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ティアに引っ張られながら歩いていると、騒ぎの中心が見えてきた。


どうやら応援の騎士団も到着しているらしい。


白銀の鎧がずらりと並んでいた。


その光景を見て僕は少しだけ安心する。


よし。


これだけ騎士がいるなら、もうネグラディアの連中も諦めるだろう。


そう思った時だった。


「おおおおお!!」


ネグラディアの住民たちから歓声が上がる。


嫌な予感がした。


とても嫌な予感がした。


「見ろ!!」


「あの漆黒のレイン様が敵の一人を捕えて戻ってきたぞ!!」


「さすがはレイン様だ!!」


「やはり何かお考えがあったのだ!!」


僕は下を向いた。


なんでこいつら、こんなお花畑なんだ。


隣ではティアが僕の手を握ったまま歩いている。


どう見ても僕が捕まっている。


だが住民たちは違う解釈をしたらしい。


(やめてくれ……)


これ以上勘違いが積み重なると取り返しがつかない。


僕は小さな声で言った。


「あの……ティアさん」


「何」


声が冷たい。


怖い。


「ちょっとだけでいいから僕に捕まったフリとか……」


ティアが睨んだ。


(うん、無理だ)


だが。


このままではまずい。


非常にまずい。


ネグラディアの民から見れば、僕は救世主であり、深淵の継承者であり、漆黒のレイン様なのである。


その僕が普通に捕まって連行されている。


これは敗北宣言みたいなものだ。


せっかく手に入れた尊敬が消えてしまう。


それはとても困る。


だから僕は顔を上げ、背筋を伸ばし、王者の風格を意識しながら振り返るのだ。


これをしたらティアに嫌われるかも知れない。


だが覚悟を決めるんだ。


てか、もう嫌われてただろ。


やるしかない。


「この地の民たちよ!!」


ネグラディア中が静まり返る。


住民たちが一斉に僕を見る。


「安心したまえ」


僕は重々しく言った。


「私は敗北した訳ではない」


「おお……!」


どよめきが広がる。


騎士たちは嫌そうな顔をした。


ティアの眉がぴくりと動く。


怖い。


だがもう止まれない。


「この邪悪なエルフは、卑劣にもネグラディアの民を人質に取ったのだ!」


「なっ……!?」


ティアが振り向いた。


ものすごい目である。


怖い。


そしてティアの握力がグンと強くなった。


「ぬお?!」


僕は痛みに耐えながら言った。


「私は民を守るため、自ら連行されることを選んだ!」


「おおおおおおおお!!」


歓声が上がる。


老人なんて泣いていた。


「レイン様ァ!!」


「なんというお方だ!!」


「我らのために……!」


僕は続ける。


「だが安心したまえ!」


住民たちが息を呑む。


「復讐など考える必要はない!」


「おお……!」


「私はこのまま連行されるが、お前たちはそのままひっそりと生きたまえ!」


「レイン様ァァァァ!!」


「そんなぁぁぁ!!」


「なぜぇぇぇ!!」


「お帰りをお待ちしておりますぅぅぅ!!」


悲鳴と泣き声が広がる。


その光景は少しだけ胸が痛んだ。


せっかく持ち上げてくれた連中だ。


飯も食わせてもらった。


居心地も悪くなかった。


だから少しだけ申し訳ない気持ちはある。


まぁ、僕のせいでティアが襲われるとかになるとヤバいからね。


この場はなんとかなったが、後で絶対ティアに殺される。


僕は現実逃避するように空を見上げた。


そして横を見る。


ティア。


アウレリア。


騎士団。


学園の生徒たち。


全員がゴミを見るような目で僕を見ていた。


(死にたい)


だが今さら引き返せない。


ここまで来たらやり切るしかない。


僕は何事もなかったような涼しい顔を作った。


そして、そのままティアに引っ張られながら馬車の方へと連行されていった。

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