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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第四章 モノ・インフィニティ編

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195 八王の大迷宮 最後の試練(3) 覚醒

「アタシが! この命にかえても守ってみせる!」


 エリュシアはそう叫ぶと、全力の〈飛翔(羽)〉でミノタウロスキングへと突っ込んだ。


「お前なんかに! アレスは殺させない!」


 大きな声をあげながら、ドラゴンの爪で連撃を仕掛けた。だが、その猛攻は軽々といなされ、逆にミノタウロスキングの力強い斧の連撃によって、防戦一方へと追い込まれていく。

 瞬く間に、エリュシアの身体は傷だらけとなり、鮮血に染まっていった。


「絶対に! 絶対に守る! アタシが! アタシが守るんだ!」


 そして――ミノタウロスキングとエリュシアが激突した、その瞬間。

 突然、エリュシアの全身が眩い光に包まれた。


「なんだ? 何が起こった?」


 俺の疑問に答えるように、機械的なアナウンスが響く。


『〈覚醒進化〉の条件を満たしました。エリュシアは『上位魔人』に進化しました』


 〈覚醒進化〉――それは、エリュシアがエヴァルシアの『アンデッド迷宮』を踏破した際に得た、特定の条件を満たすことで上位種族へと進化するスキルだ。

 その条件とは――『愛する者のために命をかけて守る覚悟』だろうか。

 しかも、それは並大抵の覚悟ではないはずだ。俺やリディア、イレーヌも同じスキルを持っているにもかかわらず、これまで誰一人として発動していなかったのだから。


 エリュシアを包んでいた光が収まる。

 次の瞬間――エリュシアの爪が振り抜かれ、ミノタウロスキングの首が地面へと転がり落ちていた。


 そして――エリュシアの首にあった黒いチョーカーが、弾けるようにちぎれ飛ぶ。


(どういうことだ? 進化したのはわかる。だが、スキルレベルは変わらないはずじゃないのか? なぜ、急にここまで強く――〈鑑定〉)


 〈鑑定〉すると、〈覚醒進化〉だったスキルは〈覚醒進化済・強化〉という名称へと変わっていた。


 〈覚醒進化済・強化〉――全スキルのスキルレベルを+2する。


 なんだ、この異常なスキルは。

 エリュシアのすべてのスキルがレベル10以上、一部は11にまで達したことになる。


 そして――〈覚醒進化〉したことで、エリュシアの従魔契約は解消されていた。


(エリュシアの主人はリディアに書き換えられていたはずだが……従魔契約は、基本的に主人より上位の種族には成立しない。『上位魔人』はヒューマンよりも上位種族だから、従魔契約そのものが無効化されたのか)


 ミノタウロスキングを倒したエリュシアは、間髪入れずにオークキングへと迫る。

 圧倒的な速度で間合いを詰め、ドラゴンの爪でその首を刎ね飛ばした。


「あと三体」


 残るは、ラグナとベルガが相手をしているはずの――巨人の王オーガキング、悪魔の王バルログ、アンデッドの王ドラゴンゾンビ。

 俺がそちらへ視線を向けると――


 そこには、全身をミスリルのフルプレートアーマーで固め、ランスとタワーシールドを構える銀髪の女性――リディア。

 そして、黒い革鎧に身を包み、ミスリルのショートソードを両手に舞うように戦う女性――イレーヌの姿があった。


「二人も来ていたのか!」


 ラグナとベルガの傷は、どうやらリディアが回復してくれているようだ。

 リディアとベルガが敵の攻撃を防ぎ、イレーヌとラグナが隙を突いて攻撃する。


 しかし――四人の中で、イレーヌだけがレベル10のスキルを一つも持っていない。

 他の三人が互角の戦いを繰り広げている中、イレーヌだけが明らかに押されていた。


 そして――俺が見た瞬間。


 バルログの鞭がイレーヌの左腕に絡みつき、その身体を強引に引き寄せていた。

 すでにバルログは、もう片方の手に持つ剣を振り下ろす構えを取っている。


「まずい!」


 俺は〈飛翔〉で救援に向かおうとした。

 だが――エリュシアに制止される。


「なぜだ!? エリュシア!」


「アレス、見てて。アタシにはわかる。イレーヌは負けない」


 何を根拠に――。

 だが、覚醒したエリュシアには、イレーヌの中で何かが変わり始めているのが感じ取れているようだった。


 イレーヌが叫んだ。


「何が〈覚醒進化〉よ! エリュシアが一番アレスを想ってるみたいじゃない! アタシはね! アタシは、アレスの最初の女なのよ! この想いが! エリュシアに負けているはずないのよ!」


 その瞬間――イレーヌの全身が眩い光に包まれた。


「これって……」


 直後、機械的なアナウンスが響く。


『〈覚醒進化〉の条件を満たしました。イレーヌは『ハイヒューマン』に進化しました』


 光が収まる。

 次の瞬間――イレーヌは、バルログと互角以上の戦闘を繰り広げていた。


「ぬるいわね」


 バルログの剣をあしらうように受け流す。

 そして、そのまま右腕を斬り落とすと、流れるような動きで首を刈り取った。


 一方――リディア、ベルガ、ラグナの三人は、ドラゴンゾンビの〈闇のブレス〉に苦戦していた。

 このドラゴンゾンビはアンデッドでありながら〈超再生(魔)〉を持ち、体内の魔石を破壊しない限り倒せない厄介な敵だ。


 さらに、オーガキングの膂力も異常だった。

 盾越しであっても、まともに攻撃を受ければ、オーガのメスであるベルガですら吹き飛ばされてしまう。


 それでも――リディアは誰よりも前に立つ。

 〈闇のブレス〉をタワーシールドで防ぎながら、一歩、また一歩と前へ進んでいく。


「エリュシアどころか、イレーヌまで〈覚醒進化〉とは……認めぬ。私のアレスさまへの想いより、二人のほうが強いなどあり得ない。私が一番なのだ。誰よりも――誰よりも! 私が、アレスさまを愛している!」


 その瞬間――リディアの全身が、眩い光に包まれた。

 ドラゴンゾンビの〈闇のブレス〉が、その光にかき消される。


 そして、機械的なアナウンスが響いた。


『〈覚醒進化〉の条件を満たしました。リディアは『ハイヒューマン』に進化しました』


 光が収まると、リディアの手にはランスでもタワーシールドでもなく――ミスリルの槍斧(ハルバード)が握られていた。


「ふん。やはり私の想いが一番だ」


 凄まじい一撃がオーガキングを襲う。

 とっさに盾で防御したオーガキングだったが、その巨体ごと吹き飛ばされた。


 続けて、ドラゴンゾンビへと槍斧(ハルバード)を叩きつける。

 骨を砕き、再生を上回る速度で連撃を叩き込み――ついに体内の魔石を破壊した。


「アレスさま。最後の一体です。どうぞお倒しください」


 リディアがそう言って譲ってくれた。


 俺は“レッドキャップ”へと変身し、地面に落ちていたミスリルのショートソードを拾い上げる。

 そして――オーガキングの前で構えた。


「散々吹き飛ばしてくれたな。百倍にして返してやる。ラグナ、ベルガ。最後の一体だ。最後は三人で倒そう」


「わかったわ」

「承知した」


 ベルガが前衛に立つ。

 俺とラグナは、その後ろで横に並んだ。


「〈挑発〉!」


 ベルガの叫びが戦場に響く。


 俺は右へ、ラグナは左へ回り込む。

 オーガキングの剣を、ベルガがタワーシールドで受け流し――わずかに体勢を崩させた。


 その瞬間。

 俺はオーガキングのタワーシールドに触れる。


「〈共鳴崩壊(レゾナンスクラッシュ)〉」


 盾越しのため致命傷には至らない。

 だが――動きは止まる。


 タワーシールドが崩壊し、ボロボロと砕け散る。

 その中で、オーガキングの動きが完全に止まった。


「せいっ!」


 ラグナの斬撃が閃く。

 オーガキングの右腕が、肘から切り落とされた。


 すでにベルガは――バトルメイスを上段に構えている。


「トドメだ」


 次の瞬間。


 ベルガのバトルメイスが――オーガキングの頭部を粉砕した。

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