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桜花のゆめ  作者: さえ
19/24

19深夜

 「お香、焚いておきました」

 リズがラナの寝室から出てきて言った。

 「ありがとう!リズ。代わりにやってもらっちゃって」

 「私は、失礼させてもらいます。ファタ様、失礼します」

 リズは深々と礼をして、退室して行った。

 「私も戻る」

 「え!ファタ様、もう少し、もう少しだけアルマにお付き合いください」

 「アルマの少しは長い」

 「あと一杯!あと一杯でいいので!」

 「水、だけどね」

 お茶菓子も出しますから!と言ったアルマの言葉に、ファタの目が輝いた。


 寝室から大きな物音がした。

 続けて物が落ちる音と、窓枠を動かそうとしている音が聞こえて来る。

 アルマが何かを発する前に、ファタは寝室の扉を開ける。

 白く濁った色の煙が扉に張り付くように流れてきた。

 視界がぼやけていて見づらい。

 「窓はどこ」

 「こちらです!」

 追いかけてきたアルマが寝室へ入って来る。

 「煙、吸わないで」

 変な匂いがする。少し吸い込んだだけで頭が痛い。

 「ニア様!!?ファタ様!ニア様が倒れてます!!」

 「とにかく窓を開けなさい」

 ファタは煙を払い除けながらベッドへ向かう。

 死んだように顔色のないラナがいた。

 ファタはゾッとした。

 ラナの体を起こし、素早く彼女を背負った。ラナの足を引き摺りながら、主室へ向かう。

 「窓開けました!」

 「こちらの窓も全開にして」

 「はい!」

 ラナの呼吸と脈はかなり弱かった。

 手が痙攣している。

 足も。

 もしかして。

 煙だけではない?

 ファタはラナの体を起こして、テーブルに置いてある水をあるだけ飲ませる。

 「アルマ、水をたくさん。それから医師を呼んで」

 「はい!」

 今にも泣きそうな顔のアルマは必死でファタの指示に従った。

 

 「何が、あったんだ」

 それだけ言うのが精一杯だった。

 ベッドで青白い顔をして目を瞑るラナを見てられなかった。医師がラナの体を起こして薬を飲ませている。

 「有毒な煙の出るお香を焚いていました。就寝前に飲んだお酒には毒物が混入していたようです」

 「ラナの状態は?」

 「できる限りの応急処置はしました。煙はともかく、毒物を排出するのが難しいとのことです」

 「ニアは?」

 「もう一つの護専用室で休まれてます。ラナ様と同様大量の煙を吸われていましたが、毒物は摂取されていませんでした。回復に向かっているとのことです」

 なんでこんなことに。

 こんなことになるなら、ずっと近くについていればよかった。

 いつでも安全なところで笑っていてほしかったのに。

 まだ、何も伝えていないのに。

 イリューは目を瞑って手を額に当てる。

 なぜ近くにいなかったんだ。

 「誰がいても同じでした。むしろ誰かいただけましです」

 「たしかに、ファタがいて本当に良かったと思ってる。誰もいなかったらもっと最悪な事態になっていた」

 考えたくない。

 「ファタ様、シア様がお呼びです」

 アルマが呼びにきた。いつも元気いっぱいの彼女からは疲労感が漂っている。

 無理もない。

 「わかった、すぐ行きます。イリュー様はどうなさいますか」

 「ラナのそばにいたい」

 「そうですね、わかりました」

 ファタは一礼して、部屋から出た。


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