Air:29 契約
彼は僕の後ろに回った。
「契約として、君は僕を操る権利を得たいと思っている。」
「・・・。」
「はい。それともいいえ。いいえと言った瞬間に僕は君の心の中から消える。そうなれば、君はお父さんを救う手だてを失うことになる。」
「・・・はい。」
「・・・2つ目。僕は君に力を貸す代わりに、君のこれから生きるかもしれない10年分の人生をもらうよ。つまり、君の寿命は10年縮むってことだ。いいかい。」
「・・・分かった。」
「さすがだねぇ。現実逃避ってとういうことから始まるのかなぁ・・・。」
こいつなんでも知っていやがる。僕のことなら何を聞いてもこいつは答えるだろう。
「じゃあ、最後。これがフォノアにとっては重要でね・・・。心の闇を増幅させることがあれば、僕は君の心の中から消える。だけど、君の心の中にはその瞬間からまたアビリティーオリジナルを住まわせることになる。それはダークオリジナル。ダークオリジナルは人の心の闇に付け込むのが好きでねぇ・・・。一度でも付け込まれたら、君は犯罪者になるかもしれないよ。それでもいいかい。」
「・・・。」
どう考えたって「はい」しか回答がないように見えた。犯罪者になるかもしれないというのは嫌だが、代償がそれだけで済むのなら・・・。それでお父さんを救うことができるのなら、問題はないだろう。
「うん。」
「OK。契約成立だ。それと言って無かったけど、僕を操るためには君の強い意志が必要なんだ。僕の力を使いたければ、どれだけ君が強い意志で僕を操るかにかかってるからね。それだけでも僕の引き出せる力の量が変わるよ。ハハハハハハハハ。」
彼はそういうと僕の前から消えた。
目が覚めると朝になっていた。体を起こすと夢のことを思い出した。
「ねぇ、いるのもう一人の自分。」
呼んでみた。
「いるよ。」
するとそう言って彼が姿を現した。
「でも、なんでもない時に僕を呼びだすなんてねぇ・・・。」
「・・・いけないの。」
「別に。いけないなんてことはないさ。ただ、暴れられないのが残念なだけさ。それで何。」
「ねぇ、僕は君を強い意志で操ればいいんだよねぇ。」
「そうだよ。」
「じゃあ、僕が強ければ何でもできるわけだよねぇ。」
「もちろん。でも、それは僕ができることに限られるけどねぇ。」
僕は何も言わなかった。しかし、彼は何か察したようで、
「分かったよ。君が僕のことを理解しようとしてるんだね。僕はいつも心の中にいるから、聞きたいことがあったら、何でも聞けばいい。」
と言って彼は僕の前から姿を消した。
(フッ。恐らく彼は僕を消滅させることがないだろう・・・。これは言う義務もないから言わなかったけど、僕の消滅は体に相当に負担になる。あのリアルゲートを通らない限りね・・・。)
次回は11月7日です。




