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「まぁ、お綺麗ですよ。アーシャ様」


 兄ドウランの結婚式当日、出席するため久々に着飾ったアーシャを見てミナとハンナは口々に褒めてくれる。

 鏡に映る自分の姿を見てアーシャは不満だ。

 淡いグレーのドレスは裾に行くほど濃い青色になり小さい真珠が縫い付けられて光が当たると仄かな光が照らされる。

 袖口は太い腕を隠すようにデザインがされているがそれでも太いとアーシャが見ても思うぐらいだ。

 他人が見たらなんて腕の太さだと驚くだろう。

 

「そうかしら?腕も太いし腰のあたりなんてパンパンじゃない。こんな体系をした女性がパーティーに出席しているかしら」


 行きたくなさそうな顔をしているアーシャにミナとハンナは肩をすくめた。


「今更体系の話をされても仕方ないでしょう。アーシャ様は生まれた時から大きな赤ん坊で……」


「待って、その話何回も聞いたからもういいわよ。生まれつきの体系なんだから諦めるわ!」


 アーシャを取り上げたハンナはいかに大きな赤ん坊だったかを得々と語り、幼少期も他の子供より力が強くて物を壊した武勇伝を語りだすのだ。

 話が長くなりそうだとアーシャは手を上げてハンナの話を遮った。


 まだ話し足り無さそうなハンナが口を開こうとするとドアがノックされた。


「アーシャ様、ジーク殿がいらっしゃいましたよ」


 ドアを開けて戻って来たミナはジークを引きつれてやって来た。

 

「ずいぶん綺麗に着飾ったな」


 ドレス姿のアーシャを見てジークは微笑んだ。

 アーシャは口をへの字に曲げる。


「ドレスは綺麗でも、私の腕の太さはそのままよ。綺麗なドレスが台無しだわ」


「そんなことないだろう。俺は似合っていると思うが」


 ジークに視線を向けると彼もまたいつもと違う騎士服を着ていてアーシャは眉を上げた。

 いつもと違い黒い騎士服は左胸にメダル型の勲章が数個取り付けられており、襟元にも金のバッチが付いている。

 剣は傷がついている愛用の物だが下げているベルトは金色で細かい模様が入っているものになっている。

 靴も真新しいものに変わっておりアーシャは上から下まで見て顎に手を置いて何度も頷いた。


「ジークこそ正装が似合っているわね。持ってきていたの?」


「いや、マーガレット様を護衛してきた騎士に持ってきてもらった。この日までいる予定ではなかったんだがな」


 後半は小さく呟いたのでアーシャに聞こえることは無かった。


「マーガレット様は本当にお兄様と結婚してもいいって言っているのかしら?ご様子はどんな感じだった?ジークはご挨拶に行ったの?」


 すっかり自分のドレス姿の不満を忘れて、嫁に来るマーガレットの様子を聞くアーシャに苦笑してジークは頷く。


「今朝、マーガレット様へ挨拶に行ったが早速準備で忙しそうにしていたよ。いつもと変わらず元気にしていた」


「そう。ご不満を言っていなかった?あんなお兄様が嫌だとか」


「いや、まったく言っていない。むしろ、喜んでいるよ。俺達もあんな女性を貰ってくれてホッとしているよ」


 後半は呟くように言うジークにアーシャは首を傾げる。


「一体どういう人なの?」


「元気な人だよ。アーシャ姫はシャーロット達を心配しているようだが、多分大丈夫だ」


「そう?」


 よくわからないと首を傾げているアーシャにジークは軽く笑って頭を下げた。


「さぁ、そろそろ参りましょう。アーシャ姫」


 仰々しく言うジークに見惚れながらアーシャは頷いた。


(なんだか今日のジークはいつもより素敵に見えるわ)


 盛装しているせいかジークが普段の数倍カッコよく見える。

 ジークにドキドキして自分の心臓が持つか心配しながらアーシャは部屋を出た。





 「お兄様達の式はすでに済ませているんでしょう?」


 ジークの隣を歩きながらアーシャは問いかけた。

 

「そうだ。少人数で済ませたいという事で二人きりで神に誓ったようだ。マーガレット様の昔からの夢だから仕方ない」


「そうなの?」


 沢山の人に囲まれて式を行うものだと思っていたが、マーガレットは質素な結婚式を望んでいたようだ。

 どうりでアーシャも含めてすべての人はパーティーだけになったのかと納得する。


「あの人は意外と少女趣味なんだよ」


 うんざりしたように言うジークにアーシャは肩をすくめた。


「女性はみんな物語の様な結婚式を夢見るものよ」


「アーシャ姫もそうなのか?」


 ジークに聞かれてアーシャは口ごもった。


「そりゃそうよ。まぁ、私は見ての通りドレスも似合わないような太い腕をしていてとても物語に出てくるような雰囲気にならないだろうけれど」


 「アーシャ姫は自虐的だな。そこまで自分を卑下する必要はないだろう。ドレスだって十分似合っているし、とても可愛いと俺は思うよ。その力だって誰より優れている証拠だし生まれ持った宝物だと思えば誇らしいだろう」


「私を慰めようとして言っているの?それとも本心かしら?」


 昨日ジークがシャーロットと楽しく話しているのを思い出してアーシャは意地悪く言ってみた。


(どうせジークだっていくら内面が酷いシャーロットだろうが見た目が可愛い子が好きに決まっているわ)


「本心に決まっているだろう。俺は嘘をつかないよ」


「そう?」


 嘘をつかないのなら昨日シャーロットと何を話していたのか聞いてみようかと思ったが勇気が出なかった。

 元気がないアーシャをちらりと見てジークは勇気づけるように言う。


「俺は嘘を言わないよ。アーシャ姫は十分可愛らしいし、その力は素晴らしい」


「ありがとう。ジーク」


 なんだかんだとジークに褒められると嬉しい。

 照れながらアーシャがお礼を言うとジークは軽く微笑んだ。







 

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