89
僕たちは、白耀聖騎士団本部の中にある訓練場へ連れて行かれた。
広い。
そして無駄に綺麗だった。
床は磨かれ、壁には傷一つない。
訓練場というより、金のかかった処刑場みたいだった。
(税金すごいな……)
本日二度目の感想である。
どうやら試験は、一対一のトーナメント制らしい。
順番に戦い、最後まで勝ち残った者が一位。
実に分かりやすい。
そして僕の一回戦目の相手は――
キノコ頭のボンボン野郎だった。
丸く整えられた茶色い髪。
高そうな制服。
無駄に姿勢がいい。
育ちの良さが腹立つほど滲み出ている。
しかも、英雄コース所属らしい。
(……これは侮れないな)
嫌なタイプだ。
金も才能もありそうである。
僕は壁際で深呼吸した。
「よし、今から準備して――」
そこまで言った瞬間だった。
「雑兵レイン。試合だ」
声が響いた。
アウレリアだった。
余計な二文字をしっかり付けて呼んできた。
(まだ準備してないんだけど…
てか雑兵って言うな)
周囲から少し笑いが漏れる。
腹立つ。
だが、仕方ない。
やるしかないのだ。
歩きながら考える。
……いや、待て。
本気でやる必要あるか?
こんな雑兵差別の激しい騎士団だ。
見学しても息苦しいだけだし、何より僕は今、人生について整理したい時期である。
ここは少し手を抜いて、
無難に負けて、
隅で時間を潰すのも悪くない。
そう思った、その時だった。
アウレリアが腕を組み、全員へ向けて言い放つ。
「ただ試験しろと言われても、乗り気ではあるまい」
珍しくまともなことを言った。
「よって、この試験で一番になった者には――」
少し間を置く。
「金貨十枚を与える」
空気が変わった。
ざわめきが走る。
僕の心も走った。
(……金貨十枚?)
目の前が明るくなる。
人生整理とかどうでもよくなった。
ティアとの気まずさもある意味消えた。
雑兵差別も一旦保留だ。
大事なのは金である。
僕はゆっくりとキノコ頭を見る。
相手もこちらを見ていた。
爽やかな笑みだった。
気に入らない。
(よし)
(まずは目の前にいるこのキノコ野郎をぶっ殺すところからだ)
拳を握る。
(僕の油魔法で、こいつをキノコアヒージョにしてやる)




