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嫌われ鬼娘と彼女に恋した─僕と己─  作者: ラーテル 弓倉


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和気藹々

(ろく)の顧客から二本の尻尾を取り出したので残りの尻尾は三本となった。

残りがどこにあるのか分かっていたが、教授の分から間を空けない方が良い。満月までにまだ半月以上あった。



「いただきまーす♪」

祢呼が自身の弁当箱を空けて貴羅のと見比べておかずの交換の交渉をしていた。

なんだかんだで己、祢呼、貴羅、墨夫の四人は席が近かったせいか最近ではみなで集まって昼食を取ることが当たり前になっていた。


墨夫よりも先に己が自身の弁当を食べていたが、墨夫が弁当の蓋を開けると直ぐに無意識に彼の弁当に箸を伸ばした。目的は肉だった。そのまま奪った肉を口に入れていた。


「ちょっと!然!!」

祢呼が怒る。確かに行儀が悪いのは分かっている。

「…すまない。」


「今のはアドルフね。」と貴羅がポツリと言った。


「そこまでして肉が食いたいのかよ。」

墨夫の言葉はあんたじゃなくてアドルフの方かよと言う意味に感じた。

「初めて石見くんと貴方がお昼をご一緒して、おかずを貰うとき時のやり取りはほぼアドルフだった。」


墨夫は勘弁してくれよって感じだった。

少年は社交的だと思っていたが実際は少々図々しい性格なかもしれない。それを可笑しく思った。



「あと今日の夜に、兄貴と筆子の二人で出かける予定だから。」

墨夫の話が事実なら、この機会を利用するしかない。



なんでも石見家の方針で誰かの誕生日に良いところへ食事に連れて行ってくれるらしい。いつもは誕生日前後の休みの昼間に母親が連れて行くのだが、今年は鎮夫が名乗り出たそうだ。


「大学を出たら時間は取れないかもしれないので今のうちに兄らしいことをしたいんだと。」


「お前の誕生日ではない」「金を無駄にしたくない」等の理由で筆子しか連れて行ってもらえないらしく墨夫が拗ねた様な口調で教えてくれた。


「二人を一緒にして大丈夫なの?」

祢呼がくいついた。

「筆子に断れと言ったけど、大丈夫しか言わなかった。こんな機会はめったに無いだろうから、なんとかして付いて行きたいけど、夜にオレ一人では外に出させてもらえないだろうから、アンタに話してるんだよ。どーせ、監視かなんかするんだろ?ムカヒさんと一緒に。」


墨夫から当たり前のように出されたその名に心当たりがない。

「…ムカヒとは誰だ?」

「お兄ちゃんよ。」

貴羅が知らなかったの?と言いたそうな顔で己を見る。


「え?お兄ちゃんそんな名前だったの?」

己が反応する前に祢呼か大きくおどろいた。ムカヒか。ムカヒフゲン…いやフゲンムカヒか?

「ええ。ムカヒは現し世での戸籍にある名前。後々必要になるからって私達が小学校に入る頃に作ってたみたい。現し世(こっち)では不言は使ってない。」



「え?お兄ちゃんフゲンって言うの?」

祢呼はそこから知らなかったらしい。

「フゲンムカヒ?ムカヒフゲン?」

祢呼は己と同じ疑問を抱いたようだ。

「不言が本名だけど現し世での名前ー、戸籍では別の名前を使っててそれがムカヒ。」

「んん?」

「本当の名前が不言。現し世でしか生活出来ないヒト達と同じように戸籍が無いと将来困るからって取った名前が不言とは別にあるの。」

そこまで言われても祢呼は解らない様だった。



「とにかく、見張るんならちゃんとやれよ。」

「人に物を頼むならちゃんとした態度で言いなさいよ。」


墨夫の発言に祢呼がかみついていた。いつもどおりワイワイ言い合っていたが、いつもの墨夫の「ヤブ医者が〜」の発言はなくなっていた。

あと何回、こんな時間が過ごせるだろう。


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