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94

次が決勝か。


早いな。


まぁ、十人ちょっとしかいないんだから当然か。


さて、対戦相手は――


そう思って視線を向けた瞬間、僕は少しだけ固まった。


銀髪。


なんか見覚えのあるエルフだ。


「……」


不思議だった。


前よりも、その目を見れる。


相変わらず綺麗な目だ。


濁りが一切ない。


真っ直ぐで、眩しくて、だから少し苦手だ。


僕たちは無言のまま向かい合う。


周囲の歓声が遠く聞こえた。


そして。


「最終試合。ティア対レイン――開始!」


その瞬間、ティアが詠唱する。


「火の精霊よ――我が敵を焼き払え!」


来た。


巨大な火球。


前に見た時と変わらない。


いや、むしろデカくなってない?


(何回このエルフに死を覚悟させられるんだよ……!)


僕は慌てて横へ飛ぶ。


火球が地面に直撃した瞬間、爆音と熱風が訓練場を揺らした。


当たったらに死ぬ。


本当に死ぬ。


だが――


(覚悟するのもこれで最後なんだろう…)


僕は歯を食いしばりながら、ティアへ油魔法をぶちまけた。


火属性相手に油まみれ。


普通ならもう火属性の魔法は使えない。


だが。


ティアの周囲に風が渦巻く。


次の瞬間、油が全部吹き飛ばされた。


「うわ、最悪」


風魔法。


油魔法と相性が悪すぎる。


というか、僕と相性が悪い。


けど、幸いなことにティアは純粋な魔法使いだ。


距離を詰めれば勝機はある。


僕は一気に踏み込む。


地面を蹴る。


剣を握る。


だが、


「風よ」


短い詠唱。


その瞬間。


風が爆ぜた。


「っ!?」


体が浮く。


視界が回転する。


次の瞬間には、地面を転がっていた。


「ガフッ……!」


肺の空気が全部抜ける。


普通に痛い。


僕は咳き込みながら、なんとか顔を上げた。


そこには、杖を構えたままのティアがいた。


銀髪が揺れている。


やっぱり強い。


意味が分からないくらい強い。


(……はは)


少しだけ笑いそうになる。


前から、こうだった。


僕が必死に考えて、生きる術を身につけても後からの癖にこいつは、才能で平然と僕の上に行く。


「……でも」


僕は剣を握り直す。


まだ終わってない。


終われるわけがない。


なぜならこの試合には僕の希望、金貨十枚がかかっているのだから。

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