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僕の前に、金が来た。


まぁ正確には――


騎士団長アウレリア・フォン・アイゼンリート本人が持ってきた。


白銀の鎧。


長い金髪。


相変わらず威圧感がすごい。


だが、そんなことはどうでもいい。


今の僕の視線は、ただ一点。


金貨十枚。


僕の口元はニヤけっぱなしだった。


(さて、何に使おうか)


まず飯だな。


学食で一番高いやつを食う。


しかも周りに見せつけながら。


あれはいい。


本当に気分がいい。


剣術大会で賭けに勝った時もそうだった。


庶民の僕が、貴族より高い飯を食っている。


あの瞬間だけは、全部勝った気分になれるのだ。


僕がそんな幸せな未来を考えているうちに、騎士団長が口を開いた。


「貴様の功績を讃え、この賞金と――」


僕は途中で金貨をひったくった。


「あ」


周囲の空気が止まる。


騎士たちの顔が引きつっていた。


騎士団長の顔も固まっている。


でも知ったことではない。


僕は金貨を抱えながら思った。


(はっはっは〜!はるばる来た意味があったってもんだ)


最高である。


そんな僕を見ながら、騎士団長はゆっくり続けた。


「……我が騎士団を見学する栄誉を与える」


見学は大怪我してない奴なら全員できる。


別に僕だけ特別ではない。


(栄誉とは?)


と少しだけ思った。


だが、賞金の前では些細なことである。


「それと――」


(ん?それと?)


騎士団長の目が、真っ直ぐこちらを見る。


なんか嫌な予感がした。


「白耀聖騎士団長、アウレリア・フォン・アイゼンリートと対戦する栄誉も与える」


「……え?」


一瞬、思考が止まる。


そして。


「いらない」


咄嗟に出た。


周囲がざわつく。


騎士団長のこめかみがピクリと動いた。


まずい。


団長は険しい顔のまま、ゆっくりと剣を抜く。


白銀の刃が光った。


(おわった)


周りの騎士たちが慌てて止めに入る。


「だ、団長!?落ち着いてください!」


「相手は学生です!」


僕はその隙に全力で走り出した。


逃げる。


逃げるしかない。


こんなところで終わってたまるか。


僕には、やっと金という名の希望が手に入ったのだから。

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