22目覚める
王邸は昼くらいから騒がしくなった。
王都から軍が到着し、ロドルをはじめ関係者を連行していった。遅れて調査団も到着し、関係ある書類や資料がごっそり持って行かれた。
シアの部屋にあった山のような資料と本も何人もの人間が出たり入ったりして持ち出されていった。
「はぁーすっきりしたなぁー!見て!これが俺の本来の部屋!」
「やはりターヴァ様の部屋と比べると若干ですが狭いですね」
ファタが水を差す。シアは上げかけた両手をだらんと下げる羽目になった。
「ふふふふ…残念。ファタ。この部屋から僕はお引越しする予定なんだよ。ロドルの部屋の方が広いのが分かったから、イリューに頼んでそこが僕の新しい部屋になるんだよー」
「調査の関係で一年は閉鎖するって、さっきイリュー様言ってましたよ」
「なんだよ!それ!」
シアの叫び声は隣の隣にあるターヴァの部屋にも響き渡った。
「ラナちゃんは大丈夫かなぁ。まだ意識戻らないの?」
「残念ですが、変わらずです」
ファタが無表情でさらりと答えたので、シアはげっそりした。
「マールがいなかったのも計画の内だったって?」
「はい。いない方が好都合だから、外に出したみたいです」
「じゃあ、本当に家族の誰かが倒れたわけじゃなかったんだ」
「そうみたいです」
「ま、マールがいたら毒入りの飲み物も、毒を出すお香もどっちも出すのは至難の業だっただろうからなぁ」
「邪魔だったってことですね」
「言い方ね、言い方。気をつけなよ、本当」
シアは今度は言わずにはいられなかった。
暗い。
黒い。
暗くて何も見えないはずなのに、黒い中に黒い渦がぐるぐると動いている。
じっと見ていると、目が回るみたいで気持ちが悪い。
気持ちが悪い。
吐き気がするのに、吐き出せない気持ち悪さがずっとある。
すっきりしたい。
水が、
水が飲みたい。
「み、ず」
「ラナ様!」
誰か、呼んでる。
マール?
マールは、たしか…
「ラナ様!」
瞼が重い。
目を開けるとマールの顔が、目の前にある。
なぜそんな心配そうな顔してるの。
「ど、うしたの。マール」
「ラナ様…!」
「お父さん、大丈夫、だった?」
「そんなこと、どうだっていいんです…!よかった…」
マールが泣いてる。
視線を少しだけ動かして、扉の方を見るとイリューが今にも泣きそうな顔で立っていた。
「ラナ様寝ちゃったんだって、仕方ないじゃん」
ターヴァが、落ち込んだシアの背中を力強く叩く。
「いった!痛いんだよ!やめろ!」
シアは怒りのままにターヴァの腕を叩いた。
「八つ当たりはよくないです」
「なんだよ!ファタだって楽しみにしてたくせに」
「応急処置をした手前、目覚めた姿を見て安心したかっただけです」
「素直じゃないなー!」
「騒々しい…しばらくは安静だって」
ラナが眠る部屋の右隣にある護専用室に、人が集まること自体珍しい。四人が集まると一段と賑やかになる。
「その間に夢見ちゃうこととかってあるのかなぁ。安静にしてたいのに安静にならない!みたいなことになったりするの?」
ターヴァが思いついたように話す。
「ないとは言えないと思うけど、夢見は夢の中でも夢によっては直接怪我をしたりすることもあるって聞いたから、見ないことを祈るしかないな…」
「イリューは?ずっとここにいたの?」
ターヴァに聞かれてイリューは頷く。
「今日は寝てください」
「そうだそうだ、お前はすぐ無理するからな。今日はちゃんと寝ろよ」
イリューは笑った。
目の前の三人も同じように寝てない。
同じだけ疲れていても、自分を気遣ってくれる仲間がいる。とても幸せなことだ。
「ありがとう」
「な、な、なんだよ!ずいぶん素直だな!」
「素直になれと言ったり、なったらなったで動揺したり、面倒だなぁ、シアは」
「どちらかにしてほしいです」
ターヴァが笑う。みんな笑顔だった。
そして、ラナが目覚めて、半月が経った。




