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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第四章 モノ・インフィニティ編

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192 解放の朝と石板の試練

 拠点の集落に戻ると、俺は屋敷に入り、メスのゴブリンの姿で主寝室にいるクラウディアと話をした。


「クラウディア、明日の朝に解放する。朝になったら自分の装備へ着替えておいてくれ」


 そう言って、俺はクラウディアが装備していた鎧を取り出した。


「私の武器は?」


「武器は解放した場所で渡す」


「わかった。では、これを私を手込めにした男に渡してくれ」


 クラウディアが差し出したのは手紙だった。自分のアイテムボックスの中に、封筒や便箋、ペンを持っていたのだろう。


「わかった。渡しておく。代わりに、これを預けておく」


 俺は、自分の亜空間とつながったマジックバッグをクラウディアに渡した。


「今日と明日の食事が入っている。それと、その男から返事がある場合は、このバッグの中に手紙が入るはずだ」


 俺がそう言うと、クラウディアは大事そうにそれを抱えたあと、自分のアイテムボックスにマジックバッグを収納した。


「じゃあ、クラウディア、明日の朝まで会うことはない。大人しくしておけよ」


「ああ、わかった」


 そうしてクラウディアと別れたあと、牢にいる騎士団の男性六人にも、明日の朝に解放することを伝えた。さらに、今日と明日の六人分の食事が入ったマジックバッグを渡してから、俺は屋敷を出た。



 ラグナとベルガのいる家に入ると、リビングに二人がいたので、指輪を渡した。


「この指輪は、明日、石板のエリアに入るために必要なものだ。つけておいてくれ」


 二人の指のサイズに合わせて作ってあるので、ぴったりのはずだ。二人が指輪をつけたあと、ラグナが言った。


「石板のエリアはどうなったの?」


「ああ、テントが三十張以上あったから、全部階段エリアへ運び、そこに閉じ込めてきた。今、石板の周辺は、この指輪をつけていないと入れないようにしてある」


 続いてベルガが尋ねてきた。


「巨人エリアにいた冒険者たちは?」


「そちらは、それ以上先へ進めないように魔法で壁を作ってきた。まあ、それがなくても、明日の朝までにここへは来られなかっただろうがな」


 その後は、明日に備えてのんびりと過ごした。念のため、全員の武具を新品同様に修理しておいた。



 その日の夜の定期連絡で、レオニアがドラゴンとともに無事エヴァルシアへ辿り着いたことを聞いた。さらに、二頭のドラゴンの主人を書き換え、透明化してエヴァルシアへ連れ帰ったのだという。そのうちの一頭は、ミリアのドラゴンになったらしい。


「もう一頭は?」


 俺がそう尋ねると、セレナが答えた。


『ヒカルが乗るそうよ。二人でドラゴンに乗って、領都ヴァルグラントへ通うんですって』


 そういえば二人は、領都ヴァルグラントで剣術指南と騎士団の教育をしていたのだった。


 俺からは、明日、石板にすべてのオーブを嵌めることを伝えた。すると、リディアがモニター越しに言った。


『アレスさま。よろしければ、その状況をカメラで撮影できませんか? こちらでも状況を把握しておきたいのです』


「ああ、それは構わないが……モニターは一つでいいのか?」


『はい、一つで構いません』


 それなら、拠点の監視に使っていたカメラで撮影し、それ用のモニターをリディアに渡せばいい。


「リディア、今、共有空間にモニターを置いた。取り出してみてくれ」


 リディアがモニターを取り出して起動したのを確認し、こちらもカメラを起動する。


「よし、大丈夫そうだな。明日、そのモニターに状況を映す」


『承知しました、アレスさま』


 それから、《万紫千紅》の他のメンバーとも他愛ない会話を交わしたあと、明日に備えて早めに就寝した。


 ◇


 翌朝。


 俺はクラウディアたちがいる屋敷へ向かい、主寝室のクラウディアの部屋に入った。


「おはよう、クラウディア。準備はできたか?」


「ああ。いつでも大丈夫だ」


「そうか。じゃあ、クラウディア、そこから動くな」


「え?」


 俺はクラウディアに直接触れ、〈熟睡(ディープスリープ)〉で眠らせた。そのまま〈念動(サイコキネシス)〉で浮かせ、部屋の外へ運ぶ。


 一階の牢でも同じように、騎士団の六人を〈熟睡(ディープスリープ)〉で眠らせ、〈念動(サイコキネシス)〉で浮かせて運んだ。計七人を屋敷の外へ運び終えると、今まで使っていた屋敷を亜空間へ収納する。


 家の外で待っていたラグナとベルガが近づいてきた。ラグナが俺に尋ねる。


「その七人は、階段エリアに置くって言ってたわよね?」


「ああ、このまま運ぶ」


 俺は家や、この集落を囲んでいた城壁などもすべて亜空間に取り込み、この集落を何もない状態にした。


「よし、石板のところに行くぞ」


「わかったわ」

「承知した」


 ◇


 三十分ほどで、石板のあるダンジョン中央へ到着した。


 俺とラグナ、ベルガ、そして騎士団の七人は透明化している。


 石板の近くまで来ると、階段エリアからこちらへ来ようと足掻いている冒険者が何人かいた。


(あの実力では無理だろうな)


 俺はそれを無視し、クラウディアを含む騎士団員を一人ずつ奴隷から解放し、スキルの封印を解除した。続けて〈覚醒(アウェイク)〉をかけて目を覚まさせると同時に透明化を解き、階段エリアへ置いていく。

 それを繰り返し、最後にクラウディアを階段エリアへ置いたあと、七人が使っていた武器もクラウディアのそばに置いた。

 突然現れた騎士団に、冒険者たちは驚いていた。


 それから、リディアに渡したモニターと対になるカメラを起動し、俺の斜め後ろから撮影するよう〈念動(サイコキネシス)〉で浮かせた。


「さて、オーブを嵌めるか」


 石板の前に俺とラグナとベルガが並び、オーブを嵌めていく。


「アレス、これ、どこ?」


「それは右上のオークの穴だ」


 そんな会話を交わしながら、三人ですべてのオーブを嵌め終えたとき、ダンジョンに変化が起きた。


 機械的なアナウンスが、ダンジョン全体に響き渡る。


『すべてのオーブがセットされたことを確認しました。最後の試練に挑んでください』


 すると、石板の前方に五百メートル四方ほどの巨大な透明の膜が出現した。同時に、俺が石板の周囲に張っていた〈空架障壁(スペースシールド)〉は吹き飛ばされ、階段エリアの周囲に張った障壁だけが残った。


「この中に入れってことか」


 俺たち三人は、その透明な膜の中へ入った。


 すると――黒い影とともに、何かが現れる。


「うわぁ、これ全部倒すのかよ……」


 そこに現れたのは、このダンジョンの各エリアの王だった魔物たち――計八体だった。

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