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0と1の世界  作者: 龍太
11/23

   Error ③

「案外静かだな」


 三十分が経って、犬さんと兎は接続場所で待機。法一はツールの起動をして、残りの自分を含めて三人はシャングリラの前に立っている。

 なんかやけに描写がリアルというか。西洋風の城になっている。前に聞いた時はドーム型だったらしいのだけれど。

 まさか前回と違う形になる? そんな無駄な労力を使って何になる? 目眩ましにしかならないはずだけれど。


「……はっ。まるでゲームの魔王城みてぇだな」

「その例えは的外れでもなさそうですけれどね」


 二人を見るとそれ程疑問には思っていないようだけれど。……とりあえずは手はず通りにいくしかない、か。


『最初から度肝を抜かれたが、やる事に変化はない。始めるぞ』

「おう。んじゃお前ら死んでも情報は取ってこいよ」

「お前こそ死んでも俺らを気づかせるなよ」

「期待してますよ」


 キングが城の正面へと歩けば、その周囲に防衛システムが浮く。また、妙に手の込んだ作りになっている。とは言ってもシステム程度ならキングの相手にもならないだろう。

 こっちはこっちで。


「棺桶、抜け道を作るぞ」

「はい。あ、壁には触れない方がいいです。罠だらけですから」


 目を凝らせば、確かにワーム、トロイ、ボット、ロジックボムに、幻実が出来てから作られた、アバターの視界を封じるサイクロプスアイ、なんて物まである。

 これだけ強固な城壁とは。その箇所に触れれば強制的に感染させるなんて、厳しすぎる。どれだけの時間をかけてこんな物を作ったのだろうか。


「まぁ、一瞬だけウィルスの機能を停止させれば問題ないだろ」


 壁はFWの役目を果たしているのだろうけれど、そこすらもすり抜けるためのツールがこっちには存在する。FWの型は、アリス社の最新版か。なら好都合。


「……あんまりこれあげたくなかったんだけどな」

「代わりに僕の奴渡したじゃないですか」


 遮断を、こじ開ける。全部を遮断するにしてもそれは完全じゃあない。そうしたら外部から入る事ができないし、内部から入るためには社内に入るしかない。

 けれどそれでは外に繋ぐ事もできなくなる。内部に居る人間が外の情報を要らないと言うなら別だけれどそれはないはずだ。

 だからこそ、穴はどこかに存在する。


『像、問題ないか』


 穴がどこにあるのかは問題じゃあない。穴があるかないかだけが問題。ありさえすれば、それをここに強制励起すればいいだけの話しだ。


「ああ、問題ない」


 壁に穴を開けてそこに飛び込む。ウィルスが互いに干渉し合い異常を報告するタイプだった時の事を考えてダミーウィルスの特性を穴に持たせたけれどそこまで用心してはいなかったようだった。

 それもそれで、不安なのだけれど。どこからか聞こえてくるような気がするピアノの音とか。

 気のせい、かな? 別に悪い予感はしないし。


「さて、二層に到着。棺桶、罠の場所は頼む」

「はい。……そこら中にありすぎですけど、床にはそれ程仕込まれてないみたいです」


 まぁ歩く度にウィルスがかかったら、流石に中に居る奴も困るだろう。最悪それでDos攻撃になる事だって考えられる。とはいえ、ここまでは普通に来れる場所だ。問題は次の階層なのだけれど。


「情報通りかな。犬さんとの通信情報を追えば穴の場所もわかるし、最悪今のを使えば無理やり突破できるし」

「ですね。ただ、あれ一度使うと重過ぎるんですけど」


 便利なのだけれど一瞬でCPUの使用率が八十%を越えるから使いどころが難しい。ログも重要部分以外は消すようにしているのだけれど、確認するとログだけで十Gあったのは恐怖に値すると思う。

 それだけの、大きさという事だし。


「……でも案外軽く来れましたね。話しを聞く限りだと二層に行ける人も限られていたのに」

「無理する奴らが居ないんだろ。さて、んじゃ三層を探すぞ」


 下手に壁に触れればウィルスに引っかかる。

それに今の時点でも普段は分かる現在地がわからない。多分そんなに遠い場所に三層への道があるわけじゃあないと思うのだけれど。

 こんなにFWを使うのは、異常だろう。どれだけの資金が居るのか。


「一層事にFWで区切るなんて並じゃあないな。国家でも動いていると勘ぐりたくなる」


 日本は技術面で上だけれど対応が遅い。ならどこか別の国が動いている? いやそれでもいいのだけれど不自然な気はするなぁ。


「そうですね……。あ、あそこに扉がありますけど、明らかに怪しくないですか? ウィルスは無いのが更に」


 言われた方向へ足を向けて、扉に手を掛けてみる。


「鍵がかかってるな。よっと」


 これぐらいの解除ツールなら用意しているから問題ない。


「中は、んー。あぁ、なんかあるけど。……棺桶?」

「特にウィルスとかは無いみたいですけど」


 情報データがあったので触れてみる。中身は……。


「ビンゴ。罠じゃないかって疑えるが、忘れてただけか?」


 何かを拾ったなんて情報は聞いた事がないし。


「犬さん、拾い物した」

『一応不信な点はないか探っておけ』

「了解」

『なぁ、シャングリラってこんなもんなのか? 特に怖い物はねぇんだけどよ』

『際限なく、それも複数種類のシステムが動いてる時点で怪しいだろう。現に苦戦しているじゃないか』

『まだ壊せてねぇだけだ』


 キングがまだ殲滅していないとは、珍しい。

 ただ向こうに目が向いている内にこっちもやる事を終わらそう。


「さて、三層への道は、っと」

「どうしました?」


 後ろを振り返って、誰も居ないし感知できないのを確かめる。何か今一瞬見えた気がしたのだけれど。

 ……まぁ、悪い予感はしないから気のせいか。


「いや気のせいだったみたいだ。さてと。このまま無闇に歩く時間はないし鼠を走らせるか」


 FWの穴を探し出すために作った鼠型のプログラム。毘沙門天でもイメージしてアバターを作れば良かったのかもしれないけれど、

 そこは言っても今更だよなぁ。


「僕もそういうの作ろうかなぁ」

「あればあったで便利だけどな。下手するとサーバが落ちる可能性はあるのが難点だぞ」


 使い所が難しい。負荷をかけて内部に居たままサーバが落ちるなんて事になったら目を当てられない。


「設定は『避』で目的は『穴探し』と。よし、行け」


 二十匹程の鼠が二層を掛ける。鼠からこっちへはコンタクトはとれないけれどこっちから鼠へはコンタクトを取れる。

 見つからなかった場合はそのまま自己崩壊し、見つけた場合は鼠同士で情報を共有する。

 そして共有した情報は、右肩に乗っている親鼠へと届けられこのアバターに情報を送り自己破壊。作るのに手間はかかったけれど性能は優秀だ。

 けれどまさか奥の手を今日だけで二つも使う事になるなんて。……また何か考えないとなぁ。


「見つかったみたいだ。他の反応も見られないけど、妙だな。このぐらいの警備をするぐらいなら誰か人を雇った方がいいとは思うんだが」

「それは、そうですね。情報を外部に漏らさないためにでしょうか?」


 自分の所で腕利きの人間が居ないから安易に外部に頼る事はしないのかもしれない。

 そう考えれば納得は出来るけれど、納得出来るからと言ってそれに同意も出来ない。


「いや、考えても意味はないか。三層に行くぞ」

「はい」


 鼠の情報を元に道を進む。床にはあまりないとは言ってもそれなりに罠が存在するから慎重に歩く必要はあるけれど、そこまで気にはならない。

 けれど、ここまで特筆するような問題がないのは、どういう事だろう? 噂は所詮噂でしかなかったという事なのだろうか? いやそんなわけはない。

 なら……。


「あれが三層への道ですかね?」

「多分な」


 近くまで寄って、雰囲気が違う事が理解出来る。

 何が違うのか、視覚的には変わらない。けれどこれは、悪い予感しかしてこない。


「今だ!」


 声がして、振り向く。棺桶はここに居る。なら、今の声は誰だ?


「へっ、ここまで来りゃ、私だってシャングリラ攻略ぐらいやれんだよ!」


 金管楽器。それも、トランペットが走っている姿はシュールだ、けれど、それは今ここで見るような物じゃあない!


「ま、待て!」

「棺桶!」


 ミスった。どういう方法でここまで付いてきたのかしらないけどこれは予想どころか想像も出来ていなかった。

 釣られるように棺桶が三層に足を踏み入れた瞬間。


「そういうトラップって事!」


 先に飛び込んだトランペットが困惑したような声を出している。棺桶は事態に気づいたらしくツールを使おうとしているけれど、これはもう遅い。

 第三層から第二層へ行く道はすでに閉じられているし、もう何をしようとも助ける事は出来ないだろう。多分、通信を遮断じゃなくて、精神の遮断って言う所かな。三層で音が聞こえるせいで眠くなってきているのもここの仕掛けの一つなのかもしれない。

 通信事態は遮断されていないのが救い、かな。

 多分用心していても最初で発動しなかっただけで、後々から戻れなくなるだけだったと思えば一人の犠牲で済んで良かったとも思える。


「棺桶、そこの邪魔者を連れて早く逃げて。二層から一層への穴まで閉じたら戻れなくなるわ」


 あ、思わず素で言っちゃった。まぁ、いいか。


「情報は受け取れたよね? さっ、狼狽えてないで早く行って。私の犠牲を無駄にする気?」


 二人が入った瞬間、兎のツールである使用者以外のプログラムを三秒停止させるなんて物騒な物を使って、二人を二層に投げ捨てた。

 これは効いたから既存のプログラムの一つではあるのかもしれない。それだけが解っただけでも儲け物かな。

 ここのプログラムの一部は三秒の間に少しはとれたし。収穫もあった。


「あ、キング。そういう事だから、二人が逃げる援護ね。兎と法一は棺桶の事よろしくね。あと、犬さん」


 返事は、今言う必要はないよね。


「無駄な事はしないでね」


 棺桶がトランペットを連れて逃げたのだと思う。

 叫び声がどんどん遠くなっているから、きっと大丈夫。


『……春水。お前の情報は使わせてもらう』

「うん。お願い。私の本とかは棺桶にあげていいよ。病院の手配とかも出来たらよろしく。財産管理も出来たらよろしくね。それじゃあ、おやすみ」


 これ以上は、話せない。もしもあのトランペットが居なかったら無事潜入して帰れたかな。あー、でもこれは考えても意味ないよね。

 うーん。けど、案外話せる時間があったなぁ。聞いてた情報だとすぐに話す事も出来なくなるって事だったのに。

 まぁいいか。それに、もしこのまま起きられなくてもその方が楽だし。


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