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やがて馬車が止まった。
僕の地獄の時間も、ようやく終わる。
扉が開く。
外の空気を吸った瞬間、少しだけ生き返った気がした。
すぐに降りる。
後ろは見ない。
振り返る勇気もない。
そして、目の前を見て思わず声が漏れた。
「でか」
白耀聖騎士団本部。
それは、周囲のどの建物よりも大きかった。
高い外壁。
広い正門。
白い石造りの巨大な建造物が、王都の一角に当然のようにそびえ立っている。
(税金かかってんなー)
見上げていると、
重い音が響く。
正門が開いた。
中から、白銀の鎧を纏った兵士たちが姿を現す。
足並みは揃い、
姿勢は乱れず、
無駄な音一つしない。
規律そのものが歩いているみたいだった。
「おお……」
周囲から小さなどよめきが起こる。
僕も少しだけ見入る。
その列の先頭。
一際、空気の違う人物がいた。
白銀の鎧。
長い金髪。
迷いなく前を向く姿。
ただ歩いているだけなのに、周囲の兵士たちより明らかに存在感が違う。
アウレリア・フォン・アイゼンリート。
白耀聖騎士団、最強の女団長。
前に学園のダンジョン演習で騒ぎが起きた時、駆けつけてきたのもこの人だった。
確か、この学園の卒業生でもあるらしい。
その縁もあって、
本来は危険を理由に断っている見学を、今回は特別に許可してくれたと聞いている。
(すごい人なんだろうな)
そう思う。
そして同時に、
(なんでそんなとこに僕が来てるんだろう)
とも思った。
整列した騎士たちの前へ、アウレリア・フォン・アイゼンリートが進み出る。
鎧の音だけで周囲が静まった。
背筋が勝手に伸びるような圧がある。
彼女は全員を見渡し、口を開いた。
「我々は白耀聖騎士団」
よく通る声だった。
無駄に大きくはない。
それでも、端まで届く。
「この国の平和を守るため、日々、正義に従い戦っている」
兵士たちの姿勢がさらに固くなる。
「そなたらもまた、学園にて日々研鑽を積んでいると聞く」
少し間を置く。
嫌な予感がした。
「ゆえに今から、そなたらの実力を見せてもらう」
(え)
「我らの騎士団を見学するに足るか、見定めてやろう」
(聞いてないんですけど?!)
周囲がざわつく。
僕もざわついていた。
心の中だけで。
その時だった。
アウレリアがこちらへ歩いてくる。
一直線に。
なんで。
列の先頭にいた僕の前で止まった。
近い。
思っていたよりでかい。
「そなた、何コースだ」
「い、一応、一般戦闘基礎課程です」
少しだけ言い方を整えた。
アウレリアの口元がわずかに動く。
「ふっ」
嫌な笑い方だった。
「雑兵コースか」
「え」
(あ、そうか。こいつ学園出身やん)
知っていた。
知っていて言ったのだ。
アウレリアは腕を組む。
「まあ、励むことだな」
見下ろすような視線。
「雑兵がどこまで行けるかなど、分かりきっているがな」
(雑兵へのあたり強)
僕は少しだけ傷ついた。




