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百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~  作者: 凪山キコ
第四章 モノ・インフィニティ編

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182 城壁の保管庫と侵入者の気配

 音速を超えない程度の速度で飛行したが、目的のオークエリアまでは一時間近くかかった。

 目的地は、オークエリアの中でもその一角だけが城壁で囲まれているため、遠目にもすぐに判別できる。

 城壁に囲まれた採取エリアへ着陸したが、以前と比べて特に変わった様子はない。ラグナが言った。


「ここのオークはアレスの従魔だったわね。私たちを見ても襲ってこないのね」


「ああ。俺と奴隷契約を結んでいる相手は襲わないように命令してあるからな」


 オーブを保管している建物に入り、今日入手した狼のオーブを収納する。続けて、建物全体を〈空架障壁(スペースシールド)〉で厳重に封鎖しておいた。


「さて、少しだけ休憩しようか」


 ちょうど昼前でもあったため、持ち歩いている工房付きの家を取り出して、中へ入る。


「少し早いが、昼食にするか?」


 俺がそう尋ねると、


「そうね。お願いするわ」

「よろしく頼む」


 と二人が答えたので、食事の準備を始めた。



 食後、二人に紅茶を出したところで、ラグナが口を開いた。


「アレスも気づいたかしら。途中に十五人のヒューマンの集団がいたわね。冒険者のようだったけど、一部に裸の女性がいたわ」


 それを聞いて、俺は驚いた。


「え!? あの速さでよく見えたな。俺は気配でしか把握していなかったぞ……」


 俺たちは音速に近い速度で飛行していたため、その場を通り過ぎたのはほんの一瞬だった。

 遠くからオークと戦闘している気配は察知していたので、ヒューマンがいること自体はわかっていた。しかし、ラグナはその一瞬で相手の様子まで視認していたらしい。さすがだ。


「アレス、あの冒険者たち、ここを目指しているんじゃないの?」


 おそらくその通りだろう。ここには四つのオーブが集まっている。魔力を感知できる者なら、存在に気づく可能性は高い。ラグナが続けて言う。


「オーブを置いておくなら、オークよりオーガかミノタウロスのところのほうがいいんじゃない?」


「そうだな。今残っている魔物の中では、オークが一番弱い」


 それに、オークは女性冒険者を捕らえて襲う習性がある。このまま放置すれば被害者が増える可能性もある。


「オーガのところへ保管場所を移すか。ただ、ここへ向かっている冒険者のことが少し気になる。俺が様子を見て、場合によっては対処してくる。今日は二人ともここで待機していてくれ」


 そう言うと、ラグナとベルガが反論した。


「なぜ? 三人でやったほうが早いじゃない」

「そうだ。私たちも手伝うぞ」


 俺は一瞬迷ったが、正直に話すことにした。


「実は……もし冒険者たちに対処することになった場合、何をするのかをあまり二人に見せたくないんだ……」


 すると二人は、少し呆れたような表情を浮かべて言った。


「そんなの今さらでしょ。アレスはこのダンジョンをクリアするためなら、何でもやるのよね? 私たちも同じよ。手伝うわ」

「そうだぞ、アレス。私だって綺麗ごとだけでここをクリアできるとは思っていない。気にする必要はない」


 そう言って、二人は俺の手を握ってくれた。


「……わかった。三人で行こう」


 俺たちは家を亜空間に収納し、三人で冒険者のいたオークエリアへ向けて飛行した。


 ◇


 透明化したまま、階段から十ヶ所目にあたる集落へ向かった。来るときに感じた気配が、そこにあったからだ。


 二十分ほどで到着すると、すでに戦闘は終わっており、オークは一匹も残っていなかった。


「なんであんなところで……」


 視線の先では、一人の男が無抵抗の裸の女性を襲っていた。

 その近くには、裸のまま倒れている女性が六人。そして、それらを囲むように、冒険者の装備を身につけた女性が七人立っている。


 しばらくして、その男は襲っていた女性の首に黒いチョーカーを装着した。


「あれは……相手の意思に関係なく奴隷にしているようだな」


 相手が性的に達したときに〈隷属魔法〉をかける裏技を使っているのだろう。

 するとラグナが低い声で言った。


「あの男はナオキ。私のあとに召喚された勇者よ」


 ラグナの話によれば、ゼフィランテス帝国ではおよそ五年ごとに勇者召喚が行われているという。

 そのため、現在、この帝国には、《勇者》の称号を持つ者が十人存在しているらしい。


「アイツは通称《奴隷勇者》と呼ばれているわ。強化した女性奴隷だけを戦わせて、自分では何もしないのよ」


 〈鑑定〉で確認すると、冒険者の装備をした女性たちは、いずれもレベル8のスキルを多数所持している。

 そしてナオキ自身もまた、同じくレベル8のスキルを大量に保有していた。


「パーティの最大人数は八人……ナオキ以外の七人が戦闘要員か。そして、あの裸の女性たちは、おそらくオークの集落に捕らえられていた冒険者だろう。奴隷にしているのは、後で使うためか」


 俺の言葉に、これまで黙っていたベルガが答えた。


「ナオキは奴隷を使い捨てにすることで有名だ。戦闘不能者が出たときの予備だろう」


 精神的に弱ったところを隷属させ、戦力として使い潰すつもりか。

 相変わらず、この帝国の人の扱いは酷い。


 だが――イレーヌとリディアが奴隷だった頃のことを思い出す。

 あのときの俺も、結果だけ見れば、似たような道を歩みかけていたのかもしれない。


 違うのは――俺が彼女たちを愛したことだ。

 使い捨てるつもりなど、一度もなかった。


 だが、この国に召喚され、この国の常識に染まれば――ナオキのようになるのも無理はないのかもしれない。


 ラグナが問いかけてきた。


「アレス、どうする? こいつらの強さなら、オーブのある集落まで辿り着けるんじゃない?」


 確かに、このパーティは通常のダンジョンなら十分に攻略可能な戦力だ。

 このダンジョンでも、ゴブリンやコボルトのエリアなら問題なく突破できただろう。

 オークエリアでも、無傷とはいかないまでも突破は可能なはずだ。


「……そうだな。こいつらは無力化する。その際――」


 俺は二人に作戦を伝えた。



 ナオキは、先ほど女性を奴隷にしたあと、休憩しているようだった。

 魔物からスキルを得られる俺と違い、〈絶倫〉のようなスキルは持っていないのだろう。


 俺たちは十分な距離まで接近したところで、同時に透明化を解除した。


 ナオキが狼狽する。


「な!? 魔物!? なぜオーク以外の魔物がこんなところにいるんだ!?」


 七人の女性冒険者が、ナオキを守るように前に出て、俺たちへ武器を向ける。


 だが、ナオキは俺の姿を見て、ニヤリと笑った。


「お前が噂のメスのゴブリンか。話には聞いていたが、確かに高く売れそうだ。後ろにいるのはワーウルフのメスとオーガのメスか。そいつらもなかなかいい値が付きそうだな」


 どうやら俺たちを生け捕りにするつもりらしい。

 ナオキは愉快そうに続けた。


「《勇者》の前に現れたのが運の尽きだ。人型の生物は《勇者》には勝てないんだよ! 第四階梯性魔法〈感度調整センシティビティコントロール〉一万倍! 第八階梯性魔法〈強制終了フォースドターミネーション〉!」

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