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59

レインはエルフ村へ向かって歩いていた。


距離は半日ほど。


森の中の道を一人で進む。


途中、草むらが揺れた。


低いうなり声。


魔獣だ。


レインはちらっとそっちを見る。


「……」


(無視)


戦えば殺されるかもしれない。

わざわざ死にに行く必要はない


レインはそのまま歩き続けた。


魔獣も深追いしてこない。


そして――


エルフ村に着いた頃には、すっかり夜だった。


村の灯りが静かに揺れている。


レインはそのまま族長の家へ向かった。


扉を叩く。


コンコン。


「入れ」


レインは扉を開けた。


族長が椅子に座っている。


レインは言った。


「僕、どこで寝たらいいんすか?」


族長は眉を上げた。


「……お前、初日どこで寝たんだ?」


「牢屋です」


一瞬、沈黙。


族長の顔が少し気まずくなる。


「あー……」


「なんか、すまん。その時は疑っていたからな」


レインは肩をすくめた。


「まぁ普通そうでしょ」


(今は信用されてると。随分評価変わったな)


族長は腕を組んだ。


「空いている家がある」


「そこを使え」


「元々、戦士の家だったが……」


言葉が一瞬止まる。


「今回の戦いで死んだ」


「……」


レインは少しだけ黙った。


(とても借りにくいですわ。まぁ借りるけど)


「じゃあ、そこ借ります。」


族長は立ち上がった。


「案内する」


二人は外に出た。


夜のエルフ村は静かだった。


昼間のざわめきが嘘みたいだ。


歩きながら族長が言う。


「ティアは今日、一日中修行していたぞ」


「……もう?」


「今日、弔い終わったばっかでしょ」


族長は鼻で笑う。


「あいつは昔からそういう性格だ」


「一度決めたら止まらん」


(真面目すぎだろ)


族長が指差した。


「ここだ」


小さな家だった。


だが、ちゃんとしている。


「好きに使え」


「どうも」


レインは扉を開けた。


中は静かだった。


家具もそのまま残っている。


レインは袋を床に置いた。


「……」


ベッドに倒れ込む。


天井を見上げた。


「疲れた」


久しぶりにまともなベッドだった。


そのままレインは眠りに落ちた。


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