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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第四章 モノ・インフィニティ編

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191 集まる冒険者たちと巨人の王

 昨日と同じく階段エリアへ向かった。今日はレオニアだけを地上へ送る。レオニアの奴隷状態を解放して送り出したあと、近くに気になるものを見つけた。ラグナも同じことに気づいたらしく、俺に尋ねてくる。


「アレス、あのテントは何なのかしら?」


 昨日はなかったはずだが、今朝から石板の前には五つのテントが張られていた。さらに朝からダンジョンにやって来た新たな冒険者たちが、もう一つテントを建て始めていた。俺はラグナとベルガに言った。


「おそらくなんだが……すべてのオーブを集めたパーティは、必ずこの石板の前に来るだろう? そこを襲ってオーブを奪うつもりなんじゃないか」


 ラグナとベルガは、それを聞いて呆れたように顔を見合わせる。


「たしかに、その可能性が高いわね」

「いや、そうとしか見えない」


「オーブを持ってここに来るときは、要注意だな」


 俺たちはその場を離れ、巨人の王がいる巨人エリアの最奥を目指した。


 ◇


 三十分ほどで巨人エリアの最奥――オーガキングのいる場所に到着した。以前にも確認しているが、ここは屋外のエリアだ。


「屋外に玉座があるのも、なんだか変な感じだな」


「そうね。しかも周りは森や山だらけだし」

「どちらにしろ、倒せばいい」


 俺たちは気負うことなく、巨人の王のエリアへ足を踏み入れた。


「全滅バッチ起動」


 今日の戦闘はここだけの予定だ。魔力を温存する必要はない。徹底的に攻撃を撃ち込んだ結果、百二十体いた魔物のうち、生き残ったのはトロール十体とオーガキングだけになった。


「まずはトロールを殲滅するぞ」


「わかったわ」

「承知した」


 俺とラグナはトロールを再生不可能なほど切り刻み、ベルガはバトルメイスの一振りで粉砕していく。


「よし、あとはオーガキングだけだ。あいつ、まさかの《魔法殺し(スペルキラー)》の称号持ちだ。魔法が効かない。近接戦闘で倒すぞ」


「わかったわ」

「承知した」


 玉座の前まで駆けた俺たちは、前にベルガ、後ろに俺とラグナが並ぶ隊形でオーガキングと対峙する。

 玉座から立ち上がったオーガキングは、他のオーガよりも二回りほど大きかった。片手で軽々と大剣を操り、もう一方の手には巨大なタワーシールドを構えている。その盾は巨体をすべて隠せるほどの大きさだが、それをまるで軽いもののように素早く動かせるだけの膂力を持っていた。


「〈挑発〉!」


 ベルガが〈挑発〉を発動し、オーガキングの攻撃を自分に引きつける。

 しかし、軽く振られたように見えた一撃を受け止めた瞬間、ベルガは後方へ吹き飛ばされた。


「なんて力だ。大丈夫か、ベルガ?」


「ああ、問題ない。まともに受けてはいけないようだ」


 俺たちは態勢を立て直し、再びオーガキングと対峙する。全身鎧に覆われているため、有効な攻撃箇所は限られている。


「俺に少し試させてくれ」


 俺はベルガの前に出ると、


「双星斬」


 両手の剣から二つの斬撃を放つ。同時に距離を詰め、オーガキングのタワーシールドに触れた。


「〈共鳴崩壊(レゾナンスクラッシュ)〉」


 盾越しの振動では致命打にはならないが、一瞬だけ動きを止めることができる。オークキングを倒したときと同じ手法だ。

 動きが止まったのを確認し、俺は跳躍して首を刈ろうとした――その瞬間。


 オーガキングの大剣が、横薙ぎに俺へ迫ってきた。


 咄嗟に二本の剣で受け止めたが、空中にいたため踏ん張りが利かず、遠くまで吹き飛ばされる。岩山に激突する直前、〈飛翔〉で軌道を変えて回避した。


「アレス、大丈夫!?」


 ラグナの声に、俺は応じる。


「ああ、問題ない。さすがにオークキングと同じ手法では倒せなかったようだ」


 まさか、あれほど早く動きを取り戻すとは。

 だが、先ほどの〈共鳴崩壊(レゾナンスクラッシュ)〉によって、オーガキングのタワーシールドと左腕の鎧は砕け散っていた。左腕は、すでに使い物にならないようだ。


「ふっ!」


 気合とともに、ベルガがバトルメイスを叩きつける。盾を失ったオーガキングは、回避するか剣で受けるしかない。しかし鋭い連撃を避けきれず、防御に専念するしかなかった。

 その隙を突いて、ラグナが鎧の関節部分を正確に斬り裂いていく。


 やがて動きが鈍くなったオーガキングの前へ、俺は踏み込んだ。そして、その腹に両手を当てる。


「〈共鳴崩壊(レゾナンスクラッシュ)〉」


 至近距離で放たれた振動は、オーガキングの内部を直接破壊する。内臓を粉砕され、巨体は力を失った。


「収納」


 俺はオーガキングの死体を亜空間に収め、玉座へと視線を向ける。


「最後の一つだ」


 こうして俺たちは、巨人のオーブを手に入れた。


 ◇


 最後のオーブを手に入れた俺たちは、一つ手前――拠点としているエリアへ戻った。

 俺はオーブを収納している建物に入り、すべてのオーブをそこに置く。そして外へ出ると、その建物全体を〈空架障壁(スペースシールド)〉で厳重に包み込んだ。


 それを見ていたラグナが、不思議そうに尋ねる。


「アレス、石板にオーブを嵌めるのは明日だったわよね? もう建物から出しておいてもいいんじゃない?」


「ああ、明日嵌めるのは間違いない。ただ、今から石板のところを掃除しておこうと思ってな。オーブを持っていると、その魔力が大きすぎて、透明化して気配を遮断しても位置を特定される可能性がある。だから、オーブを持っていない状態で片付けてくる」


 するとラグナとベルガが口を開いた。


「手伝うわよ」

「私もだ」


「ああ、大丈夫だ。倒しに行くわけじゃない。一人でもすぐ終わる。二人は家で休んでいてくれ」


 俺は二人を残し、中央の階段エリアに隣接する石板のもとへ飛んだ。


 ◇


 三十分ほどで石板のエリアに到着する。そこには、すでに三十張を超えるテントが並んでいた。


(横取りを狙う連中が、こんなにいるのか……)


 俺はまず、階段エリアを〈空架障壁(スペースシールド)〉で完全に囲った。この障壁は、こちら側からは通過できるが、階段エリア側からは侵入できないよう設定してある。

 ただし、非常時に備え、エヴァルシアで配布している指輪を装備していれば通行できるようにしてある。


 続いて、石板前に設営されていたテントを中にいる冒険者ごと〈念動(サイコキネシス)〉でまとめて移動させ、階段エリア側へと移した。突然の浮遊と移動に、冒険者たちの悲鳴と怒号が響いたが、構わず移動させた。

 さらに石板のある一帯を、十分な余裕を持たせて〈空架障壁(スペースシールド)〉で囲う。こちらは、指輪を装備していなければ出入りできない完全な封鎖だ。明日、ラグナとベルガには指輪を渡しておくつもりだ。


「あとは、すでに巨人エリアにいる冒険者たちか」


 オーガキングを倒したので、彼らは危険なく移動できるようになっている。

 もっとも、拠点の集落までは馬車でも十日近くかかる距離だ。飛行手段でも持っていない限り、今日明日中に到着することはないだろう。


 仮に辿り着いたとしても、拠点は〈空架障壁(スペースシールド)〉で完全に守られている。どうすることもできないはずだ。

 それでも念のため、彼らの進路上にも〈空架障壁(スペースシールド)〉を設置し、それ以上先へ進めないようにしておいた。

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