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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル 弓倉


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狐と尻尾5 未名月狼

墓を掘り起こしたせいで身体中(からだじゅう)が土臭くなってしまった。


正直、肉体的にも精神的にも疲れた(オレ)は、屋敷の中の貴羅と話した部屋のベッドの上に横になり目を閉じた。


不言は言った。鬼屋敷で日が暮れる前に寝てから、自然と目が覚めてから川原(かわら)へ来いと。





…貴羅が少年が狼男だと知っていた。部屋に入るときにそれを思い出して少し暗い気分になった。考えないようにしたが涙が止まらなかった。



「キラが狼男がどんなものかをきちんと知ったら、その時にあらためて僕を拒絶するんだろうな…。」


少年の吐露に「まだそうと決まったわけじゃないだろう。」と(つぶや)いてみたがきっと届いてないだろう。

なあに、貴羅に拒絶されたく無いのは己と僕(オレたち)共通の願いなのだ。













「………。」


何時間寝たかは判らない。

外には日の明るさは全く無く、丸くない月と無数の星が空に蔓延(はびこ)っていた。




(まが)い物とは言え、家族が減ったら墨夫はどう思うだろう。










墨夫と筆子、そして写真でしか知らない鎮夫とやらの顔を思い浮かべながら不言に言われた川原の近くの道にある木の陰に隠れた。少年と貴羅が腰掛けに使った倒木がよく見えるが今はそれに用はない。



そうこうしてるとアイツらの禍々(まがまが)しい妖気をはっきりと感じた。力を使うときは、普段隠していても、そういったものはダダ漏れになるのだろう。それは上からだった。

鎮夫の背中には大きな翼があり、筆子を抱っこした状態で空から降りてきた。やはり。鎮夫の方が雉鶏精で、筆子の方が狐狸精だった。



不言から言われたこの場所は風下で彼らには匂いでは気づかれまい。墓を掘った土臭さはまだ十分に残っていたので、今なら奴らにも分からないだろう。


鎮夫が筆子を地面におろしたと同時に連中の後ろで鬼門が開き、勢いよく出てきた不言が鎮夫を蹴飛ばした。




「わぁっ!!」

吹っ飛んだ鎮夫に驚いている筆子に己は声をかけた。


「筆子、こっちだ!!」

両手を広げた己の元へ筆子が駆け寄り、しがみついた。


墨夫には「帰りに待ち伏せをしている」とだけ伝えてもらった。今、筆子と鎮夫を引き離せたのは伝言のおかげだろう。



不言は転んでうつ伏せ状態の鎮夫の首と腰辺りに足を乗せて固定させてから二本の尻尾を取り出した。不言の後ろから鬼門を開いて(ろく)が大きい瓶を持って来た。不言が、いつも通りの方法で瓶に詰め、尻尾を消し炭にする。



「え、何?」

数秒したら鎮夫は正気になった様な声を出した。

それでも不言はどかなかった。

「…!!」

再び不言は鎮夫の背中に手を入れて尻尾を取り出した。そう、これで九尾の尻尾は九本、消え去ることとなる。

こちらも先の二本と同じ瓶の中で灰になると(ろく)が封をした。






本当に今日が満月で無くて良かった。


満月だったら己の意思に関係無く狼の姿になり、筆子はそれを怖がって助けを求めるために(みずか)ら己の腕の中になんて来ない。

満月でないおかげで己はこの手で女狐を捕まえることが出来たのだ。


不言と初めてあった日、屋敷の庭で語り合った。



「満月の夜にだけ狼になる。」



あの時の(オレ)の言葉に不言は「本当にそれ以外の方法で狼になる方法は無いのか?」と言う疑問を持ち、それで狼の毛皮を(まと)い、狼に変わる己の姿が見えたそうだ。

陸に頼んだ狼男に関する本に狼の毛皮を纏い、狼に変身すると言う記載があった。荒唐無稽(こうとうむけい)なことだと思っていたが、先読みを授かった者が見えたのだ。乗っかるしか無い。





「やめて!離して!!」

自身が攻撃の対象だと気づいた筆子は暴れ出した。己は筆子を地面に押さえつけ、鬼門から出てきた貴羅が己の首に巻き付けるように狼の毛皮を乗せた。

後は狼になった体で女狐の首を噛み砕けば良い。



狼になった体はどうしたら良いのか判っていた。何も躊躇(ちゅうちょ)せずに噛んだ。無我夢中で何度も。


「筆子?やめてくれ!!離せ!!」

鎮夫が叫んでるのが聞こえる。この娘はあんたの年の離れた妹ではない。今までに何百人、何千人もを殺してきた女狐ー、そう、お前等が慕ってたお姉様だ、雉鶏精。




「きゃあっ!!」

後ろの貴羅(キラ)が驚いた声を上げたかと思ったら(オレ)は前方へ突き飛ばされた。

あまりのことで四つ脚とは言え、己は前方へ回転して倒れた。

振り返ると何かが女狐を抱えて走り去っていた。


「墨夫か…。」


ずっと川の中にでもいたのだろう。

ずぶ濡れの体ではどこへ逃げても地面に水跡が残る。それを辿れば良い。

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