17嘘、その後
ラナの主室は、静かだった。
リズもアルマも隣の部屋で仕事をしているし、マールは寝室を整えている。
シアたちが王邸に戻ってからもう数刻は経っている。
ラナのそばにいるニアはいつも通りずっと話さない。
イリューは、話しかけてくれたな、とふと思い出す。
でも、本来の護は話さないものなのかもしれない。彼は、本当の護ではなかったから。
ラナは今日ずっとソファに座っている。
「結局どうなったんですか?」
マールが寝室から出てきた。手にはシーツとタオルを持っている。ベッドを整えてきてくれたのだろう。
「読み方のこと?早急な対応が必要な案件だって、分析したらまず王都に報告して、ロドルの拘束も視野に動く、みたい」
「もう、抜け殻ですね。大分ショックだったんですか」
手にしていたものを大きな籠に入れると、マールはラナの隣に座った。
「何が一番ショックだったんですか」
何が一番?
護じゃなかったこと?
本当は第三王子だったこと?
夢見としての自分を利用されていたこと?
たくさん嘘をつかれてたこと?
ちがうな…
「多分、イリューが私のことをなんとも思ってなかったってことだと思う」
「ラナ様は、イリュー様のこと好きだったんですね」
きっと、最初に会った時から気になっていたんだろうなと思う。
どこかで、気持ちが通じてるのかと、思っていた自分が恥ずかしい。
「勘違いだったんだな、って思う」
「勘違いだったんですかね、それだけ嘘ついてたくらいなんですから、なんとも思ってないって言うのも、嘘なんじゃないですか」
「あれだけ嘘ついたあとだからこそ、嘘はつかないでしょ」
「そうですかね、では、マールの視点を話してもいいですか?」
マールがラナの方に体を向き直して、姿勢を正した。
「少なくとも、イリュー様はラナ様を大切に思っていたと思います。ラナ様を見る目も、護る時の所作も、慈しみがありました。何も思ってないことはなかったと思いますよ」
「ありがとう、マール」
ラナはマールの肩に頭を乗せた。
「でもね、悲しいし虚しいんだけど、涙は出ないんだよね…」
「泣けたら楽になるんですけどねぇ。今夜はいつもよりお風呂長く入ってサッパリしましょう!」
「いつも以上に入ったらふやけちゃうんじゃない?」
たしかに、もともと長湯でしたね、とマールは声に出して笑った。
ラナもつられて笑った。
「失礼します」
軽く扉をノックして、静かに入ってきたのはリズだった。
「失礼します。マールさん、あのお呼び出しがかかっています。マールさんの家族のことで話があると…」
リズの表情が硬い。
「わかった。すぐ行きます。ラナ様すみません、ちょっと外しますね」
マールの家族に何かあったのか。
「何かあったらすぐおしえて」
「はい。わかりました」
マールはリズの元へ駆け寄る。二人の後ろ姿はどちらか一瞬わからないほど似ていた。
何か、胸騒ぎがした。




