62
あれから、しばらく経った。
僕とティアは、森で修行を続けている。
⸻
「レイン、いくわよ!」
「はいはい――」
「火の精霊よ――我が敵を焼き払え!」
火球が放たれる。
――デカい。
(むりむりむりむり)
一瞬で迫る。
(これ避けないと!!)
横に飛ぶ。
ドンッ!!
地面が抉れ、土が吹き飛ぶ。
「……っぶな」
「避けたわね」
「いや、当たったら終わるやつでしょ今の!!」
⸻
「次は当てるわ」
「やめて!!」
⸻
別の日。
「風で動きを止めてから火を当てるの!」
風が足元を払い、体勢が崩れる。
(やば――)
すぐに詠唱。
(来る!!)
「火の精霊よ――!」
(避けろ避けろ避けろ!!)
無理やり体をひねったが、火球が頬をかすめた。
ドンッ!!
背後の木が吹き飛ぶ。
「惜しい!」
「惜しくない!!」
⸻
そんな日々が続く。
毎日、火と風。
毎回、ギリギリ。
⸻
最初から強かった。
それは分かってた。
でも――
(……おかしいだろ?)
確実に、当てに来てる。
動きも速くなってるし、詠唱も早い。
無駄も減ってきている。
「次は当てる」
「それ毎回言ってるよね?」
「今回は違うわ」
「全部そう言ってるでしょ」
⸻
また別の日。
風が来る。
(また足元――)
バランスを崩す。
(やばい!!)
すぐに詠唱。
(早い!!)
火球。
(これ避けないと!!)
無理やり横に転がる。
ドンッ!!
地面が爆ぜる。
「……っ、はぁ……」
息が少し荒くなる。
「どう?」
ティアがこっちを見る。
「……まぁ、いいんじゃない?」
「本当?」
「前よりはね」
「やった」
嬉しそうに笑う。
(前より、ってレベルじゃないだろ……)
その時だった。
ふと、違和感を覚えた。
「……あれ」
「どうしたの?」
「いや……」
周りを見る。
静かだ。
妙に静かすぎる。
「……なんか静かじゃない?」
「言われてみれば……」
さっきまであったはずの気配が、消えている。
風も止まっている。
(……なんだこれ)
嫌な感じがする。
⸻
「レイン」
「なに」
「なんか、変」
「……うん」
僕は木剣を握り直す。
(気のせいじゃないな)
⸻
森の奥。
何かが動いた気がした。




