家族写真
貴羅は夜のうちに隠り世へと言ってしまった。
不言は貴羅が望むのなら通学させるとは言ったけど、貴羅が望まない可能性もある。
あれから己は義母の通夜や葬儀のために二日も休み、貴羅の現状が分からずにもどかしかった。登校すると仮の学校の建物の前で隠り世の扉が開き、そこから不言、続いて貴羅が出てきた。
「また終わる頃に迎えに来るよ。このあたりにいるね。」
「わかった、ありがとう。」
完全に貴羅が不言に安心しきっているのがわかる。柔らかいんだよ、表情が。少年ですら見たことが無かった。
「おはよう。」
貴羅は笑顔では無いが敵意の無い顔で挨拶してくれた。
これは少年が知っているいつものキラだ。
「もう、平気なのか?」
「ええ。今日からなの。朝、尾白先生に見てもらった。傷口もきれいに塞がって、いつも通りに動けるなら大丈夫だろうって。」
今の己はこうやって貴羅とまた会話が出来るだけで幸せなのだ。
「げっ!戻すの忘れてた。」
教室に入ると鞄の中身を見て墨夫が騒いでいた。
「まだ戻してなかったのか?」
「うん。」
「マジで!!?見せて見せて!!」
祢呼が割って入る。
「お前は昨日も見ただろう。」
ムッとする墨夫をお構い無しに祢呼が割って入る。
「眼福よ!こんだけキレイな人は何度だって見たいわよ!」
「お前は同族じゃないだろ!」
祢呼と墨夫が騒いでいるのに貴羅が興味を持った様だった。
「墨夫の家族写真だ。昨日、見せてくれたんだ。」
「石見君、私も見て良い?」
「いーよ。」
正直、貴羅がどう反応するかが気になる。
どんな感想を持っても彼女は表に出さないだろうが、祢呼と同じ様な事を思われるのは嫌だと思った。彼女は石見家の二枚の家族写真を見比べている。
「お兄さん?どちらも同じ人で良いのよね?」
「そうだよ。」
貴羅は兄は何処其処大学でそこに何々教授がいるかと聞き出した。大学は合っているが教授の名前までは知らないと墨夫が返す。
「…お父さんの仕事の依頼人に今言った教授がいて、大学に付いていった際、筆子よりも中と外が合っていない人を見かけたから覚えていたの。」
「合っていないってどういうこと?」
祢呼の疑問に貴羅は筆子と出会ったときのことも踏まえて己と同じ説明をした。
「キラもしずおさんを知ってたのね。いつ頃会ったの?」
祢呼が食いつく。
「去年の夏休み。私が容姿を調える様になってからお父さんからお手伝いとして色々連れて行かれるようになった。大学には地震の起こる前の一回しか行って無いから間違いは無いはず。」
もう慣れたと言った様子で墨夫の表情は変わらなかった。
放課後、時間通りに不言が外で待っていた。
貴羅に頼んで目を瞑った状態で不言に留まるように頼んでもらい、己は墨夫を彼の元へと引きずって行った。
「急にすまない。この子が見聞きしたことが女狐に筒抜けかどうかを見て欲しい。」
不言はまっすぐと墨夫の顔を見た。
「本人が話さない限りその心配は無いです。」
「そうか。まだ見て欲しい物がある。墨夫、写真出してくれ。」
彼は「え?何で?」と言う顔をしたが狼に逆らえないのか墨夫が渋々カバンを開ける。
「写真で見てもらいたい人物がいる。家族写真の一番幼い娘でこの子の妹だ。」
「同じ質問で良いんですか?」
「えっと…」
まだ写真を見せる前で良かったが、なんて頼むか…。考えが纏らないでいると貴羅が割って入る。
「写真は二枚あるの。古い方は筆子やお兄さんに何が入っているかを、後から取った方はこの人達に対して私達がするべきことを…これでどう?古い方はこれまでの事だから後に撮った物を見るのに影響はされない。」
貴羅が言った通りでお願いした。渡す写真に誤りが無いよう、己と墨夫で確認してから不言に見せた。
「…これは鳥ですか?こんな姿の妖怪は初めて見ました。」
筆子本人は自身は雉の妖怪だと言っていた。不言には頭が複数ある鳥が見えたそうだ。羽や足等の特長を聞く限りだと、本人が言ってた通り雉で間違い無い様だ。たしかに墨夫の兄妹、片方が女狐で、片方がその雉の化け物だった。
その後、二枚目も確認してもらった。こらからどうすべきか…
「やはり、我輩も動く必要がありますね。」
「お兄ちゃん!」
貴羅が驚いた声を上げた。
別々の写真とは言え、一日に同じ人物に対して二回見たとみなされたのだろう。不言から鼻血が出て、貴羅がそれを留めていた。




