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# 第十話 **「黒狼の罠」**

# 第十話 **「黒狼の罠」**


「放て!」


黒狼の合図と同時に、無数の矢が闇を切り裂いた。


「伏せろ!」


レオンの叫びが響く。


ヒュン! ヒュン!


矢が石畳へ突き刺さる。


「ぐっ!」


一人の兵士の肩に矢が当たった。


「大丈夫か!」


「これくらい平気です、隊長!」


レオンは兵士をかばいながら前へ出る。


「絶対に誰も置いていかない!」


---


城壁の外では、ガイル率いる百人が激戦を繰り広げていた。


「もっと俺たちに注目しろ!」


ガイルは豪快に笑いながら大剣を振るう。


「今日は暴れ足りねぇ!」


盗賊たちは次々と正門へ集まり、砦の内部は手薄になっていく。


それこそが――


セリアの本当の狙いだった。


---


「今です!」


セリアが小さな笛を吹く。


ピィーーッ!


その音を聞いた兵士たちは、一斉に松明へ火を放った。


ボウッ!


炎が夜空を照らす。


しかし燃えたのは建物ではない。


盗賊たちが奪って蓄えていた大量の干し草だった。


煙が立ち込める。


「火事だ!」


「食料庫が燃えるぞ!」


盗賊たちは大混乱に陥る。


「消火だ!」


「いや、敵を追え!」


命令が交錯し、統率は完全に崩れた。


---


「今しかない!」


レオンは剣を掲げる。


「みんな、行くぞ!」


「おおっ!」


二十人は一気に砦の中心へ突撃した。


その先にあったのは、大きな牢屋だった。


中には、何十人もの村人が閉じ込められている。


「助けて!」


「お願い!」


レオンは迷わず鍵を切り落とした。


ガシャン!


「もう大丈夫だ。」


「みんな逃げて!」


涙を流しながら、村人たちは外へ走り出す。


老人がレオンの手を握る。


「ありがとう……。」


「礼なら、あとで聞きます。」


「今は生きてください!」


---


その時だった。


ドォン!


巨大な扉が吹き飛ぶ。


「レオン!」


黒狼が姿を現した。


黒い鎧。


巨大な斧。


顔には狼の仮面。


「ここまで来るとは大したものだ。」


「だが、お前はここで終わる。」


レオンは剣を構える。


「終わるのは、お前の悪事だ。」


二人は激しくぶつかり合う。


ガキィィン!


火花が散る。


黒狼は圧倒的な力でレオンを押し込む。


「力が違いすぎる!」


兵士たちが叫ぶ。


しかしレオンは笑った。


「そうだな。」


「俺一人じゃ勝てない。」


その瞬間――


「隊長!」


リックが黒狼の足元へ盾を投げ込む。


「今です!」


セリアの声が響く。


「右へ一歩!」


レオンは迷わず動いた。


黒狼の体勢が崩れる。


「ガイル!」


砦の正門を突破したガイルが、豪快に飛び込んできた。


「待たせたな!」


ドゴォン!


大剣の一撃で黒狼の斧が弾き飛ばされる。


レオンは剣を黒狼の喉元へ突きつけた。


「勝負あり。」


黒狼はしばらく黙っていた。


そして静かに笑った。


「……負けたよ。」


「お前は強い。」


レオンは首を横に振る。


「違う。」


「俺たちが強いんだ。」


その言葉に、兵士たちは笑顔になった。


「隊長!」


「やりました!」


砦の上では、囚われていた村人たちが歓声を上げていた。


「助かった!」


「ありがとう!」


「希望の八〇〇人、万歳!」


レオンはその声を聞きながら、夜空を見上げる。


「また一つ、守れた。」


しかし、その頃――。


王都ではマルクス侯爵が机を叩きつけていた。


「黒狼まで負けただと!」


部下が震えながら答える。


「申し訳ありません!」


マルクスの目に冷たい光が宿る。


「こうなれば……。」


「奴を戦場ではなく、王都で消す。」


その隣には、王国最強の暗殺者の姿があった。


「レオン・クロード。」


「次の満月の夜、お前の命をもらう。」


新たな敵は、剣ではなく闇から襲いかかろうとしていた。


---


## 次回予告


**第十一話「王都の暗殺者」**


凱旋したレオンたちを待っていたのは祝福ではなく、静かに迫る暗殺の刃。


セリアが初めて取り乱し、ガイルが命を懸けてレオンを守る!


そして、王国を揺るがす「裏切り者」の正体が明らかになる――。



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