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戦いのあと、僕とティアは並んで歩いていた。
「ねぇ」
「なに?」
「さっきの模擬戦なんだけど」
嫌な予感がする。
「なんで油魔法、使わなかったの?」
やっぱり来た。
「いや、別に」
「なんとなく」
「木剣でいけそうだったし」
「……嘘でしょ」
「え?」
ティアはじっとこっちを見る。
「私、火魔法使ってたでしょ?」
「……そうだね」
「油に火がついたら、どうなるかくらい分かるわ」
「……」
「だからでしょ?」
少しだけ間を置いて、
「――私が危なくならないように」
「いや、そんな大した理由じゃ――」
「ふふ」
ティアは小さく笑った。
「優しいのね」
「違うって」
「はいはい」
(少しバカにされてる気がする……)
⸻
「でも、負けちゃったわね」
「惜しかったけど」
「いや、普通に運で勝ったような感じだけどね」
「え?」
「なんでもない」
⸻
「次は勝つわ。もっと強くなる」
「ほどほどにね」
「嫌よ」
(流石はお嬢様。頑固だな……)
⸻
「レイン」
「ん?」
「次はもっとちゃんと当てるわ」
「やめて!!」
「なんでよ」
「普通に死ぬから」
ティアは少しだけ不満そうに頬を膨らませた。
「初級魔法なんだから大丈夫でしょ」
「いや、まぁね」
(あの火球、当たってたら火だるまだったな……)
「でも」
ティアは少しだけ真面目な顔になる。
「レイン、避けるのすごく早かった」
「あ、うん、まぁね…」
「流石ね」
「いや、別にそんな大したことじゃないよ」
(あれ普通に転んだだけだけど……
言わない方がいいね)
「次はレインが避けても追いかけて当てるわ!!」
(殺害予告された。)
⸻
「レイン」
「ん、なんすか?」
「これからも相手してくれる?」
少しだけ考えて、
「夏休みの間だけね」
「なによそれ」
ティアは少しだけ笑った。




