189 支配の刻印と屈しない誇り
――十分後。
クラウディアを奴隷化することに成功した。
〈服従契約〉も〈隷属刻印〉も施した、完全な奴隷である。
俺はクラウディアに命じた。
「ミノタウロスのオーブを外に出せ」
ところが――
「ぐあぁぁぁっ!」
クラウディアは、主人である俺の命に逆らった代償として襲いかかる激痛に耐え、オーブを渡さなかった。
「嘘だろ……ここまでできる人は初めて見たぞ」
しばらくして激痛が収まると、クラウディアは荒い息を繰り返しながら言った。
「私は決して屈したりしない」
俺は、これは時間がかかりそうだと頭を抱えた。
ただ、これでここにいる全員が俺の奴隷になった以上、巨人エリアへ移動すること自体は可能だ。
俺は一度屋敷を出て、ラグナとベルガがいる家に入ると、これから巨人エリアへ移動することを伝えた。
家も屋敷も俺一人で運べるため、ラグナとベルガにはそのまま家の中にいてもらう。
俺は家と屋敷を〈念動〉で浮かばせ、巨人エリア最奥の集落へ向けて飛んだ。
◇
一時間ほどで、巨人エリアの王の手前――俺が城壁で囲んでいる集落に到着した。
浮かせていた屋敷と家を設置したあと、ひとまず悪魔のオーブを、保管している建物へ収納する。
「あとはクラウディアからミノタウロスのオーブを貰って、巨人の王を倒すだけだな」
――そのクラウディアからオーブを貰うのが、一番大変なのだが。
ただ、奴隷化の際に気づいたことがある。
クラウディアはイレーヌ並みに弱い。そして、同じように弱かった人物をもう一人知っている。
戦乙女騎士団の副団長エリスだ。彼女は痛みを伴う拷問には耐えられたが、性的な拷問には三日と耐えられなかった。
そのことを考えれば、クラウディアにも同じ方法が有効なはずだ。
「あまり気が進まないが、殺さずにオーブを手に入れるなら、これしかないか」
――むしろ、ひと思いに殺すほうが彼女のためなのだろうか。
一瞬そんな考えがよぎったが、やはり生きていてこそだと俺は思う。
だから、この方法でやることにした。
軽く昼食をとったあと、俺は再び屋敷の主寝室へ向かった。
気配で俺の接近を察したクラウディアが口を開く。
「何度命じても同じことだ。私は絶対にオーブを渡さない」
――まあ、そうだろう。
俺は事前に警告しておくことにした。
「クラウディア。奴隷化したときに、お前の弱点はわかった。これから食事と俺の用事以外の時間は、すべてお前への性的な拷問に充てる」
「な!?」
おそらく、クラウディア自身も自覚している弱点なのだろう。
彼女の持つ称号《無欲の剣》を最初に奪取すれば楽ではある。
だが、俺はそれをするつもりはなかった。この称号は、《勇者》と《魔法殺し》を持つ俺には無意味であること、そして〈強制終了〉を使わないほうが、より拷問として効果的だからだ。
それに、《無欲の剣》では防げないものがある。
――スキル複製時の快楽倍率だ。
これは〈催淫〉のような状態異常でも、魔法でもない。《無欲の剣》では防げないはずだ。
「ではまず、〈絶倫〉の複製で快楽倍率二倍から。ギブアップのときは、オーブを出すように」
レベル2を二回複製して〈絶倫〉をレベル3にする。
次に、快楽倍率八倍のレベル3を二回複製し、レベル4へ上げる。
さらに、快楽倍率十二倍のレベル4を三回複製してレベル5へ――と、段階的に倍率を上げていく。
レベル7の複製でレベル8まで到達したら、今度は別のスキルを最初からレベル7複製で進める。
〈脳状態復元〉を使えばレベル8複製も可能だが、記憶を消してしまうため拷問の意味がなくなる。
――レベル7までで、クラウディアを落とす。
エリスが受けた拷問では、倍率を上げたりしていなかったはずだ。
ならば、クラウディアはエリスよりも早く落ちる可能性が高い。
三日もかからないだろう――そう思っていたが。
クラウディアはイレーヌやエリス並みに弱い。
〈強制終了〉を使わなくても、休憩を挟みつつ一時間で十回以上の複製が可能だった。
〈絶倫〉をレベル8まで複製しても、クラウディアは耐えた。
続いて〈美容〉をレベル8まで複製――それでも耐えた。
さらに〈料理〉をレベル8にした、そのとき――
クラウディアの傍らに、ミノタウロスのオーブが現れた。
一瞬、殺してしまったのかと焦る。
だが、どうやらクラウディアが無意識に取り出しただけらしい。
精神ではなく、肉体の限界により、奴隷契約が自動実行したのだろう。
――半日もかからずに終わった。
俺はミノタウロスのオーブを亜空間に収納し、クラウディアに〈洗浄〉をかける。
そして直接触れ、〈熟睡〉で深い眠りに落とした。
「さて……クラウディアを含めて、騎士団の連中はどう扱うべきか」
今解放すれば、面倒なことになるのは目に見えている。
解放するなら、ダンジョンをクリアする直前だろう。
ひとまず〈多重禁能呪〉でクラウディアのスキルをすべて封印し、視界を遮っていた〈空間規制〉と拘束していた〈部分収納〉を解除する。
「武具は没収だな」
クラウディアの鎧と剣を没収し、身に着けていた下着は新品に修復した。
そして、サイズが合いそうなターリア製の服と靴を、ベッド脇に揃えて置いておく。
念のため、この部屋だけを〈空架障壁〉で囲い、クラウディアが主寝室から出られないようにしておく。
主人の命に対し、激痛を伴いながらも逆らえる人物だ。ここまで無力化しても、警戒は必要だろう。
ただ、これだと可哀想なので、主寝室内にトイレの部屋を増設しておいた。
ちょうど夕食の時間だったため、屋敷を出てラグナとベルガのいる家へ向かう。
二人に、無事ミノタウロスのオーブを手に入れたことを報告した。
ラグナが言う。
「じゃあ、明日巨人の王のオーブを手に入れたら、このダンジョンもクリアなのね!」
それに対し、俺は答えた。
「いや、石板にオーブを嵌めたあと、何が起きるかわからない。だから断言はできない。それと、このあとのケンイチの奴隷だった女性たちとの話し合いや、定期連絡の内容次第では、巨人の王への挑戦は数日遅れるかもしれない」
今回は単に奴隷を地上へ送り出すだけではない。
騎士団の扱い、そしてレオニアのドラゴンの問題もある。
一日で終わるとは思えなかった。
夕食を終えたあと、定期連絡の際にまた来ると二人に伝え、俺は屋敷へ戻った。




