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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第四章 モノ・インフィニティ編

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197 元の姿と迷宮の核

 ラグナ改めカエデが言う。


「アレスも元に戻ったら? あとは姿を元に戻すだけなんでしょう?」


「そうだな」


 俺は、その場で身につけているもの、装備しているものをすべて亜空間へ収納した。


「なんでいきなり裸になるのよ! 布で隠しなさいよ!」


 カエデに怒られたので、布を一枚取り出して体を隠す。


「じゃあ、元に戻るぞ」


 俺は〈変身魔法〉を解除した。みるみるうちに視線が高くなる。


「おお、視線が高い。何しろ五十センチも身長が違ったからな。こっちの体に慣れるのは大変そうだ」


 すると、ベルガ改めレイナが言った。


「私は一メートルも身長が違ったんだ。アレスより大変だぞ」


 たしかに、オーガからヒューマンへの変化では、感覚の違いも大きいだろう。そんな会話をレイナとしていると、なぜかカエデがこちらに背を向けている。


「あれ? カエデ、どうかしたのか?」


「どうもしてないわよ」


 そう言って振り返ったカエデは、第九階梯聖魔法〈年齢調整(エイジシフト)〉で、十八歳ほどの見た目に変わっていた。レイナが言う。


「カエデ! 自分だけ見た目を若返らせるとはどういうことだ! 私にも〈年齢調整(エイジシフト)〉をかけるのだ!」


 しかし、それを無視してカエデは俺に近づき、訊ねてきた。


「アレス、このダンジョンを出たら、私とレイナはどうなるの?」


「二人が希望すればエヴァルシアに連れて行くし、他に行きたい場所があれば、そこまで送るぞ」


 そう答えると、カエデはさらに近づいて訊ねる。


「エヴァルシアに行ったら、さっき助けてくれた女性たちがいるのよね?」


「ああ」


「私とレイナも、その仲間に入れる?」


「そうだな。希望すれば可能だが……どういう集まりなのか知ってからのほうがいいかもしれないぞ」


 すると、カエデはさらに距離を詰めてきた。もう至近距離だ。


「それは……夜を一緒に過ごす、ということかしら?」


 俺は一瞬言い淀んだが、正直に答えた。


「そうだ。だから無理しなくて――」


 そう言いかけた瞬間、カエデは俺にキスをしていた。


「今回のお礼をするわ。ベッドを出して」


「いやいや、そんなことしなくていい――」


 言い終える前に、さらにキスを重ねられる。


「私に恥をかかせたいの?」


 そこまで言われては断れない。俺は亜空間からベッドを取り出した。


「じゃあ、アレスは横になって。あとは私に任せて」


 カエデはそう言うと、俺と自分の布を外し、俺の上に乗ってきた。


 あっという間に始まったカエデの“お礼”に、レイナは何も言えず、顔を赤くして立ち尽くしていたが――


「私もお礼をする!」


 そう言って参戦し、結局、二人が満足するまでその“お礼”は終わらなかった。


 満足した二人はそのまま眠ってしまったので、俺は二人の体格に合う下着や服を準備する。装備は、ルビナが作って共有空間に入れていたものを、二人のサイズに調整して用意した。


 俺の装備は、ミノルに飛ばされた際、地下牢に置いたままだったが、リディアが共有空間に入れておいてくれたようだ。それを取り出し、身につける。


「おお……やはり着慣れた装備は安心感があるな」


 ほぼ二ヶ月ぶりの、元の姿と元の装備だ。懐かしさすら覚える。



 さて、ここはまだダンジョンコアルームだ。外の状況はまったくわからないが、まだ夕方にはなっていないだろう。カエデとレイナは気持ちよさそうに眠っているので、もう少し寝かせておこう。


「あ、そういえば、ここのダンジョンは書き換えられたりするのか?」


 気になった俺は、ダンジョンコアに直接触れてみた。すると――


「階層を持つダンジョンには変えられないのか」


 魔物エリアの種類、出現する魔物の所有スキルレベル、ダンジョン内で制限されるスキルや魔法、クリア条件などは変更できるようだ。


「オーブ一個でもクリア条件にできるのか。ただ――」


 そこには、エヴァルシアにあった『アンデッド迷宮』のダンジョンコアにはなかった記載があった。


『このダンジョンコアを持って脱出すれば、別の場所にこのダンジョンを移動できる』


 ふむ。しかし、持って出た場合、中にいた人はどうなるんだ?


 そう考えた時、いつもの機械的な声が頭の中に響いた。


『安全に地上へ転送されます』


 お!? もしかして、ダンジョンコアと会話できるのか?


 すると、再び機械的な声が響いた。


『あらかじめ決められた質問に対する答えのみ回答できます』


 なるほど、会話ではなく、準備された回答しか返せないということか。俺はさらに尋ねてみた。


「ダンジョンは何のためにあるんだ?」


『お答えできません』


 ふむ。回答が準備されていないらしい。


「ダンジョンは誰が作ったんだ?」


『お答えできません』


 まあ、そうだろうな。


「ダンジョンコアを持って外に出た場合、置いた場所がそのままダンジョンになるのか?」


『いいえ。ダンジョンコアを設置したのち、魔力を込めながら「ダンジョン設置」と発声する必要があります』


「ダンジョンを設置する前に、設定を決めておくことは可能か?」


『可能です。ダンジョンコアに触れて設定できます』


 ダンジョンコア……持って帰ったほうがいいのだろうか?


「あ、今なら〈念話〉も使えるんじゃないか」


 俺はセレナに〈念話〉を送った。


『よう、セレナ。〈念話〉は久しぶりだな』


『な!? アレス、今どこにいるのよ! リディアたちが帰ってきてから、もう五時間は経っているわよ!』


 あ、そんなに経っていたのか。カエデとレイナと、少し頑張り過ぎたかもしれない。


『あー、実はまだダンジョンコアルームの中なんだ。それで、ちょっと相談があってな』


 俺は、『八王の大迷宮』のダンジョンコアが持ち帰れること、それを設置すれば同じダンジョンを別の場所に作れることを説明した。すると、セレナは少し考え込んだ。


『うーん、難しいところね。たとえ出現する魔物や強さを変えても、ダンジョンの単層無限(モノ・インフィニティ)の構造はそのままだから、元が『八王の大迷宮』だとすぐにバレてしまうわ。例えばエヴァルシアのどこかに設置したら、アストラニア王国の誰かが、そこからダンジョンコアを移動したと気づくかもしれない。今回、アレスの名前は石板に書かれていたのでしょう? アストラニア王国のアレスで、すぐにあなたへ辿り着く可能性が高いわ』


『確かに、簡単に繋がるな。だがそれは、「ダンジョンコアを移動できる」という仕様を知っていれば、の話だ。普通は知らないはずだ。通常のダンジョンにはない仕様だからな』


 すると、セレナは再び考え込んだ。


『そうね……持ち帰っても、すぐに設置しないという選択もあるわね。ダンジョンコアに聞いてみたいこともあるし。……分かったわ、持って帰りましょう。今、カメラでダンジョンコアを映せる? リディアに渡していたモニターでいいわ』


 どうやら、近くにリディアもいるらしい。俺は、リディアに渡したモニターと対になるカメラを起動し、五メートル四方の巨大なダンジョンコアを映した。


『見えるか? 比較対象がないから分かりにくいかもしれないが、五メートル四方はあるぞ』


 そう〈念話〉で送ったが、返事がない。


『あれ? どうしたセレナ。映っていないか?』


 すると、セレナから返事があった。


『いえ、よく映っているわよ。比較対象になるベッドと、その上にいる二人の裸の女性も、はっきり映っているわ。リディアとイレーヌとエリュシアが一番怒っているわよ。帰ってきたら、自分でなんとかしなさいね。じゃあ、ダンジョンコアの件、よろしく』


 そう言って、セレナは〈念話〉を切った。


 しまった……何も考えずに撮影してしまった。


 あとは――帰ったあとの自分に任せよう。

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