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桜花のゆめ  作者: さえ
17/24

17嘘、その後

 ラナの主室は、静かだった。

 リズもアルマも隣の部屋で仕事をしているし、マールは寝室を整えている。

 シアたちが王邸に戻ってからもう数刻は経っている。

 ラナのそばにいるニアはいつも通りずっと話さない。

 イリューは、話しかけてくれたな、とふと思い出す。

 でも、本来の護は話さないものなのかもしれない。彼は、本当の護ではなかったから。

 ラナは今日ずっとソファに座っている。

 「結局どうなったんですか?」

 マールが寝室から出てきた。手にはシーツとタオルを持っている。ベッドを整えてきてくれたのだろう。

 「読み方のこと?早急な対応が必要な案件だって、分析したらまず王都に報告して、ロドルの拘束も視野に動く、みたい」

 「もう、抜け殻ですね。大分ショックだったんですか」

 手にしていたものを大きな籠に入れると、マールはラナの隣に座った。

 「何が一番ショックだったんですか」

 何が一番?

 護じゃなかったこと?

 本当は第三王子だったこと?

 夢見としての自分を利用されていたこと?

 たくさん嘘をつかれてたこと?

 ちがうな…

 「多分、イリューが私のことをなんとも思ってなかったってことだと思う」

 「ラナ様は、イリュー様のこと好きだったんですね」

 きっと、最初に会った時から気になっていたんだろうなと思う。

 どこかで、気持ちが通じてるのかと、思っていた自分が恥ずかしい。

 「勘違いだったんだな、って思う」

 「勘違いだったんですかね、それだけ嘘ついてたくらいなんですから、なんとも思ってないって言うのも、嘘なんじゃないですか」

 「あれだけ嘘ついたあとだからこそ、嘘はつかないでしょ」

 「そうですかね、では、マールの視点を話してもいいですか?」

 マールがラナの方に体を向き直して、姿勢を正した。

 「少なくとも、イリュー様はラナ様を大切に思っていたと思います。ラナ様を見る目も、護る時の所作も、慈しみがありました。何も思ってないことはなかったと思いますよ」

 「ありがとう、マール」

 ラナはマールの肩に頭を乗せた。

 「でもね、悲しいし虚しいんだけど、涙は出ないんだよね…」

 「泣けたら楽になるんですけどねぇ。今夜はいつもよりお風呂長く入ってサッパリしましょう!」

 「いつも以上に入ったらふやけちゃうんじゃない?」

 たしかに、もともと長湯でしたね、とマールは声に出して笑った。

 ラナもつられて笑った。


 「失礼します」

 軽く扉をノックして、静かに入ってきたのはリズだった。

 「失礼します。マールさん、あのお呼び出しがかかっています。マールさんの家族のことで話があると…」

 リズの表情が硬い。

 「わかった。すぐ行きます。ラナ様すみません、ちょっと外しますね」

 マールの家族に何かあったのか。

 「何かあったらすぐおしえて」

 「はい。わかりました」

 マールはリズの元へ駆け寄る。二人の後ろ姿はどちらか一瞬わからないほど似ていた。

 何か、胸騒ぎがした。

 

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