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翌朝。
「――で、なんでついてくるの?」
森の入口で、僕はため息をついた。
「言ったでしょ。一緒に行くって」
ティアは当然のように言う。
「いやいや、危ないって。昨日の見たでしょ?森の中心部に出れば、あんなのがいっぱいいるかもしれないんだよ?」
「見たわよ」
「じゃあ分かるでしょ?」
「うん。だから行くの」
「なんでだよ」
ティアは少しだけ胸を張る。
「私、前より強くなったもの」
「……まぁ、それはそうだけど」
(初めからバケモンみたいに強かったけどね)
「でもさ、村だよ?」
「人間の村」
「危ないって」
「大丈夫よ」
「何が?」
「レインがいるでしょ」
(いや、それは違うだろ)
少し考える。
(……いや、これ普通に止めるべきだろ)
(族長に言えば……)
「ティアさんや……ちょっと待っててくださんす」
「え?なに?」
「いや、なんでもない」
(族長にチクれば止まるだろう)
(よし、それで――)
「レイン」
「ん……なに?」
ティアがじっとこっちを見る。
少しだけ間。
「それ言ったら」
「うん?」
「族長に言うわよ?」
「え……なにを?」
「あなたが身代金の一部をパクろうとしてるって」
「…………」
空気が止まる。
(バレてる!?)
「……いや、別にそんな――」
「へぇ?」
じっと見られる。
(いや、本当は全部パクろうとしてたけど)
数秒、沈黙。
「……はい」
「言いません」
ティアは満足そうに頷いた。
「よろしい」
(なんで僕が従ってるんだ……)
「じゃあ行きましょう」
「はぁ……」
結局、僕たちは二人で村に向かうことになった。
⸻
森を抜ける道。
昨日の戦闘が頭をよぎる。
(……また出たらどうするんだよ)
横を見る。
ティアは普通に歩いている。
(まぁ……昨日よりはマシか)
「なに?」
「いや、別に」
しばらく歩く。
やがて、木々が途切れた。
⸻
遠くに見える、人の村。
「……着いたか」
(何も出くわさなくてよかった……)
「なんか強い魔物に出会えると思ったんだけど、何もなしか……」
(ティアお嬢様は、どうやら戦闘狂らしい)
「ここが人間の村……」
ティアが少し興味深そうに呟く。
(さて、と)
(まずはゴートンだな)
(逃げてなきゃいいけど)
風が、また少し冷たかった。




