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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第四章 モノ・インフィニティ編

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186 オークの王と迷宮の異変

 大きな魔力を放つ部屋へ真っ直ぐ向かい、城の最奥に辿り着くと、ひときわ大きく重厚な扉が立ちはだかっていた。


「この扉の先がボスのようだ。気を抜くなよ」


 そう言いながら、俺は目の前の重厚な扉に手をかけ、ゆっくりと押し開いた。


 そこは玉座の間だった。

 広大な空間だが、そこにいたのは玉座にぽつんと座るオークキング一匹だけだった。本来なら玉座の前には多くの部下が跪いていたのだろう。しかし、俺の“全滅バッチ”によって、そのすべてはすでに消えている。


「やはりオークキングは一際大きいな」


 これまで見てきたどのオークよりも巨大な体躯をしている。オークキングはラージシールドと大剣を手にし、ゆっくりと立ち上がった。

 俺は“レッドキャップ”の姿になり、ミスリルのショートソードを両手に構える。


「戦闘開始だ」


 ベルガを先頭に、俺とラグナが後ろから駆け出す。

 すると、オークキングの初手は〈誘引〉だった。ピンク色の煙がその体から噴き出し、瞬く間に部屋中へと広がる。


「それは対策済みだ」


 俺たちは止まることなく、そのまま距離を詰める。

 だが――次の瞬間、オークキングは紫色の煙を噴き出した。


「な!? 紫!?」


 先頭のベルガと、俺の横を走っていたラグナが同時に足を止める。


 くそっ……何かをかけられた。

 俺にだけ通じなかった理由は分からないが、まずはオークキングを倒すのが先だ。


「双星斬!」


 至近距離から斬撃を叩き込む。

 しかしオークキングは、それをラージシールドで受け止めた。


 だが、その瞬間が隙になる。

 俺はラージシールドに手を触れた。


「第八階梯振動魔法〈共鳴崩壊(レゾナンスクラッシュ)〉」


 本来なら直接触れて発動すれば一撃で終わる魔法だ。

 だが、そこまでの隙はない。ならばシールド越しでも構わない。振動は対象へ確実に伝わる。


 オークキングの動きが止まる。


「終わりだ、オークキング」


 その一瞬の停止を見逃さず、俺はミスリルのショートソードを振り抜き、オークキングの首を刎ねた。


 オークキングの死体を亜空間へ格納し、すぐに〈鑑定〉で確認する。



 〈種の衝動インスティンクト・コール

 知性を持つ異性に対し、『種としての本能』を呼び覚ます。異性との性交で対象が満足するまで解消されない。



 新たなスキルを持っていたか。

 俺はこのような事態を警戒して〈呪魔法〉を入手していたというのに、肝心の〈鑑定〉を怠っていた。完全に俺のミスだ。


 しかもこのスキルは、元々誰もが持つ本能を呼び覚ますだけのもの。状態異常扱いですらないようだ。

 おそらく女性の場合、対抗手段は男性になることくらいしかない。


 玉座に置かれていたオークのオーブを亜空間へ収納し、ラグナとベルガの様子を見る。

 二人とも明らかに発情しており、自力ではどうにもならない状態だった。


「仕方ない。治療しよう」


 俺は二人に〈強制終了フォースドターミネーション〉を使用する。

 〈種の衝動インスティンクト・コール〉の影響は〈誘引〉よりも強力で、完全に解除するまで五回ずつ〈強制終了フォースドターミネーション〉が必要だった。


 ***


 疲労で眠ってしまった二人を〈念動(サイコキネシス)〉で浮かせ、オークキングの城の一つ手前にある集落へ戻る。

 ここは俺が城壁で囲った集落だ。


「やはり消えるか」


 俺の従魔となっていたオークたちは、オークキングの死によってすべて消滅していた。


 俺は亜空間から、いつも使用している工房付きの家を取り出し、ラグナとベルガをそれぞれの部屋に寝かせる。

 その後、外へ出た。


 オーブを保管していた建物にオークのオーブを収め、その建物ごと亜空間へ収納する。

 続いて、この集落に設置していたオーク用の住居、冒険者を収容するための鉄格子、監視カメラ、そして城壁まですべて亜空間へ回収した。


 最後に、ラグナとベルガを寝かせた家を〈念動(サイコキネシス)〉で浮かせ、次の目的地――巨人エリア(オーガエリア)の王の手前にある集落へ向けて飛行する。


 移動中、オークエリアに要救助者がいる可能性も考えたが、今回は一人も確認できなかった。


 ◇


 一時間ほどで、巨人エリアの王の手前の集落へ到着した。


 家を設置し、オーブを収納した建物を亜空間から取り出して集落内に配置する。

 そして、その建物を〈空架障壁(スペースシールド)〉で厳重に保護した。


「よし、今日の用事はこれで終わりだ」


 そう呟き、家の中へ入る。



 リビングのソファに腰掛け、紅茶を飲みながら考える。


(残りは三つ。そのうち一つは王を倒すだけの巨人エリア。実質、残りは二つだな)


 残るのは、巨人、ミノタウロス、悪魔の各エリア。

 これまでのペースなら、一つのエリアを十日前後で攻略している。順調に進めば、あと二十日ほどで終わるだろう。


 次の攻略先を考えていると、ラグナとベルガが起きてきた。

 二人とも、わずかに頬が赤い。


「すまなかった。俺のミスだ。オークキングのスキルを〈鑑定〉していなかった」


 ラグナが首を横に振る。


「いいえ。私も〈鑑定〉を持っているのに、アレスに頼りすぎていたわ。次からは油断しない」


 ベルガも静かに頷く。


「五体満足で勝てている。問題ない」


 二人にも紅茶を淹れ、話を続けた。


「次はミノタウロスエリアを攻略しようと思うんだが、どう思う?」


 ラグナはあっさり答える。


「どちらでも構わないわ。どうせ全部倒すことになるんだし」


「それもそうだな。じゃあ、明日からはミノタウロスだ」


 予定を決めた俺たちは、その日はゆっくりと体を休めることにした。

 夕食を取り、定期連絡を終え、久しぶりに風呂へ入り、早めに就寝した。


 ◇


 翌朝。

 メスのゴブリン、“セインテス”の姿でミノタウロスエリアへ向かう途中、ダンジョン中心部の階段エリアに到着したときだった。


 残る二つのオーブの魔力に違和感を覚えた。


「二人とも、少し止まってくれ。オーブの位置がおかしい」


 本来ミノタウロス側にあったオーブが、悪魔側へ移動している。

 しかも、かなりの速度で悪魔エリアの奥へ向かっている。飛行しているのだろう。


 そして、悪魔側にあったオーブは、逆に階段エリアへわずかに近づいていた。


「もしかして……」


 俺は階段エリアの石板を確認する。


「やはりそうか。ミノタウロスエリアと悪魔エリアは、別のパーティがすでに王を倒したようだ」

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