上げて指示をしてきた。

 中腰になりながら砦の塀を歩いて行くと、真っ暗だった世界に明かりが見える。

 塀から頭を出して見下ろすと、松明が焚かれているのが見えた。

 塀に囲まれた四角い広場に、数人の人影が見える。


 「ジークだわ」


 騎士と一緒に塀から頭を出して下を覗き込むと拘束されているジークが見えた。

 ジークと同じ隊服を着た男性が2人拘束されているのが見える。


 後ろ手に手を回されて縛られており手の自由が効かないようだ。


「様子が可笑しいですね」


 小声で騎士が言う。

 アーシャも頷きながら目を凝らしてジークが置かれている状況を理解しようと気配を消しながらあたりを見る。

 

 後ろ手に縛られているジークの前に大きな台が置かれている。

 階段を登った先に板が渡してあり、その上に一本柱が通してある。

 板から紐がぶら下がっており紐の先は輪になっている。

 

「絞首台にみえるわ」


 実際見るのは初めてだが、アーシャが言うと騎士達は頷いた。


「見えますね。どう見ても絞首台ですよ。どうしてジーク殿がそんな目にあっているんですか?捕まえたジェリーエンはジークに惚れているんでしょう?」


 騎士のもっともな疑問にアーシャは下を眺めながら首を振る。


「さっぱりわからないわ。状況からしてジークが絞首台乗せられそうになっているのかしら?」


「さぁ?」


 騎士達は首を傾げつつどうにかしてジークを助けるすべは無いか注意深くあたりを伺う。


 「ジーク!気持ちの変化はあったかしら?」


 女性の声が聞こえてジークは無表情ながらうんざりした表情を浮かべた。

 

 アーシャを含めた騎士達は気配を消しながら様子を見守っていると女性が建物から出てきた。

 ジークと同じような黒い騎士服に似せた軍服のような服を着ている。

 腰までの黒い髪が風に揺れているのが見える。


 アーシャ達からは女性の後姿しか見えないが、騎士がそっと呟いた。


「多分あれは窃盗団の長であるジェリーエンです」


「あの人が……」


 ジークの事が好きだという女盗賊。

 細い体に、大きな胸が確認できる。

 後ろ姿だけでも多分美人であることが伺えてアーシャは少し唇を尖らせた。


「綺麗な人のようね」


「美しい女盗賊と言われているぐらいですからねぇ。でも盗賊ですし……。ジークさんは大層嫌っていて悪口ばかり言っていましたよ」


 女盗賊にムッとしているアーシャに苦笑しながら騎士が小声で言う。


 アーシャ達に気づくことなく、女盗賊は偉そうな態度で両手を腰に当てた。


「答えられないの?薬を盛りすぎたかしら?」


 女盗賊が言うと、ジークは息を吐いた。


「お前らに盛られた薬のせいで思考がままならない。それでも言ってやろうか、お前の事はこの先相手にすることも無い。お前と添い遂げるなんて未来永劫ありえない」


 言い切るジークに女盗賊は湧き上がる怒りを耐えるように下を無向いて握りこぶしを震わせている。


「なんて酷い事を言うのかしらねぇ!私はこんなに愛しているのに!」


「俺はお前に興味が無いとずっと言っているだろう。いい加減理解してくれ。薬を盛られても変わらん!」


 女盗賊とジークの会話を聞きながら騎士達は小声で話す。


「ジークさんは薬を盛られているようですよ。どうします?」


 あたりを回っていた副団長が気配を消しながら中腰でアーシャの傍へとやって来る。


「騎士団長達が今向かっている。それまで待機だ」


「ジークが殺されないかしら。今にも絞首台にのせられそうだけれど」


 不安になりながら聞くアーシャに副団長は余裕な顔をしている。


「ただの脅しでしょう。命が助かりたければ自分を好きだと言えって無茶苦茶な脅しですよ」


「なるほど」


 好きな男の口にするには度が過ぎていると思うが、それが女盗賊なのだろう。

 アーシャ達は騎士団長の到着を待つために気配を消しながら様子を伺う。


 女盗賊は怒りに体を震わせながらジークを指さした。


「最後にもう一度聞くわ!私と一緒に人生を過ごさない?毎日楽しいわよ」


 女盗賊は怒りに震えながらもゆっくりと優しく言う。


「何度も言わせるな、嫌だと言っているだろう」


 薬でもうろうとしているであろうジークがきっぱりと断る。

 女盗賊は怒りを誤魔化すように高笑いをするとジークを指さした。


「あぁそう!分かったわ。愛しいジークが手に入らないのなら、今ここで殺してあげる!」


 

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