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0と1の世界  作者: 龍太
19/23

   幻実&幻実=? ②

「はい。というわけでとうとう当日になりましたわけっすか。兎様! 法一様! どうっすか今の心境!」

「おいこらてめぇ。何で俺の事無視すんだ糞野郎」

「は? アンタなんか眼中にねぇから。さっさと電子の藻屑にでもなりやがれ」


 何か悪化してんなこいつら。

 あー。まぁ、言った事はしてくれるだろう。してくれないと困るけど。そこまで子供じゃない奴らだと思いたい。

 作戦の根幹に関わってるとまでは言わないけど、こいつらが下手すれば瓦解に近づくし人間関係についてもうちょっと考えておけばよかった。ミスったなぁ。

 怒るにしても何でこいつらの仲が悪いのかわからないと何もいえないし。トランペットが一方的に悪いってわけでもなさそうだし。


「……よし。兎さん、とりあえずリストに登録してる奴らにメールしてくれませんか。法一は特定した場所に隔離の準備を」


 どうにかなると信じてとか、そういうのは放っておく事にした。もうどうにでもなる。ていうかなるようにしかならないはずだ。

 投げやりな気がするけど仕方ないとしか言えない。


「あいよー」

「わかったわ」


 これで、俺が何か出来るのは向こうに着いてからだな。やる事はやったし、人事を尽くして天命を待つって状態だろう。

 さぁて、何人集まってくれるかねぇ。


「んじゃ行くか」

「うっす。どこまでもお供します! 貴方とだったら地獄までっす!」


 そこまで付いてこられなくちゃいけないのかよ。嬉しくないわけじゃないんだけど、嬉しいなんて事でもないんだよなぁ。

 こいつはいつかちゃんと俺から引き離す必要がある。俺より一つ年上で美人ではあるんだから、ちゃんとした奴に恋でもして欲しいもんだな。

 今みたいなのは健康的じゃねぇし。……まぁ、つっても俺がどうこう言えるものじゃないのはわかってるんだけどな。突き放すにしても、これが終わった後だろうし。

 それでも俺から離れなかった時の事は考えると怖いからしない事にする。


「んじゃちゃちゃっと行こうぜ」

「それじゃあ私先に行ってるわね」

「俺も先行ってるぜー」

「それじゃあ私も先行ってハルモさんのために文句言う奴らぶちころしてきますっす!」


 最後何言ってんだ。


「俺も一緒に行くに決まってんだろうが。んじゃ、しっかりやりに行くか」





 今日のシャングリラは城だった。大阪城あたりを思い浮かべてくれればいいかもしれない。なんつーか。これはもしかしてここを管理してる誰かの趣味か。

 ……いい趣味してんなぁ。一国一城の主のつもりか。

 それならこっちは城攻めだ。


「急なことだったけど、よく集まってくれた」


 後ろを向けば、そこに居たのは五十八人。これは予想外だ。


「言っておくが、引き返すなら今だ」


 この言葉に、引き返す奴は居ない。


「ここに来た目的は全員違うだろうさ。なんとなく。知り合いが捕らえられた。ここについて知りたいから。俺らがどうなるのか知りたいから。様々だろう」


 目的が全員一緒だとは思ってない。

 そこまで楽天家でもないし、人間を信じても居ない。ただ、ここを攻略したいって思う気持ちだけは信じる。


「……お前ら、覚悟はいいな! 危険な場所は前後左右全てだ! 俺はお前らを補佐する! お前らは好きに突き進め! 出来ないなんてこたぁねぇよなぁ! ここに来た時点でお前らは一流のハッカーだ! クラッカーも居るかもしれねぇけどそんな事は関係ねぇ! やりたい事をする! 知りたい事を知る! そのために此処に居るんだろうからな!」


 自分でも薄っぺらい言葉だとは自覚してる。それでも、乗ってくれるだろう。

 興奮している何人かが声を上げて、それに釣られた何人かも声を上げる。……こいつらは二流だな。いつでも冷静で居られない奴が一流になれるわけない。

 つってもこと本番になれば冷静になる奴も居るんだろうが、それは稀だ。


「それじゃあ行くぞお前ら! 突撃だぁ!」


 言葉を発して、全員が走るのを見る。俺はその後ろから付いていく形になるんだが。……いつの間にかキングがいないな。

 どうせ先頭に居るんだろうけど。あー。まぁ、いいか。どうせキングが前に居れば、門番がいようといまいと関係ない。

 相手の技術が二、三世代上でもなきゃキングが負ける道理はないしな。


「で、そこの楽団はしっかりとな」

「はいはいー。皆ー。今日の曲目は教えた通りだよ! さっさと準備して、演奏開始!」


 トランペットの掛け声と共に一人の男が前に出てきて指揮を始める。……六人で演奏するのは素人から見るとありえない事だし玄人から見てもどうなのかって所なんだろうが。

 まぁ、いいや。不吉な曲っちゃー不吉な曲だけど、踊りと見立てたのは悪くない。いいセンスしてるじゃねぇの。

 トランペットのアバターは同調するという物だけど。あれから何か考え付いたのか、もう一つのプログラムを作り上げた。

 簡単に言ってしまうと、妨害だ。

 四から六人で演奏する音楽。それにはアバターの能力を阻害するというプログラムが仕込まれてる。音を聞こえなくすればいいという問題じゃないのが厄介な所だな。

 全員集まらなくても四人いれば使えるのは中々頭の良いことだ。

 今回一緒に攻め込む奴らには事前に抗体プログラムを渡してある。とはいってもこの曲にしか効かないような物だが。それがない敵は、きっと動かしにくくてしょうがないだろうな。


「うっし。んじゃ法一さんはそいつらのお守り頼みますね。トランペットは、一緒に来い」

「はいっす! ふふ、ハルモさんのために頑張ってみせますよ!」

「あいよー。いってらっしゃい」


 この状態でハッカー達の指揮は必要ないし、そもそも聞くような奴らでもないだろう。誰が先に中へ行くのかを争ってるような奴らだ。

 元々、協力なんて見込める奴らじゃないしな。一人や数人程度じゃここを攻略する事なんて出来ないから便乗してるのが大半だ。つまり、二流一流の集まり。

 超一流、ウィザードクラスになったら誇りがあるだろうし。


「皆が騒いでる間に、と。トランペット。頼む」

「あいあいさー」


正規の手順でいくなら正門からパスワードを入力して更に門番に許可を貰って入る必要があるんだろう。

 ただし、トランペットは別だ。通信を遮断する。それなら、内部と外部を反転させればいい。

 現実的に考えれば不可能だ。けれど、幻実的に考えるなら可能となる。普通ならこれをやってる間に処理されて終わりなんだけど。それは今の物量作戦。他の奴らが暴れてる間にやってしまえばいい。


「ここだけ誰でも入れる事が出来るっす」


 言葉と共に見れば穴が一つ。まぁ、戻しておく必要はないだろう。見つけるなら、誰でも見つけりゃいい。

 俺の目的はここの攻略じゃないしな。


「それでっと。……第二層は前に来た時と変わってると思うか?」

「私に聞かれても困るっすよー。あの時は私もバカでしたしねー」


 そのぐらい覚えておけよ。……まぁ、内部に変化はそんなに無さそうだけど、っと。


「……何か、居るな」

「居るっすねぇ」


 居たのは複数のアバターだった。驚いてるようだから人間だろうなぁ。……数は、七人か。俺が相手にするのはきついな。ここウィルス一杯だし。

 トランペットはそもそも感知とか干渉しか出来ないし。戦闘は苦手なんだよなぁ。


「俺様に任せておけよ、雑魚共」


 言葉が聞こえた瞬間、隣を何かが走って行った。と思った瞬間にはアバターが二つ倒れてる。

 ……今何が起こった?


「この程度の奴ら一分で終わらせてやるからさっさと先に行けよ。俺はここらで暴れて行くからよぉ」


 右手にトランプを持って、キングが立っていた。いつの間に来たんだこいつ。

 襲い掛かる奴らを投げ飛ばして、遠距離から銃みたいので放たれた弾を避ける。あー。俺はこいつとタイマンでやりあえる自信がねぇ。

 ちなみに切られたらしいアバターには遠めからでもわかるほど、エラーが表示されてる。あのトランプに何か仕込んでやがるな。

 キングの実力に加えて楽団もあるから平気だとは思うんだが。……敵は決行いい動きをしてる気がする。短時間で対抗できるようなプログラムを打ったとは考えにくいんだよなぁ。


「んじゃ、任せる」

「数に圧されて死ね!」

「ウィルスに引っかかって死ね!」


 こんな時でも仲が悪くなれるのは才能なのかこいつら。実は仲が良いんじゃないだろうか。

 まぁ、いいや。


「さて。第三層へは、と」


 千さんが使ってた鼠でもあれば楽なんだけど。生憎と俺にはそこら辺のプログラムがないんだよなぁ。持ってはいるけど、持ってきてはいない。ダミーとかはあるんだけどそれに発信機としての機能つけた方が良かったかね。


「私の物って欠陥だらけっすけど、使うっすね」


 言って、トランペットが大きく声を上げた。ような錯覚に陥る。

 音が出る部分に音符のエフェクトが出て散らばっていく。そして、壁に触れた物が消えた。そこにあるウィルスに侵されたのかもしれない。……まぁ、ソナーに似たような物だろう。欠陥がどこにあるのかわからないけどどうにかなるだろうな。


「よし。わかりましたっす。大まかな位置は、前回と変わらないっすねー」


 覚えてるじゃねぇか。


「んで、欠陥って何なんだ?」

「私たちの現在地がばればれな所っすかねぇ」


 駄目だこれ。キングが居なかったら俺たちは詰んでるところだぞ。トランペットのツールはどれを取っても使いにくいんだが。まぁ、大人数でなら使えない事はないって物か。

 いつか暇になったらこいつの物を今度改良しよう。そうすれば単体でも使えない事はないだろうし。まぁ、トランペットは今年受験だしそういう事をするのは先になりそうだけど。


「……まぁ、そこは後で改良するって事で。んじゃさっさと先に行くか」

「うっす。敵が来たら守ってくださいっす」


 今回に限ってはそうするしかないよなぁ。……まぁ、俺らに来る余裕があるならキングらに向かった方がいい気もするけどね。正門が突破されれば、内部に侵入してくるのもすぐだろう。

 先に俺らが最深部まで辿り着く可能性もあるからどっちが良いなんて一概には言えないけど。


「三層はあそこっすねー。私先に行きますよー」

「あ、おいもうちょい慎重に」


 最後まで言葉を待つ事なく、トランペットは三層へと足を踏み入れる。

 果たして何事も起こらない。いや、それが一番なんだけど。やけにあっけないな。前にここで手に入れた物に簡単な記録は残っていたけれど。

 あれが罠じゃないってのは、逆に疑問に思える。


「成程っす。これは単純に眠らせるだけっすね。簡単に言うと寝落ちみたいなもんっすよ。微妙に聞こえなくもない音楽で脳波? みたいな物をどうこうするんじゃねぇっすかね」

「それあれに書いてた事まんまじゃねぇか。……まぁ、それにプラスしてお前の楽団からの音楽が作用してそうだけどな」


 実際あの紙が真実だとは思えない。念のためのプログラムも組み込んであるけれど、それよりは遠くから聞こえてくる曲と干渉し合って効果が薄くなってると考えた方がまだありえる。

 やっぱこいつ連れてきて良かった。ここまでは想定してなかったけど。


「んじゃ、後は歩くだけだな」


 畳になっている一本道を歩いてどこかに罠か何がないかを慎重に探る。案外ここにもあるかもしれないと思ったのだけど。気のせいだった、か?

 流石に第三層まで入られる事は予定外なんだろうか。いや、それにしても何か対策の一つはあってもおかしくないはずだけど。


「あ、通路はここで終わりっすねー」


 長い通路が終わり先に見えるのは大広間のような場所。城に見立てる今で言うなら天守閣だろうか。ただこれで終わりなわけはないし幻実なのだから天守閣の更に上があっても不思議じゃないが。

 トランペットが足を一歩踏み出そうとした所で、頭に警報が鳴り響く。

 やばい。これは、何かある!


「どけ!」


 変換ツールを使いほぼ一秒で棺桶から阿修羅へと変化し、前を歩いていたトランペットを後ろへ引き倒し、通路の先に出て横を見る。

 瞬間。

 黒い何かが。

 横切った。


「……勘を培っているようで何よりだ棺桶。五年間ただ遊んでいたわけではないな」


 右手に激痛が走る。阿修羅の状況確認を行えば左後方の腕が一本。そして本命の右手が一本なくなっている。何が起きた?


「っ」


 相手に向き直り、正面を見据える。その時にはもう誰もおらず。


「知覚を最大にまで上げろ。俺に食い殺されたいのか?」


 ほぼ勘で横へ転がったところにまた黒い何かが走り去る。壁でも跳躍してんのか!


「っと、久しぶりだっていうのに、随分なご挨拶ですね?」


 あー。もう、かなり混乱でもしてんのか俺! なに悠長な事ほざいてんだ!


「現実で会ったのは去年だが、幻実で会ったのは四年ぶりか。成長したな。噂は聞いていたし報告も聞いたが。昔だったら今ので落ちている所だろう」


 何あんたも俺の話に付き合ってんだ。今の状況を全体図としてみればここはすでに難攻不落はほど遠い状況になってるはずだろう!


「そういや、そうですね。えっと、それで犬さん。こんな所で俺を相手にするよりも、えーと」

「お前の方法でアイツを守るなんて出来やしない。俺はアイツを守り、助けるが。お前は助ける事しかやれなかった。それが結論だ」


 ようやく、姿を観察する余裕が出来た。昔のような黒犬の姿ではなくなっている。

 黒い中に鈍く光る銀の刃物のような輝き。

 犬に似ている、狼の形。


「自己紹介がまだだったな。ストレイドック改めハウンドウルフ。速さに関しては、誰にも負ける予定はない」


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