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僕はゴートンに手紙を書いた。


[息子を殺されたくなければ、金を三億ゼニ用意しろ。さもなくば、お前の息子の首を切る。]


と書いておいた。


(なんか、悪い事した奴を懲らしめてるのに、こっちが悪い事してるみたいだ……)


(まぁ、いいや)


この手紙を郵便に出せば終わりだ。


そう思った。


けど――


(ここ、森やん)


(郵便ないやん)


つまり、この手紙を出すには人間の村まで行かなければいけない。


(めんどくさい)


しばらく手紙を見つめる。


そして思った。


(……直接ポストに入れてくればよくない?)


どうせ行くなら同じだ。


郵便より確実だし。


(なんか、まわりくどいけど)


僕が立ち上がると、後ろから声がした。


「どこへ行こうとしてるの?」


ティアだった。


僕は手紙を軽く振って見せる。


「ゴートンの家」


ティアの眉がぴくっと動く。


「……は?」


「手紙届けてくる」


少しの沈黙。


ティアは腕を組んだ。


「なら、私も行きます」


(いや、いらない)


人間の村にエルフが行けば、どう考えても目立つ。


しかもティアはまだ戦えるほど強くない。


(普通に足手まといだな)


僕は少し考えてから言った。


「別にいいけど」


ティアは少し意外そうな顔をした。


僕はそのまま歩き出す。


そして――


族長の家の前で足を止めた。


「族長」


中から族長が出てくる。


「なんだ」


僕は普通に言った。


「ティアお嬢が人間の村に行こうとしてます」


一瞬、空気が止まった。


後ろでティアが固まる。


「は?」


ティアが慌てて口を開く。


「ち、違います!私はただ――」


族長の目が細くなる。


「ティア」


低い声だった。


ティアは姿勢を正した。


「……はい、族長」


「人間の村に行くつもりか」


ティアは少し言葉を詰まらせた。


「……レイン殿が行かれると聞いて、護衛として――」


族長は腕を組んだ。


「必要ない」


「ですが――」


「必要ない」


短く言い切った。


完全に命令だった。


ティアは悔しそうに拳を握る。


「……承知しました」


僕はその隙に村を出た。


森の道を歩きながら思う。


(よし)


(めんどくさいのが一人減った)


半日以上歩いて森を抜けると、人間の村の明かりが見えてきた。


(疲れたーー)


門のところには見張りが立っている。


普通なら、こっそり入るべきなんだろう。


でも僕は普通に歩いていった。


(堂々としてれば、大体気付かれない)


人は怪しい動きをする奴を見る。


逆に普通に歩いている奴は、意外と見ない。


見張りがちらっとこっちを見る。


「……誰だ?」


「ちょっと用事」


僕は適当に答えた。


見張りは少しだけ眉をひそめたが、それ以上は何も言わなかった。


僕はそのまま村の中に入る。


(すばらしい)


夜の村は静かだった。


ところどころの家に灯りがついている。


僕は歩きながら思う。


(さて)


(ゴートンの家はどこだっけ)


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