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ドラゴン娘とラノベ作家の現代生活  作者: 福耳 田助
2章:ドラゴン娘は現代生活を学ぶ
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12月6日(6) ドラゴン娘、見捨てられる

11月18日2/2



「こっちのスカートはどう?」

「ちょっと地味じゃない? もっと明るい色の方が」

「そこは上と合わせて全体に清楚系に纏めて…」

「うーん、だったらこっちのブラウスと、上には…」


 キャイキャイ


「「………」」


 どうも、大原公平です。

 今とても辛いです。

 俺もですけど、ディーネも死んだ目をしてます。

 …どうしてこうなった?


     ♦     ♦     ♦     ♦     ♦


 それは今を遡る事三十分程前。

 俺達はモール内の一軒の服屋、所謂ブティックに来ていた。

 この店はネットで下調べをした時に見つけた店で、服から下着、小物まで揃うという事と、十代後半から二十代前半の若い女性をターゲットにしたリーズナブルな価格帯が売りの店だ。

 店頭の価格を見ても中々お手頃な物が多く、一通り揃えるなら丁度良いだろう。


「おお、何やら華やかじゃのう」

「そうか? 女性向けの服飾店は大体こんな感じだぞ」

「向こうにもこういう店は無くはないが、貴族や金持ち向けじゃからの。 庶民は古着や手作りが普通じゃ」


 成程、昔のこの世界と大差は無い感じか。


「取り敢えず行くか。 打ち合わせた通りにな」

「うむ」


 一応言っておくが、俺はこんな女性向けのブティックになぞ付き合いでもほぼ来た事は無い。

 大学時代には彼女もいたが、彼氏でも男を買い物に付き合わせるタイプではなかったのだ。

 なので内心かなり気後れしているが、そうも言ってられないのでさっさと入る。


「「「いらっしゃいませー」」」


 平日だからか、幸い店内の客は少なく一人二人いるだけ、正直助かった。

 一先ず近場の、というか入ってきた俺達にさりげなく近寄って来ていた店員に声を掛ける。


「すいません、ちょっと良いですか?」

「はい、何かお探しでしょうか?」

「この娘の服なんですが…」


 見事な営業スマイルを浮かべて応対してくれたお姉さん(推定三十代)の顔が、一瞬引き攣ったのが分かる。

 確かにプロの眼からすると、野暮ったくて似合わない服装をした今のディーネを見れば無理も無いかもしれない。


「彼女、つい先日長期のホームステイでこちらへ来たんですが、空港のトラブルで荷物を殆ど失くしてしまいまして…」


 これが予め考えておいたディーネの設定である。

 確認しようも無い、というか態々確認する人間もいないから大丈夫だろう。

 言葉遣いに関してはアニメと時代劇で覚えた事にする。

 日本のオタク文化万歳。

 因みに靴だけは既に女性物のちゃんとしたブーツを履いている。

 靴も無いってのは流石に不自然なので、近場の小さな靴屋で先に買っておいたのだ


「まぁ、それはお気の毒に…」

「なので下着や小物なども含めて、ある程度纏めて購入したいんですが、そちらで見立てて頂きたいんです。 俺は女性の服は分からないし、彼女も元々ファッションにはこだわらない、というか余り興味も無いので」

「成程…」


 営業スマイルを崩さないまま、お姉さんの眼がギラリと光る。

 上客だと思われたらしい。

 ちょっとビビる。

 ディーネも引いてるし。


「え、えーと、取り敢えず服と下着を上下でそれぞれ五セット、それからソックスとかの小物類と、あと冬物の上着を一着、予算は…こんな感じでどうでしょう?」

「そう、ですね、普通なら間に合うと思うんですけど…」

「?」

「その、下着の上が…」

「…あー」


 そういや間に合わせでもそれなりの値段だったな。


「じゃあ…これで」

「はい、これなら大丈夫です」


 多めに下ろしといてよかった。


「それじゃあお願いします」

「お任せください! 完璧にコーディネートして見せますよ!」


 あれ? なんかお姉さんの背後に炎が見えるような。


「いやあの、普段着だから別に適当で…」

「とんでもない!(カッ)」

「うおっ!?」

「折角こんなに素材が良いのに、適当だなんて駄目です! プロとしての矜持が許しません!」

「あ、はい」


 に、仁王が見える…。


「ふふふ、腕が鳴るわ…。 さぁ、どうしようかしら」

(コ、コーヘー、何だか怖いぞ)

(安心しろ、俺も怖い…)


     ♦     ♦     ♦     ♦     ♦


 それから手の空いた店員が次々に合流し、店中の服を持ち出してあーでもないこーでもないと喧々諤々。

 一応俺も口を挟んだりディーネも抵抗したりしたのだが、無駄だった。

 目が怖いんだよ目が。

 しかしどうするか。

 まだまだ終わりそうにないし、正直もう辛い。

 …止むを得ん、こうなったら。


「あの、俺今の内に他を回って来るので、彼女の事ちょっとお願いします。 二時間くらいで戻りますので」


 戦線離脱である。


「足のラインもきれいだしいっそもっと短い…え? あ、はい、分かりました。 その間に完璧に仕上げておきますね!」

「コ、コーヘー…」


 ディーネの縋るような視線と目が合う。


 ※以下アイコンタクトと手振りでの会話


『コーヘー! 我を見捨てるのか!』

『すまん、俺にはどうにも出来そうにない』

『強く言えば良いではないか!』

『怖くて言えねーんだよ!』

『確かに怖いが…』

『こういう時の女に逆らっても良い事なんか無い。 という訳で健闘を祈る』

『う、裏切り者ぉーー!』


 背後にディーネの視線を感じながら足早に店内から撤退。

 無力な俺を許せ。


「じゃあ次はこのスカートを履いてみてね!」

「こ、これは幾ら何でも短すぎでは!?」

「「「大丈夫大丈夫♪」」」


 …今真冬なんですけど。

 何でこの時期に店に置いてんの?

 ひょっとして遊ばれてないか?





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