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馬車は、王都ルクスレインの外縁部をゆっくり進んでいた。
窓の外には巨大な壁。
その向こう側にはスラム街。
こっちは白い石畳。
向こうはボロ布と崩れかけた建物。
壁一枚でここまで変わるのかと少し感心する。
「王都への不法侵入は重罪だ」
前方で騎士団長が説明している。
「特に最近は、導光教への反発から騒ぎを起こす者も増えている」
(やっぱ嫌われてんじゃん)
まぁ、あの騎士っぷりを見る限り、この国は信者じゃない人間からしたら息苦しそうではある。
そんなことを考えていると――
馬車が急停止した。
ガタンッ!!と大きく揺れる。
「何事だ」
騎士団長の声。
外が騒がしい。
騎士の一人が扉へ向かう。
その直後だった。
バリンッ!!
窓ガラスが割れた。
「うおっ!?」
黒い布を巻いた男が飛び込んでくる。
さらに別方向からも数人。
痩せた体。
鋭い目。
どう見てもスラム街の人間だった。
騎士たちが剣を抜く。
「貴様ら!!」
だが、妙だった。
そいつらは騎士ではなく――
僕を見ていた。
真っ直ぐ。
「いた……!」
一人が震えた声を漏らす。
「間違いない……!」
「赤き御子……!」
(……ん?)
その瞬間。
僕の動きが、一瞬だけ止まった。
(え、もしかして僕のこと?)
赤って、あの目のことか。
妙に納得していると、
次の瞬間だった。
首元に何か冷たい粉をかけられる。
「っ!?」
視界がぶれる。
体から少し力が抜けた。
まずい。
そう思った時には、もう遅かった。
「確保しろ!!」
僕は反射的に油を出した。
男の腕を滑らせる。
そのまま肘を入れて逃げようとする。
だが。
後ろから別の男に布を巻きつけられた。
「うわっ、ヤメロォ!?」
さらに横から腕を掴まれる。
数が多い。
しかも連携が妙に慣れていた。
「御子を傷つけるな!」
「慎重に運べ!!」
(なんなんだこいつら!?)
怖い。
完全に目が決まってやがる。
騎士たちの怒号が響く。
「追え!!」
「逃がすな!!」
剣戟の音。
悲鳴。
混乱。
その中を、僕は担がれたまま運ばれていく。
「待っ、ちょっ――!」
抵抗する。
だが視界がまだ揺れていた。
さっきの粉のせいか。
思ったより力が入らない。
壁の向こう側。
スラム街の方へ連れていかれる。
(いやいやいや、)
意味が分からない。
僕はただ校外学習に来ただけなのだ。
なのに。
なんで拉致されているんだ。




