91
「勝者、レイン」
審判の声が響いた。
僕はとてもいい気分だった。
体が軽い。
さっきまでの面倒なことが、全部どうでもよくなるくらいには。
けど、
視線が痛い。
横を見る。
銀髪のエルフと、騎士団長。
どっちも、なんとも言えない顔をしていた。
引いてる。
かなり。
「騎士のやる事ではない……」
騎士団長が小さく言った。
(聞こえてますけど。)
僕は少しニヤけた口を直しながら、そのまま席へ向かう。
横を通る。
担架。
その上に、さっきのキノコ――アヒージョ君。
泣いていた。
回復魔法をかけられているが、やられた心だけはペチャンコなままだった。
(いや、髪もペチャンコか)
どうでもいいことを考える。
そのまま通り過ぎる。
適当な席に座る。
ふぅ、と一息。
静かになる。
やっぱダメだ。
さっきまでの気分が、少しずつ落ちていく。
代わりに、別のが浮かぶ。
馬車の中でのティアの顔。
「……」
別に、謝られた。
ちゃんと。
それは分かってる。
(あいつなりに、ちゃんとしてたな)
そこは否定しない。
けど、
(……まぁ、ああいうのだよな)
少し間が空く。
揉めるのが面倒だから。
これ以上悪くならないように。
だから、一応、謝っとく。
そういうやつ。
(別に悪いわけじゃないけど)
むしろ普通だと思う。
僕でもそうするかもしれない。
「……」
少しだけ、胸の奥が引っかかる。
あの時も、少しは考えたけど、そこでやめた。
そのまま流した。
でも、今は一人だ。
逃げる必要もない。
(……あー)
なんとなく、形になる。
(僕、もうあいつと友達じゃないんだ)
言葉にすると、妙にしっくりくる。
納得もできる。
(まぁ、仕方ないか)
あっちが嫌なら、どうしようもない。
無理に続けるもんでもないし、
迷惑かけてまで、関わる理由もない。
そこまで厚かましくもない。
「……」
少しだけ、間が空く。
(……普通に、楽しかったけどな)
ぽつっと出る。
それ以上は続かない。
僕は軽く息を吐いた。
考えるのは、ここまで。
顔を上げる。
次の試合が始まっていた。
さっきより、少しだけつまらなく見えた。




