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第五話 動かざること山の如し

休日の妖怪は基本、動かない…。


本当に動かない…。


朝食を食べるとソファへ移動し、そのまま根を張る。

テレビ、 スマホ、 うたた寝。

そしてたまに冷蔵庫。


活動範囲は半径二メートル以内である。


「ちょっと買い物行かない?」


「おう……」

返事はする。

だが立たない。


十分後。

まだいる。


「行くの?」


「……おう」

動かない。

もはや会話ではない、生存確認である。


若い頃は違った。

「どこ行きたい?」

「迎えに行くよ」

「ドライブしよう」


あの行動力はどこへ消えたのか…。

今ではソファと完全に同化している。


昼過ぎ。

様子を見に行くと、同じ姿勢のままテレビを見ていた。


「腰痛くならないの?」


「おう」

なるのか、ならないのか分からない返事。


さらに夕方。

まだいる…。


さすがに心配になり、


「生きてる?」

と聞くと、


「おう」

少し遅れて返事が来た。


私は安心して洗濯物を取り込む。


結婚三十年。


私は、妖怪の安否確認をしている。

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