12月5日(7) ドラゴン娘と熱々コロッケを齧る
遅くなりました。
二話更新ですが、合計五千文字弱あるので、いつもより多めです。
5月27日 1/2
さて、コロッケづくりである
まず最初に“バッター液”を作る。
バッター液というのは、小麦粉に卵と水、または牛乳を加えたものだ。
本来フライの衣は小麦粉→卵液→パン粉の三工程で着ける。
が、初めにバッター液を作っておけば、バッター液→パン粉の二工程で済み、時間がかなり短縮される。
その上作業工程が減る事で、コロッケやメンチカツのような崩れやすい素材をダメにするリスクを減らすことにもなる。
「ディーネはコロッケのタネにこの液を着けてくれ。 その次は俺がやるからパン粉、こっちのボウルに入れるんだ」
「分かった」
「割れたり崩れたりしない様に気を付けてな」
「うむ」
ペタペタ
「おお、ドロッとしていてちょっと面白いの」
「まぁ分かる。 ちょっと気持ち良いよなその感触」
「うむ…何だか泥遊びのような…。 と、これで良いのか?」
「ああ、じゃあこっちのボウルに入れてくれ。 パン粉の上に落としちゃって良いから」
「うむ」
ディーネがバッター液を着けたタネにパン粉をまぶし、それをパン粉を平らに敷き詰めたバットに並べていく。
パン粉を着け終えたら味噌汁に火を入れ温めなおしつつ、フライ鍋代わりの中華鍋に油を熱して、熱くなるのを待つ。
コロッケは全部で十個。
二人分にはちょっと多い気もするが、そこはあれだ、問題無い。
ちなみに俺のコロッケは挽き肉多め、味濃いめの完全ご飯のおかず仕様。
コロッケのみで食べるなら肉無しのポテトコロッケも良いのだが、おかずにするならこっちの方が好きだ。
閑話休題
油にパン粉を落として温度を確認。
一瞬沈んで直ぐに浮かび上がってきた。
頃合いである。
「さて、じゃあ揚げていくか」
「おお、いよいよか!」
ワクワクという擬音が聞こえてきそうな様子のディーネ。
あんま顔近づけるな危ないから。
先ずは味見用に二つだけ揚げる。
鍋肌を滑らす様にそっと…。
ジュワァァーーー…!
「お、おお、結構派手な音がするのじゃな」
思った以上の音に驚いたのか、若干腰が引けた様子のディーネ。
揚げ物にビビる口から火を吐く生物。
それで良いのか。
火加減を調整しつつ数分、綺麗な狐色になった所でキッチンペーパーを敷いた網に上げる。
…前々から思ってたけど、このフライの色って“狐”色って言うには若干濃いよね。
狐の毛色ってもっとこう、黄色っぽいし。
どうでも良い事を考えつつ、揚がったコロッケを半分出すような形でキッチンペーパーを巻き付け、片方をディーネに差し出す。
「ほら味見、コロッケはこの揚げ立てが一番美味いから」
「うむ、では遠慮なく」
「熱いから気を付けろよ」
俺が自分の分を持ってるからか、素直に受け取る。
ていうかディーネは口火傷したりするんだろうか?
いや、今までの食事の時も熱い物は熱そうに食べてたから、人型の時は人間と変わらないのかもしれない。
まぁそれはそれとして。
「熱ちっ」
(ふーふー)ザクッ ホフッ ハフハフ サクサク…
美味っ。
あー、何で揚げ立てのコロッケってのはこんなに美味いのか。
下手なご馳走より上だよな。
「美味いっ! ホクホクの芋に挽肉の旨味が加わって何とも言えん。 それにこの、出来立てを手にもって食べるのは、何だかとても良い!」
どうやらドラゴン娘もお気に召したようだ。
揚げ立てを手に持って齧りつくのは揚げ物の醍醐味だな。
おっと、フライと言えば忘れちゃいけない。
「ディーネ、このソースをつけて食べるともっと美味いぞ」
取り出したるはブルドッグのマークでおなじみ、某メーカーのとんかつソース。
やはりフライにはこれだろう。
「何じゃ、その真っ黒な液体は」
「色んな食材やら香辛料やらを煮詰めて作った調味料だよ。 ソース、っていうのは料理のタレの事だけど、この国ではソースって言ったらこれだな」
嘘ではない。
日本人がただ“ソース”と言ったら、メーカーの違いはあれど、基本的にはとんかつソースかウスターソースの事であろう。
「ふむ(トプトプ)」
一度置いたコロッケに軽く一回し。
薄茶色の衣がソースを吸って黒く染まる。
「おお、随分と複雑な香りじゃな、どれ(ペロ)。 !これは、香りだけでなく味わいも何と複雑な…。 しょっぱく、辛く、甘く、酸っぱい。 まるで違う味が混ざり合っておるのに、それがバラバラにならず上手く纏まっておる」
一舐めしたソースの味に驚愕するディーネ。
言われてみると凄いよなこのソース。
伊達に70年近くも愛され続けてないな。
「では改めて…」
サクッ モグモグ
「どうだ、って夢中か」
「…(サクッ モグモグ サクッ モグモグモグ)」
あっという間に残りも平らげる。
俺の分の残りにソースを着けて差し出してみたら、普通に手に取って食べだした。
ちょっと面白い。
「(モグモグモグ ゴクン)…はふぅ」
何かすごく満足気な溜息が。
口の端にソース付いてるし。
「…至高の取り合わせじゃ」
「ん?」
「奇跡の出会いじゃ。 この二つはこうして一緒になるために生まれたに違いない」
「ああ、うん、そうね」
まぁとんかつソースってぐらいだし、フライの為に創られたソースだからな。
出会いも何も初めからそのための物って言うか。
まぁ良いや、突っ込むと面倒くさそうだし。
「気に入ったなら良かったよ。 じゃあさっさと残りも揚げて、ちゃんと夕食にしようか」
「これがまだこんなにあるのか…。 この出会いをこの世界の神に感謝しよう」
「…神様も、コロッケとソースで祈りを捧げられたのは初めてだろうなぁ…」
その後の夕食時、ディーネは五個のコロッケを平らげ、その際にはフライとソース、そこに加わる白米とキャベツの取り合わせにも同じ感動を示し、またも神に深い感謝を捧げる事となる。
その様子を見た俺は、近い内に同じ取り合わせでとんかつとメンチカツも食べさせようと誓うのであった―――




