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レインは村の入口に立っていた。
久しぶりに見る村だった。
(まぁ……すぐ帰るけど)
レインは肩をすくめ、そのまま堂々と村へ入った。
(堂々としてれば大体気付かれない)
村人達はそれぞれ騒いでいたが、レインに気づく者はほとんどいない。
だが、ある家の前だけは違った。
人が集まっている。
二十人以上。
怒鳴り声が響いていた。
「ふざけるな!!」
「五十人で行って二十人も死んだんだぞ!!」
「ザバル先生まで死んだんだ!!」
「責任取れよゴートン!!」
どうやら、ゴートンの家らしい。
レインは少し離れた場所からそれを眺めた。
(荒れてるな)
村人の一人が怒鳴る。
「そもそもキラチンのせいだろうが!!」
「エルフを襲うなんて言い出したのはあいつだ!!」
別の男も叫ぶ。
「ザバル先生まで連れてきてこの結果だ!!」
「どう責任取るんだ!!」
家の中からゴートンの声が聞こえる。
「だから落ち着けと言っているだろう!!」
完全に修羅場だった。
レインはその様子を見ながら思う。
(今なら余裕だな)
レインは静かにゴートンの家の横へ回った。
そしてポストに封筒を入れる。
中身はもちろん――
キラチンの身代金の手紙だ。
(よし)
それだけ確認すると、レインはその場を離れた。
すると、村人の会話が耳に入る。
「そういえばあのレインはどうした!!」
「ザバル先生を殺したあの野郎だ!!」
「エルフ側についた裏切り者だ!!」
「見つけたらぶっ殺すぞ!!」
一人の男が低い声で言った。
「……お前ら忘れたのか」
「ザバル先生の頭を掲げて、喜んでたバケモンだぞ」
その言葉で、周りが少し静かになった。
別の男が言う。
「……見た」
「俺も見た」
「血まみれで笑ってやがった」
誰かが吐き捨てる。
「完全に狂った野郎だ……」
それでも別の男が怒鳴る。
「だ、だからって許すのか!!」
「見つけたら村から叩き出すぞ!!」
だが、さっきより声の勢いは少し弱かった。
(あー)
(完全に敵認定されてしまったー)
まぁ当然か。
レインは少し考え、
(……荷物まとめるか)と結論を出した。
村の外れへ歩く。
そこにレインの家があった。
森に近い場所だ。
あまり人が来ない。
レインは扉を開けた。
中は静かだった。
机の上に一通の封筒が置かれている。
「……?」
レインはそれを手に取った。
差出人を見る。
ミレイ
(あいつか)
レインは封を開けた。
中には丁寧な字の手紙が入っていた。
⸻
レインへ
元気ですか。
夏休みになってから学園がなくて、少し暇です。
レインは今、何をしているんですか?
また学園で会えたら嬉しいです。
ミレイ
⸻
レインはしばらく手紙を見ていた。
そして小さく息を吐く。
「……平和そうだな」
手紙を机に置き、荷物をまとめ始めた。
服、ナイフ、そして少しの金。
レインは部屋を一度見回す。
特に感傷はない。
「汚いボロ屋だ。」
袋を持ち、家を出た。
村の道を歩く。
すると村人達がレインに気づいた。
「……レインだ!!」
「ザバルを殺した奴だ!」
ざわつきが広がる。
一人の男が前に出る。
「お、お前――」
その瞬間。
レインがちらりと睨んだ。
(今の僕は、あの名軍師ザバルを殺した最強戦士!と思われているから、これするだけで大丈夫なはずだ。)
男は言葉を止める。
周りの村人も動かない。
沈黙が流れた。
レインはそのまま歩く。
(マジでいけたよ。)
(みんなバカだなーー。)
そのまま村の外へ出た。
後ろを振り返ることはなかった。




