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僕はどうやら、馬車という空間に嫌われているらしい。
なんでこうも、気まずい相手と同席する羽目になるのか。
前にもあった気がするが、
とても思い出したくないのでやめた。
揺れる車内で、僕は窓の外を見ていた。
石畳の道。
白い建物。
歩いている人々。
景色に集中しているふりをする。
隣は見ない。
前も見ない。
存在感も消したい。
(早く着かないかな……)
そう思っていると、
「ねぇ」
声がした。
まずいぞー。
ティアだった。
僕はこういう時、取り繕うのが苦手だ。
頭の中で何か考える前に、口が動いた。
「やぁ、どうしたんだい?」
ぎこちない笑顔だった。
自分でも分かる。
死にたい。
ティアは少し黙って、
それから真剣な顔で僕を見た。
「……あの時は、少し言い過ぎた」
馬車の中が静かになる。
外の音だけが遠く聞こえた。
(……ああ)
そういう感じか。
僕は少しだけ納得した。
気まずいまま過ごすのも面倒だ。
これからも同じ学園で顔を合わせる。
だから、丸く収めたい。
そういうことなのだろう。
本当はまだ僕のことを嫌っていても、不思議じゃない。
でも、それでも謝る方が都合がいい。
そういう判断だってある。
別に責める気はなかった。
僕だってそうする。
「……あぁ、いいよ別に」
なるべく明るく言う。
軽く。
何も気にしていないみたいに。
「僕が悪かったから!」
少し声が上ずった。
でも、たぶん誤魔化せた。
ティアは何も言わなかった。
ただ、僕を見ていた。
その視線の意味は、よく分からなかった。
僕はまた窓の外を見ると、空がやけに青くなっていた。




