# 第五話 **「一万の敵軍」**
# 第五話 **「一万の敵軍」**
夜明け前。
駐屯地に、伝令の馬が駆け込んできた。
「た、大変です!」
兵士たちが一斉に振り返る。
「北の国境を越え、敵軍一万が進軍中!」
ざわめきが広がる。
「一万……。」
「八〇〇人じゃ勝てるわけがない。」
「終わった……。」
不安が兵士たちの顔を覆った。
しかし、レオンだけは落ち着いていた。
「敵の目的は?」
セリアが地図を広げる。
「ここです。」
指差した先には、小さな町があった。
**リーベルの町。**
人口は約三千人。
周囲には麦畑が広がり、この地方最大の食料庫でもある。
「敵は町を奪い、食料を確保するつもりです。」
「奪われたら?」
「王都まで飢えが広がります。」
レオンは静かにうなずいた。
「なら、守るしかない。」
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作戦会議が始まる。
兵士たちは深刻な表情で地図を見つめていた。
「正面から戦えば全滅です。」
セリアが言う。
「でも、逃げれば町が滅びる。」
誰も言葉を発せない。
するとレオンが口を開いた。
「敵は何を信じてる?」
「数です。」
「なら、その数を意味のないものにしよう。」
兵士たちは首をかしげる。
「どうやって?」
レオンは笑った。
「敵が一万人なら、一万人全員と戦わなければいい。」
セリアの目が見開かれる。
「……そういうことですか。」
彼女はすぐに地図へ印をつけ始めた。
「この谷は一本道。」
「橋は一本。」
「森は深い。」
「敵は大軍ゆえに身動きが取りづらい。」
レオンが続ける。
「狭い場所へ誘い込めば、一万人も百人も変わらない。」
ガイルが豪快に笑った。
「面白ぇ!」
兵士たちの顔にも笑顔が戻る。
「やってやろう!」
「俺たちならできる!」
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その日の夕方。
八〇〇人は町へ到着した。
町の人々は不安そうに見つめる。
「援軍は……これだけ?」
老人がつぶやいた。
母親は子どもを抱きしめる。
「終わりだ……。」
その時、レオンは町の広場へ立った。
「皆さん!」
人々の視線が集まる。
「怖いですよね。」
誰も否定しなかった。
「俺も怖いです。」
兵士たちが驚く。
「隊長……。」
レオンは笑った。
「でも、怖いから逃げるんじゃない。」
「大切な人がいるから戦うんです。」
静まり返る広場。
「俺たちは、この町を守ります。」
「必ず。」
その言葉には、不思議と嘘がなかった。
一人の少女が前へ出てきた。
「お兄ちゃん。」
レオンはしゃがみ込む。
「どうした?」
少女は小さな花を差し出した。
「これ……お守り。」
レオンは優しく受け取る。
「ありがとう。」
その花を胸ポケットへ入れると、兵士たちが笑い始めた。
「隊長!」
「絶対に負けられないな!」
「お守り付きだ!」
緊張していた空気が少し和らぐ。
セリアはその光景を見て、小さくつぶやいた。
「やっぱり、この人はすごい。」
「人の心を動かすのが、こんなにも自然なんて。」
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その頃――。
敵軍本陣。
黒い鎧をまとった将軍が笑っていた。
名は**バルガス**。
「敵は?」
部下が答える。
「わずか八〇〇です。」
「ははは!」
バルガスは大笑いした。
「踏み潰せ。」
「明日の昼までには終わる。」
一万の兵士たちが歓声を上げる。
誰一人として、自分たちが負ける未来を想像していなかった。
しかし、その油断こそが――
彼ら最大の弱点になることを、まだ誰も知らない。
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## 次回予告
**第六話「八〇〇人の奇跡」**
敵、一万。
味方、八〇〇。
絶望的な戦力差の中、セリアの作戦がついに動き出す。
谷に響く角笛。
燃え上がる橋。
そしてレオンが放つ、勝負を決める一言。
**「俺たちは、仲間を信じる!」**
歴史に残る大逆転の戦いが始まる!




