魔導王…校長に呼び出しをくらう。
「あら・・・今日は珍しい登場ね」
イリスという飼い主に犬の如く走らされた俺は、我が家から転移石版を使いここに来るときの何百倍もの時間を掛けて、ようやくここ・・・『ゼッケント魔術学校』の校長室に辿り着いた。
相も変わらず、奇っ怪な古代魔具にスペースの大半を占領された珍妙な部屋。
その中央に設えられたこの部屋唯一の椅子に腰掛け、ボロボロな表紙の本を愛おしげに読みふける妖艶な魔女・・・ゼッケントは、扉から汗だくになって入室してきた俺を見て、そう呟いた。
「い、色々・・・あるんだよ!てか、急に呼び出すんじゃねえ!」
「仕方ないじゃない。知ってる?急用は急に出来るから急用なのよ?」
「ゼッケント様!遅くなり大変申し訳ございません!」
『急用』という単語に反応したイリスが、すかさず謝罪を口にする。
「あら、いいのよ謝らなくて。どうせ時間が掛かったのは、0割コイツが原因でしょ?」
「はい!そうです!」
「お前・・・ちょっとくらい庇ってくれても良いんじゃねえの?」
一応、お前は俺の目覚まし代わりなんだし・・・元はといえば、お前が伝言すっぽかしてたが遅刻の原因だろ?
「ほら、レドヴァン様!ちゃんと謝って下さい!」
「いやいやいや!そもそもお前がちゃんと俺に・・・」
「大の男が何を細かいこと気にしてるんですか!?貴方は女性を待たせておいて、「遅れてゴメン!」すら言えないんですか!?」
「・・・なんか話の趣旨、変わってね?」
「とにかく!謝るんですっ!」
「フゲッ!?」
会話しながら自身の背後に回り込んでいたイリスに、俗に言う膝カックンをくらった俺は、思わずその場に膝を付く。
そしてその気を逃すまいと俺の頭を掴んだ彼女は・・・なんと、情け容赦一切無く俺の頭部を地に叩き付けたのだった!
「へブウッ!?」
(「・・・この目覚まし、遂に土下座まで強要し始めたぞ!」)
「ゼッケント様!レドヴァンも反省・・・いや、猛省しておりますのは見ての通りです!どうか・・・どうかお慈悲を!ほらっ!レドヴァン様、ごめんなさいは?」
「ふぉ、ふぉべんなはい」
「・・・ふざけてるんですか?」
「ふぃげーよ!」
「アハハハハハッ!!!いやあ、何時会ってもお前達2人の取り合わせは面白いわ!」
ゼッケントの笑い声が室内に響く。
「よし!レドヴァン!お前のその誠意に免じて今回は大目に見てやる!有り難く思えよ!この寛大なる『夜の王』ゼッケント=シュワイツをな!」
「ははあっ!その寛大な御心に感謝いたします!ほらっレドヴァン様も!」
「ふぁかった!ふぁんしゃするから!ふぁんしゃする!」
「・・・さて、余興はここまでにするか」
「そうですね!ゼッケント様!」
「・・・お前ら!」
(「俺と一戦交えたいってんなら受けて立つぞ、コラッ!」)
「さて」
ゼッケントの声音が真剣さを帯びる。
そして、それを合図と受け取ったイリスはといえば・・・俺の頭部をようやく自由の身にすると、いつも通り・・・なにも言わず入ってきた扉の方へ向かっていく。
大きな把手・・・それに手をかける直前にこちらを向き一礼。
そして静かに扉を開け、退出していった。
「魔導王レドヴァン」
俺の名を呼ぶゼッケントの声に、もう遊びの余韻は残っていない。
それこそが即ち、『急用』の重大さを物語っていた。
「いつも通り『世界の危機』だ。いつも通り向かい、いつも通り滅ぼしてこい」
「あいよ」
『探索』開始・・・完了。
俺は即座に転移した。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
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