10違和感
「やっぱり北国にはろくな奴いないですね!」
ラナは、部屋着の着物に着替えた。
マールは今日二度目の着物の片付けだ。たたむのが難しそうだが、彼女は難なくやってしまう。
「すごい偏見」
そしてマールはたたみながら、怒っている。
「やっぱりあんな爆発事故起こるくらい物騒な場所に生きてる奴は、図太いんですよ」
爆発事故…
どきっとした。
夢…
息を呑む。
突然、
思い出した。
違和感の正体。
「マール、私、思い出したことあるんだけど」
「え、どうしたんですか、急に」
「ちょっと怖いから、イリューを呼んでからでも良い?」
着替えが終わるまでは廊下で待機しているはずだ。
「わかりました。呼んできますね」
マールは小走りで廊下に出る。
すぐにイリューが入ってきた。
「どうかしたんですか、マールの表情が硬いですけど」
「あの、今日、北国の爆発事故の話してましたよね」
マールとイリューが、何事かと目を合わせてから、ラナを見る。
「事故か殺人の両方で調べ直してるって話ですか」
マールが答える。
「私がその事故の夢を見たことは二人とも知ってますよね」
「三年前に、夢で見ましたね。私が読み方を呼びましたので覚えていますよ」
「夢の中の爆発現場に、…ロドルがいたと思います」
「え、どういうことですか」
マールはよくわからないようで、イリューとラナを交互に見る。
「それは、爆発前の話ですか」
イリューは、聞いた途端険しい顔になり、ラナに聞いた。
「はい、…爆発前です。なのに今ここにいるのはおかしいんです。だって、現場にいた人はみんな亡くなっているはずだから」
「本当にロドル様、なんですか」
ラナを疑いたくない気持ちはあるものの、信じられないという面持ちでマールが聞く。
「今とちょっと違ったから最初はわからなかったんです。今よりもっと細身だったし、髭が、なくて」
だからわからなかった。
わかるまでに時間がかかった。
でも、それは言い訳だ。
「ちょっと待ってください。よくわからないんですけど、亡くなっていたはずのロドル様が生きてるって、どういうことなんですか」
「彼だけが生き残っていると仮定したら、あの爆発を仕掛けたのは彼かもしれないということです」
イリューが眉間に皺を寄せている。彼にはもうどういうことなのか察しがついているのだろうか。
「じゃあ、やっぱり事故じゃなくて殺人だったということですか」
「もしそうだとしたら、事故に見せかけて誰かを殺して、その誰かを殺すためにたくさんの人を犠牲にしたってことになる…」
ラナが大きく息を吐きながら話す。
「そして、ロドルは、何の後ろ盾があるのかわからないけど、自分がそんなこと疑われるわけがないっていう自信をもってる。東国の側近なんかしてるけど、もしかしたら、私たちが知らない大きな罪を犯しているのかもしれない…」
「ラナ様が、それに気がついたってことがロドル様に知られたら、危ないんじゃないですか」
「もう何人も殺してるかもしれない奴ですからね、命の危険があります」
イリューは静かに穏やかに言った。
「今朝マールが話してたように、空白の時間は作ってはいけないと思います、ラナ」
心臓がどきどきしていた。




