閑話3.異界の考察
参ったのう、まさか異界とは。
突拍子も無い話ではあるが、恐らく間違いあるまい。
人は嘘を吐くと体臭や心音に独特の反応が現れるが、コーヘーの言葉にはそれが無い。
つまりコーヘーの言葉には嘘が無い。
それにこの家の中の造り一つとっても、我の知る文明とは余りにもかけ離れ過ぎている。
部屋の中に置かれている道具の数々、我に分かるのは時計ぐらいじゃが、どうやらあれらは魔導具ではないらしい。
よくよく見れば魔法の力は何も感じぬし、何やら我の知らぬ技術が使われているようじゃ。
無論それだけならば我らの知識に無い未知の土地という可能性も有るが、恐らくそれは無い。
何故なら、
―――この地には、魔素が存在していない―――
遍く万物全てに宿る筈の魔素。
生物が生きるために必要不可欠の物。
生物が自然に発する魔力は大気の中で魔素に変わり、それが生物や自然物の中を巡り巡ってまた取り込まれ、再び魔力となる。
それが摂理。
生物である限り逃れ得ぬ、自然の定め。
それがこの世界には存在していない。
…まぁ中には我等竜種の様に、自力で魔力を生み出す者もおるが。
今回の件、我でなければ死んでたの。
それはともかく、魔素が無い、という事はそれだけで異界の証明になる。
そも我らの世界の生物は、魔素の無い土地では生きていけんからな。
生きられるのは自力で魔力を生み出す器官を持った、竜種や精霊種ぐらいじゃろう。
取り敢えず我なら死にはしない。
それは良いのじゃが、これからどうしたものかのう…。




