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これは真剣を使っているが、れっきとした模擬戦だ。
もちろん、殺すのは禁止。
つまり相手は、相手を殺さない範囲でしか戦えない。
――なら。
「……仕方ないか」
僕は小さく呟く。
正直、こんな危ない作戦は使いたくなかった。
でも勝つためだ。
僕は自分の体に油魔法をかけた。
腕。
服。
髪。
全身が油で光る。
観客席がざわついた。
「なっ……!?」
ティアの顔が変わる。
そりゃそうだ。
この状態の僕に火球なんて撃てば、一瞬で火だるまである。
普通に死ぬ。
ティアが目を見開いたまま言った。
「何をしてるの!?」
僕はニヤけそうになるのを堪える。
ティアが本気で勝つつもりなら、迷わず火球を撃つはずだ。
一応、ティアとは和解はした。
でも、あれは面倒事を終わらせるためのものだ。
もう前みたいには戻らない。
だから、ティアも流石に模擬戦で僕を丸焼きにはしないだろう。
「なんでそんな戦い方するの!?」
ティアの声が少し強くなる。
「そんな危険を犯してまで、この試合に意味があるの?」
僕は思わず笑った。
「ぬ、ハハハハー!」
訓練場に僕の笑い声が響く。
「そんな惑わすような事言ったって、僕は騙されないぜ〜!」
僕はティアを指差す。
「どうせ僕の良心に訴えかけて、油を消させる魂胆なんだろ!?そんな作戦、見え見えだ!」
周囲の空気が少し変になった。
でも気にしない。
「賞金は僕のものだ!」
ティアが一瞬固まる。
「ちがっ――」
その瞬間。
僕は地面を蹴った。
一気に距離を詰める。
ティアも反応する。
「風よ――!」
風魔法。
だが、遅い。
僕の剣が、ティアの首元で止まった。
静寂。
数秒遅れて。
「……勝者、レイン!」
歓声が上がる。
僕は一瞬呆けたあと、思いっきり拳を握った。
「うおおおおおーーー!!!」
勝った。
僕の賞金だ。
最高である。
僕は上を向いて叫んだ。
その一方で。
ティアは、静かに下を向いていた。




