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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル 弓倉


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狐の兄弟 5

あの状態の(ろく)が雉鶏精までをも葬ってしまうとは思ってもみなかった。あのまま魂まで喰べたと思われる動作をしたあとに陸は意識を失ってしまった。


いくら魂や尻尾が消滅したからとは言え、殺生石の塊である筆子や鎮夫の体をこのままにしておくことは出来ない。行く行くは温羅の釜に葬ることになるだろう。やってきた示尾と不言にとりあえず鎮夫の亡骸を幽り世へと運んで戻って来てもらった。


墨夫と筆子のもとに戻らないといけないので示尾に陸を任して貴羅の三人で先に帰ってもらい、己は不言についてきてもらった。

「死者でも先読みは可能か?」

「できません。生者だけです。」


正直、まだ墨夫が正気を取り戻せてなかったらと思うと気が重かった。

よほど死んでいて欲しかったのか墨夫は半獣の姿で筆子の体を更に破損させようとしていた。

不言も驚いたようで「あ」だか「え」だか声を漏らしていた。


とりあえず血まみれの二人を離して不言に筆子の亡骸を幽り世へ持って行ってもらった。己は墨夫を促して一緒に帰る途中にを川に突き飛ばした。


「何するんだよっ!!!」

「己はともかく、お前は血まみれまま帰るわけにはいかんだろ。」

一応己も川の中に入った。

口周りはよくこすれば落ちたが服についた血はよく落ちきれなかった。

「どうすんだよ?」

「お前が聞くな」と言いたかったがそれには応えなかった。背が伸びて着れなくなった少年のシャツやズボンが丁度今の墨夫に合うはずだ。そのまま己の家によらせて那由他に用意させた。

子供だけで夜道を歩くわけにもいかないので、那由他に頼んで不言を呼んでもらい、二人で墨夫を送った。いろいろと連れ回すことになった不言は嫌な顔一つしなかったが、その分、彼に申し訳なく思った。



「今なら来た時と逆の方法で親に気づかれずに戻れるよ。」

そう言われて墨夫は家の表に面してないところにある窓を開け、枠に体を乗り込み中を向いたまま固まった。

「どうし…」

「やっと開放されたわ。」

ため息を付くようにそれだけ言うと中に入って窓を閉めた。



「恐怖とかで縛られていた様ですね。」


貴羅が撃たれたときに狼の己と僕(オレ達)から守ろうと必死に抵抗していたのに…。当事者同士でないと解らないこともあるのだろう。兄妹とは解らないものだ。

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