愚痴と恋バナと世間話で成り立つものが女子会というもの
認識の違いを正し、理解しあった私たち転生者3人娘はすっかり意気投合して雑談に興じてしまっている。我らのことながら数時間でここまでよく打ち解けたと思う。
転生者という同じ境遇もあったのだろうが3人とも何故かよくわからないが波長があったのだ。
「それでね!!ノアったら酷いんだよ!!私が毎回筆箱忘れてきたりノート忘れてきたリするもんだから『お前の教材全部よこせ管理する。』だって!!次は忘れないって言ってんのに『そのセリフは今日で16回目だ。管理する。』って言ってシャーペンから教科書から教材全部家から送れって言うの!!ムキー!!ノアが私のなんだっていうのよ!!」
「それは度が過ぎた忘れんぼなロゼリがいけないんじゃなくって?ノアさんはきっと善意でやってくれているのよ。むしろお世話を焼いてもらってありがたいと思ったほうが良いんじゃないかしら?」ナターシャは呆れながら答える。
「あら?ノアさんってそんなお話の仕方ですの?ジョシュアと話すときなんて丁寧そのものですのに。」リリアンはそこにびっくりしたようで「まあ」と声を漏らした。
「ぅあーんなの猫被ってるに決まってんじゃん!!」
と口をとがらせて言うロゼリに「そんなことわたくしたちが聞いてもいいのかしら」と困った顔で笑うリリアン。
「いいんだよ!!どうせあんな作り物すぐばれちゃうんだ!!」
「フフフ、そうね、そんな方ならすぐにボロが出てしまうかもしれないですわね。」
「フフフ、あらあら?そんなこと言うリリアンはいつまでそんなしゃべり方しているのかしら?」
というナターシャの的を射た発言にリリアンは「なんだ、やっぱバレてたのか。」と素を出す。
やっぱりリリアンはそのしゃべり方のほうがいい。「わたくし調」のリリアンは似合わな過ぎて吹き出しそうになっていたところだ。
「当り前ですわ。廊下で胸倉を掴まれながら壁際に寄せられた時の言葉遣いなんてわたくしが生涯で使ったことのないくらい粗暴なものでしたもの。」
「へぇー、やっぱり育ちが良い人にはわかっちゃうよね。」とリリアンはスカートだというのに蟹股で座り始める。それを見たナターシャは怪訝な顔をする。そりゃそうだ、元自分自身が粗暴でガサツな上辺だけの令嬢になっているのだから。
「はしたない…それにその品位のかけらもない話し方…そんなんじゃ王子に嫌われてしまいますわよ?」
「ぷくく、聞いてよナターシャ、リリアンから聞いたんだけどさ、王子もう既にリリアンがこんな話し方の女性だって知ってるんだって。」
「ええ!それなのに婚約解消なさらないの!?王子ってどれほど寛容なのかしら…凄いわ。わたくしには無理ね。」
「うん、僕も油断したら蟹股で座る娘とはおもわなかったよ。」
ひょっこりと顔を出してきたジョシュア王子に3人揃って「わっ!?」っと声を上げる。
「な、ジョシュア…どうして急に来たの!?まだ大事な話の途中だったらどうするのさ!!」
「アハハハハ、話の内容が聞こえない程度の離れた位置で待ってたら小一時間ほど前からだったかな?時折ドでかい笑い声が聞こえてきてね?もういいだろうってことになったんだ。ね、2人とも。」顔は笑ってはいるが目が笑っていない。あれ?ゲームの王子ってこんなだって?
「ええ、私たちは勝手に行動したロゼリさんとリリアンさんを叱らないといけませんしね。」
ため息を付きながら眼鏡をクイッとあげるキール。
「ああ。ロゼリには個人的にさっき話していた俺の愚痴も叱らないといけないしな。」
「うげっ、あの話聞いてたの?とことん運悪いな私…。て、ん?」
まるで私と話すように話している時のようなノアに違和感を覚えた。
「え、ノア…そのしゃべり方…」
「ああ、俺も先ほどジョシュアとキールによそよそしいのはやめろって言われてな。2人とお前らの前では普段のしゃべり方にする。」
「そんなことか。」と小ばかにするように鼻で笑ったノアに軽く怒りを募らせる。
「ということは今までの話聞いていたのですか!?ど、どこからでしょう。嫌だわわたくしったらはしたない。恥ずかしい…。」
ナターシャの反応を見て一瞬驚いたように目を開く王子だったがすぐに笑顔に戻った。
「…この反応を見る限り、お人よしの2人はナターシャと仲良くなったのですね?」
リリアンに対しては仕方がないと思うが何故かほぼほぼ関わったことのない王子に『お人よし2人』という含みのある言い方をされてしまった。解せぬ。
「うん、ナターシャは…私とロゼリの、親友だよ。」
急に手首を掴まれた私とナターシャはリリアンの体温が伝わってきてなんだがむず痒い。ナターシャも照れたように顔を赤くして俯いている。
「アハハ、それは何より。では、ナターシャさん。僕たちはそこのバカリリアンとアホロゼリさんに言いたいことがありますので退席願えますか?」
え、私アホ呼ばわりされた。ほぼほぼ初対面なのにな…あれ?目から汗が。
「あ、はい。分かりましたわ。」
すんなりと了承したのは多分男3人が凄いオーラを放っているからだろうと信じたい。
見限ったほうが面白そうとかそう理由じゃないことを祈…あ、ナターシャ笑顔隠しきれてない。ナターシャ愉快そうに笑ってやがる。
絶対これ退席したほうが面白そうだから退席する気だ。コンニャローめ。
「待って?ナターシャ、ノアが…ノアたちが凄い目で睨んでるんだ。お願い良心を忘れないで!!置いてかないで!!」
「ええ、ですがわたくし王子様に退席するようにと…」
白々しく言いやがって、ぐぬぬぅ…。
「せ、せめて傍にいて…アタシらジョシュアたちにコテンパンにされちゃうで?それでもアンタはええんいうんか!?」
「では、御機嫌よう。また、明日お会いしましょう。二人とも。」
「ええ、さようならナターシャさん。春とはいえまだ寒いですからね。暗くはないですが風邪には注意しておかえりください。」
「お気遣い痛み入ります。では。」
リリアンはナターシャに謎の関西弁で情に訴えかけたが、全く効かずナターシャは立ち去ってしまった。それと同時に男3人はこちらを向く。完全に囲まれた。
私たちは今日生きて帰れるのかな…。




