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Laughrain Circus  作者: 鬱乃みや


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9/12

実験

「立て」

体が動く。止めようとするより先に、足が前に出ていた。

気づけば舞台の中央に立っている。足元の感触だけがやけに鮮明だった。

「始めようか」

その声と同時に、笑い声が聞こえた。近い。耳のすぐそばで、いくつも重なって響く。

胸の奥がふわりと浮いた。楽しいと思う。理由はない。ただそう感じる。

その感覚が広がる前に、急に落ちた。底が抜けたみたいに。重さが胸の奥に沈んでくる。さっきまでの軽さを引きずるように、深く、重く。

息がうまく吸えない。

その上からざらついた違和感が重なる。追い付かない。

どれにも落ち着かないまま、内側で小さく軋む。

軽さも、重さも、そのまま残っている。混ざっているのに、一つにならない。ほどけないまま増えていく。

「…とまらないね」

軽い声が落ちた。クラリスだと遅れてわかる。楽しそうな気配だけが、はっきりと伝わってくる。

そのとき、冷たいものが触れた。指先からじわじわと上がってくる。それはすでに内側に入り込んでいて、胸の奥までゆっくりと広がっていく。

ぎゅ、と。心臓が掴まれる。息が止まる。足が固まり、その場に縫い付けられたように動けない。それでも、どこかで何かが軋んだまま、壊れない。

これ以上は無理だと思うのに、壊れるところまで届かず、ずっと手前で止まっているみたいだった。

「適応しているのか」

感情のない静かな響き。見られているという感覚だけが、はっきりと残る。

「…いい」

その一言と同時に、すべてが引いた。押し込まれていたものが、一斉に離れていく。膝から力が抜けた。そのまま崩れるように床に落ちる。胸の奥に鈍い痛みが残っている。

「壊れないか」

ノクスの声がする。確信するような響き。さっきまで確かにあったものが、まだどこかに残ってるような気がする。見えないだけで、消えてはいないような感覚が薄く体の奥に張り付いている。うまく言葉にできないまま、その違和感だけが消えなかった。


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