Error継続中 ②
『では次の試合! 本日の大目玉! 突如勝ち上がってきた無名の挑戦者、レミングス!』
『そしてこの人、この闘技場のボス、我らを魅せるはこの男、百戦無敗のキングー!』
ビンゴ。丁度試合が始まる所か。
「破壊王やっちまえー!」
「レミングス、勝てよ!」
「オッズは一:九だよー。勝てば大儲けだよー!」
賭け試合。ここはアバター同士がプログラムを使わずに格闘で戦うという場所だ。参加条件は規定までの能力を持つアバターを使う事。
キングの姿は、あった。姿は優男。右手にはトランプを一枚。人間の形は最高の技術もあってかやけにリアルに作られており、殴られた場所が腫れるというサービス付き。
まぁ、こんな見せ物だからそんな風に手間をかけてるんだろうけど。
「今日もいい勝負見せてくれよな!」
キングは最近ここで遊んでる事が多い。というかここで稼いだ金が収入源なんじゃないだろうか。確か前に聞いた話しだと一月で五十万は入るとかなんとか。その名の通り此処のキングだしなぁ。
「さてと、っと」
熱狂を浴びながらメールリストを開いてここの責任者へ連絡を取る。……まぁ、世果なんだけど。
『なんだい。情報屋に何の用かな、ハルモニアくん』
おや。返信が早いな。
「悪い冗談を聞いた気がするよ責任者。ああ。キングと俺の試合でもやらせたくないか? ルールは互いに本気のアバター。プログラムの使用はなし。俺らの戦いなら集客も見込めると思うんだが」
有名所の二人だ。ヴァンダル最高と噂されるキングと、アタッカーでも上位に入る俺。それも、同じチーム。それなりに見物だろう。
『君とキングくんか。予想は覆せない結果に終わりそうだけれど、面白半分で見に来る人は多そうだ。ルールも拍車をかけるだろうしね。だから別に構わないが、条件はなんだい?』
話しが早くて結構な事だ。
「終わった後に俺から言いたい事がある。それさえ言わせてくれれば何の問題もない」
前準備の一環だしな。今日ここに来たのは、簡単に言うと盛り上げのためだ。許可をもらえたなら宣伝する必要もあるし。
『レミングスの右ストレー……っと!? 決まったぁ! キングのクロスカウンターが決まったぁ!!』
丁度良く試合も終了したみたいだ。次の試合が始まる前に司会のマイクを奪い取ろう。
『時間は二十一時でいいかい? 宣伝はしておくよ。君の方も宣伝を頼むよ』
「ああ、それでいい。……まぁ、宣伝は許可もらえなかった無駄足になる所だったけどな」
キングが笑いながら中央で指を天に上げてるのを見てから、司会のマイクを奪い取る。ここから俺の演技力の問題になるんだよなぁ。
『キング、今日二十一時にお前に試合を申込む』
回りの音が静まって、ここに居る奴ら、総勢で三百人くらいが俺を見つめる。これは少しばかり恥ずかしいな。
「……はっ、久しぶりの顔みたら、んな無謀な喧嘩売りにきたのかよ棺桶! いいぜ、受けてやんよ!」
キングが大声で俺の名前を呼び、周囲の大多数が理解した所で歓声が上がった。
俺とキング。シャングリラ攻略失敗後は二人で鬱憤をぶつけるように色々な所へ遊びに行ったもんだ。まぁどこに忍び込んでも破壊するやらウィルスを仕込むとかはしていないからクラッカーと呼ばれる事はなかったのだけれど。
互いに視線だけ交わして俺は楽屋裏の方に歩く。回りから興奮した声が聞こえたり人を呼ぶ声が聞こえたりしてるけどそれはそれで俺の思惑通りだ。
集客効果はそれなり、にはなるかな。
「……んで、何の用だ棺桶」
通路に入ったらそこにキングが待っていた。流石、俺とお前の仲だもんなぁ。伊達に二人で暴れまわっただけはない。
「久しぶりですね、あんた連絡中々取れないから面倒くさくてこうする事になっちゃったじゃないですか」
正直ここに居なかったら俺の計画が一つ崩れる所だった。その時は第二路線に移行すればいいんだけど。
「おめぇの予定なんか知ったことかってんだ。んで、何の用だよ。詰まらねぇ用だったら地獄みせんぞ」
「詰まらないかどうかはともかく、そろそろシャングリラに行くつもりなんだけどね。いい加減、雪辱戦をやらないか?」
答えはわかってる。キングなら二つ返事で了解をするだろう。
「あ? あぁ。……お前、まだ像の所通ってるらしいじゃねぇか」
ん? 誰から聞いたか知らないけど、よく知ってるな。兎さんあたりから聞いたんだろうか。
「そうだけど、それがどうかしたか?」
「んじゃ、俺に勝ったら手伝ってやるよ」
……は?
こいつ、何を言ってるんだ。
「お前、自分の言ってる事わかってるのか?」
俺がキングに勝つ事の難しさ。多分、十回やって八回は負けるだろう。けれど問題はそこじゃない。勝たなければ協力しないという事は。
「千さんを助ける気は、ないってことか?」
畜生。計画は俺ら四人。兎さん、法一さん、キング、俺が居る事が前提だっていうのに。キングが居ない穴は大きすぎる。
「像の野郎を助ける気はあんだよ。昔は俺もアイツを男だと思って気になった事もあるぐれぇには好きだしな。けど、それとこれはちげーんだ。俺の鬱憤と、懸念があんだよ。適材適所って言葉はあるから、おめーが俺を倒せなくても問題ねぇかもしれねぇ。けど、俺を倒せないぐらいでシャングリラに挑まれても困るんだつってんだ」
どういう事なのかよくわからないけど。
「俺が、お前並に強い奴と戦う事があるかもしれないって言うのか」
「あ? あー、あぁ。そういう事でいいぜ。まっ、俺に勝てばお前の言う事には素直に従ってやるよ、条件付きでな。俺が勝てばお前は俺の言う事を何でも一つ聞け」
……どう考えてもこいつに有利な条件なんだが。けどこれは予想外だ。まさか三年以上からなる計画がこんな所で躓くとは思わなかった。まぁ、キングが居ないなら居ないでどうにかはなるのだけれど、それだけ厳しくなるのは間違いない。
「まぁ、いいぜ。頼むは俺で受けるのはお前だしな。今日の九時までにお前に勝つ計画でも練ってやるよ」
「ああ、別に期待しねぇで待っててやんよ」
それだけ言ってキングは控え室の方に歩いていった。あー。これはまずい。棺桶のままで敵うわけはないんだ。兎さんと作ってるあの三つもまだ完成途中だってのに。いや、ここでの実践になら耐え切れるか。
仕方ない。
「……あ、今暇ですか?」
『うん? 何? 棺桶? どうしたのよ、こんな時間に。例のあれらはまだ完全じゃないわよ?』
兎さんに連絡を取ってみる。幻実に居て良かった。まぁ開発中は大抵幻実に居るんだけど。
「それはわかってるんですけども。あの機能が不完全なだけですよね? 闘技場で使用する分には、問題ないですか?」
そこで少しの間ができた。平気かどうかを考えているのかもしれない。まぁ、多分大丈夫だとは思うし、不具合を確認するためにも必要だ。ぶっつけ本番になってしまうのだけれど。
……本来なら、キングに最終調整をお願いしたかったんだけどなぁ。
『うん。平気だと思うけど。キングに無茶でも言われたの?』
「ご明察ですよ……。勝たないと、手伝わないって言われました」
苦笑して言ってみるけどこの人は同情とかしないんだろうなぁ。
『そう。なら勝ってね。その分苦労するのは、君じゃなくて私たちなんだから』
そうだよ、なぁ。俺もそれなりに大変だろうけどそこは文句を言えることじゃない。俺が責任を全て持つことだしな。
「……頑張りますよ。それじゃあ、九時から試合だから暇だったら見にきてください。あれの性能調査という意味でも」
『わかった。それと、キングに伝えておいて。君も苦労してるみたいだねって』
「はぁ。わかりました。それじゃあ」
通話を打ち切ってホームに戻って準備をするために関係者出口に向かう。
しかし、何に苦労してるんだろう。ていうか自分で言えばいいんじゃないだろうか。
兎さんもよくわからない人だなぁ。
「さて。九時まで徹底研究だなぁ」
キングとの戦い方を。あー。もう五時間もない。これはやばいなぁ。正直、勝てるか不安になってくる。
「なるように、なるか」
全力も出すし、努力はするけど地力が違うからな。こっちはこっちで小細工を労して頑張るしかないな。
埋められない差を埋められそうな差にするぐらいが関の山になりそうだけど。




